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世代交代  作者: 砥左 じろう
77/92

対照的な2人

4番の喜連さんを迎える。

バランスのいいタイプの選手だと思う喜連さんを相手に投げるのは零さんにとっては不都合かもしれない。

こういうバッターはコースに逆らわずに打ってくるから……キィィィーーン‼

とか考えてたらいきなり鋭いライナーが左中間を襲う。

それもどっちかって言うとレフトのトミーの守備範囲だ。

だがトミーの守備力を知ってか、1塁ランナーの橋舘は迷わずに3塁ベースを回りホームを狙ってくる。

2アウトだし狙ってくる可能性は十分あると思い俺はトミーに、

「ホーム」

と指示していた。

トミーも捕ってから素早く中継の颯馬に送球し、そのままバックホームしたが間に合わず先制点を許してしまう……。

一瞬の沈黙が生まれたが、すぐに世良ビッグボーイズ側の歓声に変わった。


続く5番の長谷川さんにはキレのあるチェンジアップで三振を奪い追加点は許さなかったが、苦しい立ち上がりとなってしまった感はある。

気負っている部分があるのか、今日の零さんはストライク先行ではあるけれど甘く入ることが多い。

零さんらしくないと言えば零さんらしくない……。

早く同点に追いついて気分良く投げさせてあげたい。


長谷川さんと零さん、対照的な投球となった初回の2人。

でもまだ1回が終わっただけだし、気落ちしても仕方ない。

ベンチでは監督が零さんを呼んで何かを話している。

俺はこの回打席が回ってくるので、準備をする。

目の前にいるトミーはさっきの守備での悔しさからか無言でジーっと長谷川さんを見据えながらネクストバッターズサークルへと向かって行く。


将輝、お前との対決楽しみにしてたぞ。リトルの頃に何度か対戦したことはあったが、いずれも俺の中では負けたような感覚になる打席ばかりだった。

父さんの転勤の都合でここ神奈川の支倉シニアに入団して中心選手としてプレーして充実した日々を過ごしてきたが、一日たりともリトル時代に抑え込まれた悔しさを忘れたことはなかった。

絶対に打つ。打って投球が固くなっている零を楽に投げさせる。

それが俺の役目。

しかし結果はストレートを打ち上げての平凡なセンターフライだった。

くっ……。


悔しそうな表情のままベンチへと戻ってくる拓哉さんから、

「ストレート勢いあるぞ。気を付けろよ」

と忠告された。

だが5番のトミーに対しては変化球中心の攻めで有利カウントにすると最後は得意の縦スラで空を切らせた……。

トミーはしまったぁというような顔をしたあと強く唇を結んでベンチへと戻る。

マウンドにいる長谷川さんに目線を送る。表情からは余裕が見て取れる。


いったいどうすればこの人から打てるんだ?

初球、ビューッ、ブン、スパーーン。か、空振り?マジか……。

いつもより早くタイミングを取ってストレートを狙いにいったのに振り遅れた。

141km ⁉

ただ速いだけじゃない。颯馬が言っていたように球に強さがある。

でも次は、カーン。レフトライン際へのファールか……。


このバッターやるな‼

俺のストレートを始めて見るってのにしっかりとしたスイングで2球目には鋭い打球を飛ばしやがった。

いいだろう。本来下級生に使うのは不満だが、お前には特別にとっておきを見せてやる。

見て驚くがいい。


今のファールを見たらストレートでは押してこないはず。なんだ?やっぱり得意の縦スラか?それとも膝元に横滑りのか?

際どいところはファールにすれば、ってこれはストレート⁉しかも真ん中低め、もらっ……ストーン。空振り三振……。

「ストライーク、バッターアウト。スリーアウトチェンジ」

審判は張りのある声で三振とチェンジコールをした。

なんだ、今の球?加茂東の萩原さんが投げていたフォークに似ている気がしたが、今のは多分スプリット……。

萩原さんのより球速があって、ベースに近づいても中々落ちてこなくて見極められなかった。

こんなすごい球があったなんて知らなかった……。

首を傾げながらベンチに戻る俺に颯馬がグラブを持って手渡してくれる。

「あ、りがと」

動揺からか中途半端な言い方になってしまった。

「今のスプリットだったろ?」

「多分な。データにはない球種だったし、当然頭の中にもなかった。完全にやられた」

と言う俺に颯馬は、

「球筋見れただけでもラッキーだと思うよ。俺や他のみんなはこれから未知の球種と戦うことになるわけだからね」

「だね」

確かにと思った。今の1球だけでうちの選手たちはこの試合を通してスプリットも意識して打席に向かわなければならなくなってしまった。


いっそのこと捨てるという選択肢もあると思うが、あの感じからするにすでに持ち球としてちゃんとした自信を持っているように見えるし、今後も投げてくると想定したうえで臨まないとこのまま負ける気がしてしまう。

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