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世代交代  作者: 砥左 じろう
74/92

労い

まだ最終回ではないが、6回裏まで投げ抜いたエースの安藤さんに対してスタンドから拍手が送られた。

一二塁間からベンチに戻りながら俺も心の中で賛辞を送っていたが、チームを勝利に導くという重要な役割があるので自分の投球に思考を集中させる。


先頭の真鍋さんに対して強引なストレート勝負をするのではなく、冷静な駆け引きを交えながら5球費やしてショートゴロに打ち取った。

1アウトとなったところで夏川との3打席目の対戦を迎える。

初球をカーブで見逃しのストライクを取った。2球目のチェンジアップは外れてしまった。

ここまで何球投げたかなんてわからないが、多分90球近くは投げている。

注目度の高い試合で投げているのもあって、精神的な負担も通常の試合より重い。

当然疲れはある。

でも、ここまできたら抑える。

3球目のカーブを引っ張られファールにされたが、これで追い込めた。

次は……ドーン‼

最後は138kmのストレートがインコースに構えていた拓哉さんのミットに収まり見逃し三振と圧倒する。

2アウトと指でポーズを作り野手陣に向けると同じように応えてくれた。

あとアウト1つで決勝進出。

7番の依田のところで代打の吉野さんがコールされた。

3年生の控えキャッチャーだったようだ。

最後まで球威が落ちることなく投げられているストレートで押し切りショートフライに打ち取る。

これを颯馬がキッチリと捕球してゲームセットとなった。

ホッとしたのと同時に、ドッと疲れが押し寄せた。

そう言えばこれが公式戦で初めての完投か……。


整列が終わった後、互いの健闘を称え合いそれぞれのベンチへと戻って行った。

整列の際に松前さんと鈴木さんから、

「今まで対戦したサウスポーの中では断トツで1番速かった」

「U15で一緒に戦えたらいいな」

などと言われた。


荷物をまとめて通路を歩き出口に着くと、そこには家族と母方の叔父である友也さんがいた。

「よぉ‼ナイスゲームだったな。お疲れ様」

「応援ありがとうございます。疲れました」

「だろうな。成長したな。中学2年生で139kmなんてすごいな。それとホームランとタイムリーヒットもな」

「アドレナリンが出たのかもしれないですね」

と返して笑う俺に、

「そうか。今日はゆっくり休んで明日に備えろよ」

と目尻を下げながら労ってくれる友也叔父さん。

「はい。もう帰るんですか?」

「俺はこの後予定があるから。また応援しに行くからな」

「そうですか。今日はありがとうございました」

と言って頭を下げると、友也さんは両親に何かを言って駐車場へと向かって行った。


「ナイスゲームだったな、昴」

と言う父さんに、

「今日使えるエネルギーは全て使い切ったよ」

「だろうな。でも寝る前にしっかりケアしておけよ」

「わかってる」

続けて母さんが、

「ちゃんとご飯食べて早く寝るのよ」

としか言わなかったので、

「それだけ?」

と訊くと、

「話したいことはたくさんあるけど、今のあなたから時間を奪うわけにはいかないもの。だから残りは大会が終わってからにしましょう」

「そっか。気遣いありがとう。んじゃ、もう行くね。応援ありがとう」

そこまで話すと、チームメイトたちが待つ支倉シニアのバスへと向かう。

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