表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世代交代  作者: 砥左 じろう
70/92

ハプニング

4回裏の攻撃に入る。

この回の先頭4番の拓哉さんは3球目のスライダーを捉え右方向に大飛球を飛ばすも元々深く守っていたライトの松前さんの正面でアウトだった。

けど当たりは良かった。2打席目でキッチリと捉えているあたり、流石だなと思う。

5番のトミーは前の打席の勢いそのままに立ち直りかけている安藤さんのボールを慎重に見極めている。

ここまで集中しているトミーは滅多に見れない。

富岡倭というバッターは打つときは打つが、アウトになるときは特に粘ることもなくあっさりと凡退しているイメージなので、珍しく思えるのと同時に彼の真剣さを感じ取った。

結局7球粘った末、四球を選んだ。

そして俺に2打席目が回る。


ここで予想外の事態が起こる。

それは安藤さんが投げた初球のスライダー。1塁ランナーのトミーが走ったのだ‼

投球はインコースの厳しいところに決まった。

初球から打ちに行くようなボールではなかったが、盗塁アシストのために俺は手を出してわざと空振りした。

キャッチャーは送球できず、トミーの盗塁は成功した……。

「ウオオオオオオォォォォ‼ここで走るかよ‼」

といった歓声が聞こえてくる。

同感だった。

普通ここはナイススチールと褒めるところなんだろうけど、これで1塁が空いてしまうことを考えると、この盗塁は良かったのか……⁉

咄嗟にアシストしてしまった俺にも責任はあると思うが……。

案の定俺は敬遠気味の攻め方をされた挙句、歩かされた。


これはどうなんだ?

ベンチを見ると監督もシブい顔をしていた。

続く7番の藤田さんにスライダーを上手く右方向に弾き返したが、鈴木さんの正面となってしまい併殺打に終わった。良いピッチングをしていても攻撃の嫌な感じは変わらないのか?


5回表を迎えゲームは中盤から終盤へと移る。

1点リードの状況は変わらないまま、マウンドから投球練習をしていた。

打席に夏川が入る。

今日2度目の対戦。NPBの大会のときから当時ストレートにめっぽう強い打者と評判になっていたのもあって、お互いに成長した現在でもそれは変わらないのか対戦してみたいなと思っていた。

それが今日実現している。

今日の俺のボールは走っている。ストレートで押してみたい気持ちは当然ある。でも点差が点差だし個人的な感情よりもチームの勝利が優先だ。

初球はチェンジアップで空振りを奪った。

2球目のストレート。ドーンと強い音が響き渡った。空振りで2ストライク。

最後は……チェンジアップでハーフスイングの空振りの三振に仕留めた。

夏川は悔しそうな表情を浮かべながらベンチへと戻って行った。


「チェンジアップは反則だろ~」

と嘆きながらベンチに戻る大輔さん。

大輔さんが見極めることができないほど変化するチェンジアップか……。

さっきも左の誠也さんの打席で投げていたし、左バッターの俺に投げてくる可能性もある。

東京に『一条昴』ってすごいピッチャーがいるってことは以前から知っていた。

NPB12球団ジュニアトーナメントが終わって戻ってきて以降、大輔さんは何度も一条さんの名前を口にしていたからだ。

さっきキャッチャーとして一条さんを抑えようとしたけど、とんでもなく速いスイングで捉えられてレフトスタンドへと運ばれてしまった。

俺の感覚としてはミットの収まったと思ったのに、急にバットが出てきてボールをさらっていった印象だ。

キャッチャーとバッター、その両面から一条さんを見ていて、大輔さんがしつこいくらいにすごい選手だと言っていた理由がようやくわかった気がする。

ピッチャーとしての一条さんは球が速いのはもちろんのこと、落差の大きい縦のカーブもキレが良くて簡単に空振り三振を喫してしまった。

そしてこの打席でも3球三振に倒れた。

変化球は初球のカーブだけで、あとはストレートに空を切り続けた。


昴は下位打線を3者連続で三振に仕留める極上の投球を披露して旭山打線を寄せ付けない。

アウトの取り方は対照的ながら両投手ともよく投げている。それが率直な感想だ。

試合展開が速くなってきて、気づいたらもう5回裏に突入する。

たった1点のリードをここまで支倉が守っているが、気の抜けない状況であることに変わりはない。

それに昴は明らかに飛ばしている。このまま最終回まで同じように投げ続けられるとは思えない。

側で見守っている真緒や友也くんもそれは同じようだった。

「厳しい試合ですね」

小さくそう言う友也くん。

「だね。援護点が取れないと嫌な感じではあるね」

「ですよね。旭山のピッチャーも状態が良くなっている気がしますし」

そうなのだ。このピッチャー意外としぶとい。

倭くんと昴の2者連続ホームランを見た印象だと、5回を投げ切ることさえ厳しいのではと思ったがここまで持ち堪えている。

圧倒的な才能を感じるわけではないが、強豪相手にも試合を壊さずに投げ抜く粘り強さはある。だからマウンドを託されているのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ