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世代交代  作者: 砥左 じろう
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2度目の対決

俺のホームランのあとは3者凡退に倒れた。

スコアボードに刻まれた2という得点を眺めながらマウンドへと向かう。


打席でのホームランが投球にも勢いをもたらしたなと思っていたら、急にスマホにメッセージが届いた。

差出人は職場の同僚、大野さんからだった。

そこには、

『無事ファミリーデーは終了しました。息子さんのホームランすごかったですね‼』

と書かれた文面と参加者の集合写真にオフィスのテレビで目の前で繰り広げられている試合をみんなで観戦している写真も加えて送られていた。

無事に終わって何よりだなと思いつつ、みんな観ているのかと不思議な気持ちになる。


3回の表に入りスコアは2対1。

先頭の9番を135kmのストレートでキャッチャーファールフライに打ち取る。

問題はここから。

鈴木さんとの2度目の対決を迎える。

前の打席と同様にボールを見極めてくる。それでも自分の中で初回より状態が上がっている感覚がある。

それは拓哉さんも同じだったようで、2ストライク2ボールからインコースへのストレートを要求してきた。

自信を持って腕を振った。カーブを意識している様子だった鈴木さんはバットが出せず、見逃し三振だった。よしっ‼


続く2番の河野には前の打者2人へのストレート主体の攻めが利いたか、チェンジアップに体勢を崩され、大きく身体を前に引きずり出される形の空振り三振となった。

イケる‼自分のリズムで投げられてる。


2対1と1点をリードした状況で迎える2打席目。

マウンドの安藤さんはトミーと昴の2者連続ホームランの直後から、スイッチが入ったのかボールの勢いが増しているように見える。

ここにきて強気にインコースを攻めてくる。

4球目のスライダーを引っ張ってライト前に鋭いライナーを弾き返して出塁した。

盗塁をしてもいい場面だがサインは出ていない。


信介さんは初めから送りバントの構えを見せている。

ストレートをバントしたが少し強くなってしまう。

これに安藤さんが素早くダッシュしてきて迷わず2塁に投げてくる。

俺は2塁フォースアウトとなってしまい、捕球体制の良かったショートの夏川が1塁に送球してゲッツーとなってしまった。

信介さんがこういうミスをするのは珍しいが、安藤さんのボールには力がある。

それに今のフィールディングは完璧と呼べるほど洗練されたプレーだったと思う。

敵ながら天晴だ。

宗さんはセンターフライに倒れて3者凡退だった。


嫌なリズムだな……。

そんな思いを抱えながらもマウンドへと向かおうとしたそのとき、監督に呼ばれた。

「引きずるなよ。いいボールが増えてきている。自信を持って投げ続けろ」

思いがけないタイミングでの激励に少し驚いてしまい言葉を失いかけたが、

「はい」

と短く返して向かった。


3番の大澤さんがストレート狙いだと察した拓哉さんがチェンジアップ主体のリードを要求した通り投げ切り、最後はカーブでサードゴロに打ち取った。

リードしているとは最少得点差の1点だけ。

ホームランだけは避けたい。

ここで迎えるは4番の松前さん。この人を抑えれば試合の主導権を失うことはないはずだ。

初球からインコースの厳しいところに構える拓哉さん。

制球の不安定だった初回はどのカウントでも真ん中付近に構えていたが、今は違う。

受けている拓哉さんが今なら平気だと思いこういうリードをしてくれているのだから、俺はそれに応えたい。

気を強く持ってインコースを攻める。

松前さんも豪快なスイングで振ってきたが、ファールだった。


初球から厳しいところを打ちにくるあたり、冷静さを欠いている。

今の松前ならボール球でも手を出してくる可能性が高そうだな。

ストライクは要らない。低くこい、昴。と右手でジェスチャーを送った。

頷いた昴は2球目3球目と俺の要求通りカーブを投げ続けて2ストライク1ボールとなった。


『一条昴』思っていた以上のピッチャーだな‼

ストレートが良いことは知っていたが、カーブのキレも想像以上だ。

あのカーブが決まりだしてから俺たちは抑え込まれている。

初球のインコースの厳しいところへのストレートに手を出したことでストレート狙いがバレてカーブで追い込まれた。

ここまでは拓哉の思惑通りにリードされちまっている。

どうする?ヒット狙いのバッティングに切り替えるか?いや、やっぱり……。


よしっ。いい攻め方ができている。次で決めるぞ。

最後に選んだのは……チェンジアップだった。

低めに決まり、状態を前に放り出された松前は力のないセカンドゴロに倒れた。

俺は昴に向かってこう言う。

「ナイスピー」

シンプルな掛け声で良い。一条昴というピッチャーは周囲があれこれ言わなくても自分で考え行動する精神力を持っている。

大した奴だ。


2アウトとなったがホッとはできない。5番の真鍋さんもかなりの強打者だからだ。

松前さんへの攻めを見てチェンジアップを意識している様子だった安藤さんに対しては全てストレートで押し切り、空振りの三振に仕留めて嫌な雰囲気で迎えたクリーンアップとの2度目の対決を完璧に抑え込んでベンチへと向かう。

途中、観客席にいる家族と友也叔父さんと目が合い軽く微笑んだ。

1点は失っているけど、その後は完璧に抑えているしホームランも打っている。

それなりに見せ場は作れていると思う。

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