表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世代交代  作者: 砥左 じろう
65/92

VS旭山ドリームス

第1試合を見届けた俺の背中をポンッと優しく叩いたのはトミーだった。

「行くぞ、昴。俺たちの番だ」

俺の頭の中を切り替えさせると言わんばかりにそう言ったトミーの表情はいつになくやる気に満ちていた。

前の試合、田中さんのキレのある変化球とそれを自在に操るコントロール、そしてバッターに考えさせる隙を与えないテンポの良さを前に本来の打撃をさせてもらえず苦しんでいた。

昨日の試合後のバスで、「あれが全日本シニアを制するチームのエースか……」

と対戦を振り返り感想を口にしていた。


2日続けてフェニックスドームのグラウンドに足を踏み入れるとプロ野球選手になったような気分になる。

この感覚を味わえるのは全国でたったの4チームだけ。中々の贅沢だ。

相手の旭山ドリームスについては昨晩何度もデータや映像を見たりして、自分なりに攻め方を考えてこの試合に臨んでいる。

1番の鈴木さんと4番の松前さん。この2人がキーマンであることに間違いはない。


今日は1塁側でプレーする俺たちが後攻で3塁側の旭山が先攻だ。

ベンチ前で拓哉さんを相手にキャッチボールを始めた。

あまり考えたくはないが、今日が公式戦で拓哉さんとバッテリーを組める最後の試合になるかもしれない。

さっきベンチで監督から、

「この試合は一条に任せるつもりだから頼んだぞ、天才」

と声を掛けられて、そのメッセージはこの試合に零さんを登板させずに勝つということを意味しているのだと悟った。

旭山の主力に左打者が多いことと決勝のことを思えば、監督が俺を選ぶのも理解できる。


両チームとも準備を終え、俺たちは守備位置に就いた。

普段俺が守っているセンターには橋本さんが入っている。

打撃に課題を抱えているが、守備と走塁は抜群のセンスを誇る頼れる先輩だ。

野手としてはライバルに当たるはずの俺に対しても、親切に守備のアドバイスをしてくれる人望の厚い先輩なのだ。


マウンドでこんなこと考えるのは不謹慎かもしれないが、この試合は日テレで放送されているらしい。

フェニックス主催の試合が日テレで中継されていることを思えば当然か?

ということは今マウンドにいる俺はすでにテレビに映っているのだろう……。

試合前には家族全員に加えて母方の叔父さんも応援に行くという電話もあったし、父方の祖父母もテレビで観戦するという連絡もあった。

他にも同級生たちと、船本さんと野沢も観戦しているらしい。

これだけの目がある中でみっともない姿は晒せないな。


投球練習を終えると左打席に1番セカンドの鈴木涼介さんが入る。

身体はそんなに大きさはないが、何というか雰囲気がある。簡単に打ち取れなさそうな雰囲気が……。

拓哉さんの指示でサードの藤田さんはいつもより前に守っている。バントの警戒だ。


何とも言えない空気の中で俺は第1球を投じた。

アウトコースに外れてしまいボールだったが、感覚は悪くなかった。

2球目も続けてストレートで攻める。今度はインコースに決まりそう。そう思った直後、鈴木さんはバントの構えを見せてそのまま1塁側に転がしてきた。

しまった‼俺は慌てて打球を処理しに向かう。

しかし、俺の横をあっという間に駆け抜ける鈴木さんの速さに驚いてしまう……。

俺がボールをつかんだときにはすでに鈴木さんは1塁ベースを駆け抜けていた。

颯馬にも引けを取らない走力の持ち主がいるなんて……。やっぱり全国はすごい。


続く2番サードの河野さんは初球から送りバントの構えだ。

無難な策ではあるが、今大会№1の得点力を誇るこのチームがホントに初回から送ってくるか?

ずいぶんと手堅いな。

取り敢えず素直に送ってくるならそれでいいという拓哉さんの判断通り、アウトコースにストレートを投げる。

って、鈴木さん走ってるじゃんか‼

河野さんはアシストするような空振りで走者の鈴木さんを援護した。

拓哉さんも懸命にスローイングしたが間に合わず、完璧に盗まれた。

これで0アウト2塁。いきなりヤバいぞ。


再び送りバントの構えを見せる河野さん。今度は本当に送ってくる。

俺は指示通り1塁でアウトを取った。

これで1アウト3塁。先制のピンチだ。

迎えるは3番ファーストの大澤さん。確かこの人は見た目の割に器用なバッティングしてたな。


絶対に先制点は与えたくなかったので、拓哉さんは初球から三振を取りに行く配球をする。

簡単に2ストライク1ボールと追い込むと、4球目に船本さんから空振りを奪ったことをきっかけに自信を持ち始めたチェンジアップで空振りを奪った。

これで犠牲フライと内野ゴロ、スクイズの心配をせずに投げられる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ