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世代交代  作者: 砥左 じろう
64/92

土門浩紀

勝ち越した直後、緊張感で包まれた6回のマウンドに上がったのはエースの長谷川さんではなく予想通り『土門浩紀』さんだった。

スコアが2対1となったことで逃げ切り……というより押し切りにきた。

185cmの長身から投げ下ろす最速139kmのストレートと落差の大きいフォークを中心に投げるピッチャーだけど、スライダーとカーブも投げるという。

関西のボーイズリーグ所属の選手なので対戦歴はないが、耳にすることは多い選手なので当然知ってはいた。


土門さんは先頭打者をストレートだけでファールフライに抑えると、1番の徳井さんに対して決め球のフォークを混ぜながら4球で三振に仕留めた。

最後のボールは力みからか高めに外れたが、勢いのある138kmのストレートだったためバットが回ってしまいスイングを取られていた。

2番の菅野さんもストレートで追い込むと、最後はショートバウンドしたフォークで空振りを奪った。

ノーチャンス……。そんな言葉が頭をよぎる。


6回の裏、マウンドに立っているのはエースの川上さんではなく、背番号10を付けた間宮という右投手だった。

投球練習を観ている感じだと川上さんの劣化版みたいな印象だ。大丈夫かこれ?

気になってウェブサイトで調べて見ると間宮は同世代の2年生投手だった。

その間宮は9番ショートの音海をサードゴロに抑えた。

ここで打順はトップに帰って1番の沖田だ。

今日はここまでいいとこなしの沖田だがこのまま終わるとは思えない。


6回の裏1アウトランナーなし。スコアは2対1。

投げているのが、土門さんだからこのまま決まりやと思うが、援護点取らなあかんよなぁ~。

渉も頑張っとったしな。


こいつ間宮とか言うたな。

球速はそれほど出ておらんが制球力はまずまずやな。

この程度のピッチャーが打てへんようじゃ上へは行けんな。

この球を仕留めたる。

キィィィーン‼


沖田が打った打球はレフトの頭上を襲うあわやホームランのフェンス直撃打となった。

この打球で3塁まで狙う姿勢を見せた沖田だったが、さすがに無理だと判断したのか2塁に留まった。

次の杉山さんは一貫して右狙いの打撃で走者の沖田を3塁へと進めた。

2アウト3塁。

ここで3点目が入るようなら試合は決まったも同然だ。


打席には強打の橋舘。

マウンドの間宮も絶対的な球威はないが、コースは間違えない投球でここまで凌いでいる。

だが、橋舘にそれは通用しなかった。

簡単に追い込んだものの粘られ、インコースを狙ったはずのストレートが真ん中寄りに入ってしまったところを強振され、打球は一直線にレフトスタンドへと飛び込んだ。

4対1……。状態の良さそうな土門さんが投げていることを思えば絶望的なスコアだ。


4対1で最終回に突入した。

マウンドには引き続き土門さんが上がる。

明日の決勝を見据えて長谷川さんを温存して勝つつもりのようだ。

前の回の球数が11球だったことを思えば、おそらく30球に達することなく抑えるのではないかと思う。

そう考えると決勝でこの人がリリーフしてくる可能性もあるか……。


最終回を迎えたとあって側には拓哉さんとトミーがやって来た。

2人とも土門さんの投球が気になっているのだろう。

先頭の3番田島さんをストレート2球で追い込むと最後は得意のフォークで空振りを奪った。

続く4番の川上さんには5球粘られるも最後は再びフォークで空振り三振に仕留めた。

これで全部で20球か……。

スラッガーとしても注目されていた川上さんでも対応しきれないほど鋭く変化するフォーク。

185cmの長身から投げ下ろしているだけあって角度がすごい。まさに魔球だ。

決まったな。


最後の打者となった5番には初球から横のスライダーで揺さぶり、外を意識させたところでインコースにズバッとストレートを投げ込んで試合を締めた。

少し甘めだったけど、バッターの手が出ないほど勢いがあったのだろう。

このストレートの球速は139kmだった。今日の最速か。

結局、土門さんは打者6人に対して奪三振5という支配的な投球を披露して、見事フェニックスカップ決勝へとチームを導いた。


同じ投手として刺激を受けているのと同時に、対戦した場合に打者としてどう攻略するか考えている自分がいる。

刺激を受けたのは土門さんにだけではない。同世代の森垣渉や沖田聖、橋舘遼らの活躍にも強い刺激を受けた。

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