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世代交代  作者: 砥左 じろう
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投手目線

観客席から観ている俺と颯馬は珍しく一言も口を利かずにジーっと試合の行方に注目していた。

渉はいいピッチングをしている。あいつらしく低めにカットボールと決め球のシンカーを集めている。

特に今日はカットボールの状態が良さそうだ。ただ、さっきの初ヒットはキャッチャーの配球ミスだ。だから引きずる必要はない。

しかし2アウトながら2塁のピンチを迎えている。世良としてはここは絶対に失点してはいけない場面だ。

一方の中岡としてはここで追いつけないようだと、リリーフながら最速139kmを計測している剛腕『土門浩紀』さんへの継投でそのまま逃げ切られてしまう恐れもある。

どっちも必死だ。


川上さんを迎えたところでマウンドに集まる世良の内野陣。

何を話しているのかはだいたい検討がつく。歩かせるか勝負するのか。

俺たちの戦っているシニアの世界で明らかな敬遠はほとんどない。カウントが悪くなったら歩かせるとかそういうのはもちろんあるけども……。この展開ならその可能性が高いように見える。


キャッチャーはインコースに構えている。表向きは勝負する方針のようだがカウント次第では歩かせるのかもな。。

さっきの打席でしつこくインコースにシンカーで攻めていたことを考えると、この打席の川上さんは相当インコースを意識しているはずだ。

しかも前のバッターだった田島もシンカーで打ち取られているし。

川上さんは厳しいインコース攻めにも動じず、冷静にボールを見極めて2ストライク2ボールとしていた。

ファールになったとは言え、今のインローへのシンカーを完璧に捉えられたのは嫌だろうな。

バッテリーが選択するのはなんだ?

投げたのは……カットボールかストレートだった。

守備位置などに気を取られていたのでどっちかはわからなかったが、間違いなくシンカーではなかった。

川上さんはしつこいインコース攻めにあったのにもかかわらず、しっかりとアウトコースのボールに食らいついてライト線に弾き返した。

前進守備だったライトの横を球足の速い打球が抜けていき、同点のタイムリースリーベースとなる。

しかも3塁に川上さんがいる状況なので、一転して逆転のピンチだ。


再びマウンドに内野陣が集まる。今度は監督らしき人もマウンドに向かっている。

少し時間が空きそうだ。

俺は隣で座って観ていた颯馬の左肩を軽くポンと叩いた。

「なんだよ?」

「別に。颯馬はどう思っているのかなと思ってさ」

訊かなくても、颯馬も世良と決勝で戦いたがっているのは見ていればわかる。

「まだ4回だぜ。わかんねえよ」

「だよな」

再び俺たちは視線をグラウンドに戻した。


世良の判断は続投だった。

川上さんには上手く打たれたが、渉のボールは悪くない。

続く5番にはここまで全く投げていなかった高めのストレートで空振り三振に抑え、同点止まりで続くピンチは凌いだ。

序盤から低めに投げさせてばかりだったあのキャッチャーのリードが失点の原因となっている部分もあると思う。

左右への揺さぶりはできていたが、高低は使えていなかった。

監督はそのことを伝えたのかもしれない。

次の回からガラリと配球が変わりそうだな。

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