昴の日常
金曜日の放課後、先生に進学先について考えているのか聞かれた。
今は目の前の大会で優勝することしか考えていませんと返したが、一応父と同じ風斂高校に進学したいと思っている。
実際、今年の春にスカウトの方から話はあったし、進学することが濃厚だ。
学業においては最低限進学できる程度には出来ていればいいと思っている。
そんなこと他の友達には言えないが、明らかに他の受験生とはモチベーションが違ってくると思う。
あくまで来年の話ですが……。
校舎を出て家に向かっていると後ろから右脇腹を触られた。
俺は振り返ることなく『颯馬だろ』と言った。
的中だった。
「当ったりー。野球選手に勘は重要だからね」
「野球やってなくてもこんなんわかるわ。颯馬以外にしてくる人いないし」
「それもそうだな。そう言えばさ、俺たちが小学生だった頃に出場したジュニア大会でペガサスの監督をしてた蓮沼監督が来シーズンからフェンリルの監督になるって噂、知ってるか?」
「それは初耳だな。てかあの人今何してんの?」
「確かテレビの野球解説だったような気が。こないだセイレーンとフェンリルの試合のテレビ中継で見かけたな」
「もうジュニアの監督はしてないんだな」
「まぁ、ジュニアの監督するより解説する方がお金貰えるんだろうしな。俺が同じ立場でも同じ選択をするだろうし理解できる」
「なんだかんだお金は大事だからな」
「今日はこのあとどうすんの?」
「帰って庭で練習だよ」
「金持ちは発想が違うな」
「いや、家だけな。それに確か父さんが買ったんじゃなくてじいちゃんが買ったはずだし」
「そうだったのか。俺はトミーと合流してバッセンにでも行くわ」
「何それ?俺ハブられてる感じ?」
「ちげーよ。昴は今週投手として出場するんだから気軽に誘えねえなってトミーと話してたんだよ」
「そんなに気を使わなくていいよ。打順はいつもより落ちるんだろうけど、打つのも好きだし」
「んじゃあ来る?」
「いや、今日は止めとくわ」
「結局来ないんかい」
「投げるのがメインだし、打つ方は君たちに任せるよ」
「じゃあな」
「また明日」
家に帰ると母が努の勉強を見ていた。
「ただいま~」
「おかえり。学校どうだった?」
「普通だったよ。あっ、進路について聞かれたよ」
「なんて答えたの?」
「今は特に考えていませんって答えたよ」
「どうして風斂高校に進学したいって答えなかったの?」
「本命ではあるけどまだわかんないよ。来年入学する選手たちの実力によっては考え直す可能性もあるし、今の所、でしかないから」
「それもそうね。晩御飯19時にする予定だけどそれでいい?」
「もちろん。ありがと。庭で軽く練習してくるわ」
「うるさくならない程度にしなさいよ」




