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世代交代  作者: 砥左 じろう
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3泊4日の優勝付きで

朝を迎え仕事に行く準備をしていると、2階から降りてきた昴がまだ眠そうな目を右手で擦りながら、左手で握っていたボールの縫い目を触っていた。

「おはよう。よく眠れたか?」

「おはよう。まあまあかな。今日も仕事?」

「そうだよ。明日からの準々決勝は家族全員で観に行くからな」

「ありがとう。相手が相手だから、負けるかもしれないけど頑張るよ」

と弱気に言う昴。珍しい光景だ。

「浜野シニアだから緊張しているのか?」

「そりゃあ全国制覇してるチームが相手だからね……。それに映像で見ただけだけど、3番の船本海さんはレベルが違うなって思ったし、対戦できるワクワクと打たれるかもしれない恐怖の両方の感情に振り回されてる感じ。でも大丈夫。ドームに着けばスイッチ入るだろうし」

「そうか。じゃあまずは合流時間に遅れないようにしろよ‼行ってくるからな。気を付けてな」

「んー。父さんも頑張ってな」

と寝起き特有の気怠さを隠そうともせずにそう言った昴に見送られ、俺は職場へと向かった。

昴は9時に越智駅前集合だと言っていたが、現在の時刻が8時であることを思えば余裕で間に合うだろう。

家から歩いて10分もかからないからね。


朝食を食べ終えすぐに歯を磨きに行ったが、洗面所は一足お先に食べ終えていた姉さんに独占されており使えなかったので、その間に最長3泊4日の東京出張のために昨晩用意した荷物を下に運んだ。

身なりをキチンと整えると姉弟に向かって、

「行ってくるわ。3泊4日の優勝付きで帰還できるよう頑張るから応援よろしくね」

と言うと、

「私の弟なんだからみっともないプレーをしないでよね」

「期待してるね、兄ちゃん」

と姉弟からエールを送ってもらい、集合場所の越智駅へと母さんの運転する車で向かった。

車だと5分もかからない距離だが、野球という競技は荷物が多いので車を出して運んでくれる人がいるとすごく助かる。


集合場所にはすでに半数以上のチームメイトたちが到着していて、チラホラと乗り始めているようだった。

俺が助手席から降りて後部座席に置いていた荷物を取り出すと、

「私たち家族は遥の部活とお父さんのお仕事が終わってからおじいちゃんの家に向かうわね」

と言われたので、

「んー、わかった。送ってくれてありがとね。それじゃあね」

と返してすでにチームメイトたちが乗り始めているチームバスへと向かって行った。


ここ数日間暑さの厳しい中、球場でプレーしていた昴の肌はすっかり日焼けしていた。

逞しくなったな、息子よ。

丁度2年前、リトルの選手権に敗れて私の胸で号泣していたあの子が、今こうして野球の才能に溢れた子供たちが集まってプレーするエリート機関の支倉シニアで、2年生ながら中心選手になっているんだから、人生って不思議ね。

私も頑張ってきた甲斐があったわ。もちろんまだまだ途中だけどね。

今日はこのあと遥を部活に送り出して、その後は務の夏休みの宿題を手伝ったりしながらゆっくりしますか。


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