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世代交代  作者: 砥左 じろう
40/92

アピール

バットをグルグルと回したあと、ゆったりとした動作で打席に入る誉。

2塁から見える表情だと普段通りだ。

1アウト2塁。誉にとって絶好のアピールチャンス。ここで打てばレギュラー奪取に一歩近づく。

初球から迷いのないスイングで仕掛けて行ったが、完全にタイミングを外される格好となり空振りだった。

でも、次のカーブを見極めると大きく息を吐いた。

少し力みが取れた様子だ。

力みの抜けた誉はインコースへの甘えのストレートに反応し、左中間に鋭いライナーを弾き返した。

俺は余裕を持ってホームまで帰ってきた。

打った誉は3塁を狙ったが、相手の中継に阻まれタッチアウトとなった。

それでもいいアピールにはなったと思う。

次の巧はセンターフライで攻撃は終わった。


遂に俊がマウンドに上がる。

加えてサードにそのまま誉が入り、巧のところに8番ピッチャーで俊が入った。そして9番ピッチャーの弘さんのところにライトで橋本さんが入った。

3人同時に代わると結構景色が変わった感覚になる。


今まで公式戦ではあまり出番を得られなかった。

それでも腐ることなく練習試合で結果を出し続け、今年の春からベンチ入りを果たした。

同世代の昴や颯馬のことは小学生時代、と言うかあの冬まで全く知らなかったし、俺は実際に対戦したわけじゃなかったからイマイチ彼らのすごさがわかっていなかった。

けど、ここにきて一緒にプレーしてみて彼らのすごさに驚かされた。


特に昴は同じピッチャーだったので、自分との実力差に愕然とした。

しかも野手としても抜群のセンスを誇る。こんな超人と同世代の自分は運が良いのか悪いのかと思っていたこともあったが、自分と比較したところでどうにかなる次元の選手ではないなと思い、すぐに自分のことに集中することにした。

昴が1年生ながら1軍で活躍する中、2軍で地道に結果を残し続けてきた。

そうした日々を過ごしてきた上で迎えた今日だ。

幸いにもスコアは7対0と大量リード。


マウンドに拓哉さんが来て俺の左肩にそっと手を置いた。

「俊、そんなに緊張するなよ。点差あるし1つ1つアウトを重ねて行けばいいから。うちは守りも堅いし打たせていっていいからな」

「はい。リラックスして投げます」

と言うと拓哉さんは表情を崩しグラブをプロテクターにポンと当てたあと、ホームベースへと戻って行った。

相手の打線は9番からだ。

完全に緊張感が解れたわけではなかったけれど、目の前の1人1人の打者に自分の精一杯のボールを投じた。

しかし2アウトを取った直後、2番の同世代の林に甘く入ったストレートをレフトスタンドに運ばれた。

ソロホームランだったのであまり気にせず残りのアウトを取ることに集中した。

3番の難波さんに対しては2軍時代に身に着けた得意のフォークで空振りの三振を奪った。


ベンチに戻ってくると監督から「ナイスピッチングだ。次の回も頼むぞ」と声を掛けられた。

ホームランについては気にしていない様子だった。


9番ライトの恭さんが三振に倒れるも1番の颯馬がショートへの内野安打で出塁した。

続く信介さんは良い当たりを放つも真正面のファーストライナーで颯馬もそのままアウトになってしまった。

7回裏。この回を抑えればフェニックスドームでプレーする権利を得られる。

俺はセンターの守備に向かうがてら近くにいた俊を励ます。

「ビシッと決めろよ。ラストイニング」

あえてプレッシャーになるようなことを言ったが、今の俊なら大丈夫だろうと思ったからこそ言った。

「さっきの回でフォークが通用する実感を持てたから任せとけ」

と前の回より緊張感の抜けた、けどそれでいて自信を得たような笑みを浮かべていたので逞しく思えた。

俊は俺への宣言通り、圧巻の投球を見せる。

フォークの落ちはいいし、ストレートの伸びもある。

安心して見ていられる。


そして遂に最終打者となった6番を決め球のフォークで空振りの三振に仕留めると、みんなが拳を上げて勝利を祝った。

公式戦初登板となった俊はソロホームランこそ許したもののキッチリと後続を断つ好リリーフを見せ、いいアピールをしたと思う。

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