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世代交代  作者: 砥左 じろう
35/92

粘り合い

3回が終わったところでスコアは3対0と俺たち支倉シニアがリードしている。

4回のマウンドに向かう。わかってはいたことだが、本選に出場してくるだけあってやっぱり相手は強い。

この回はクリーンアップから始まるので気を引き締める。

3番の中村さんにカーブを3球続け追い込む。

打ちに来る気配が感じられない。それなら……と思い投げ込んだストレートにスイングしてきたが空を切らせた。

中村さんの反応からなんとなく感じていたが、チェンジアップを意識している。

前の回の足川さんへの投球の残像が強く焼き付いているんだろうな。


4番の岩田さんに対してもチェンジアップは投げずにストレートで押し切りセカンドフライに打ち取った。

5番の長門のところで守が初球からチェンジアップのサインを出した。

頷いて腕を振る。長門は不意を突かれる形となったが、バットの先で拾いセンター前にポトリと落ちた。

ついてない……。

けど欲を言えばもうボール1個分低くても良かった。

だがタイミングは外せていた。

6番の安田さんに対しても2球で簡単に追い込むと、チェンジアップのサインが出た。

今度こそ決める、そう思い腕を振り切った結果、空振りを奪えた。

この1球には確かな手応えを得られた。

今の感じか……左手に残っている感覚を思い出すかのように見ながらベンチへと戻る。

それは受けている守も同じだったようで駆け寄ってくる。

「今の1球特に良かった。あれを常に投げられるようになったら最高だね」

「だな」

と言って俺は頷いた。


打順は5番のトミーからか。

安田さんに驚くほどの球威のあるボールはないが、スライダーとカーブの2球種を丁寧に低めに集めてくる。

ゲームメイクが上手そうな印象は試合前から変わっていない。

トミーは低めのスライダーを振らされ三振に倒れベンチに戻ってくるがてら、すれ違った俺にこう言った。

「調子良くなってきてる」

それはベンチから見ていても明らかだった。

俺は5球投げさせたが、結局膝元のカーブに詰まってファーストゴロに打ち取られた。

甘いボールは1球もなかった。

だが巧は俺が打ち取られたカーブに上手く合わせライト前に運んだ。巧のバットコントロールの上手さは本当に羨ましいなと思う。特に低めの変化球に反応するときなんかはまさに芸術的だ。

しかし続く守は外のスライダーを振らされ三振に終わり両チーム無得点のまま4回が終わった。


投手戦っぽい空気になってきている。

3点をリードしているとはいえ追い上げムードになると嫌な感じだ。

下位打線を相手に多少見下すくらいの強い気持ちを持ちつつチェンジアップを主体に攻めた。

3者連続三振という最高の結果で相手に隙を見せない投球を披露したが、ベンチに戻ると監督が少し難しい表情をしていて、俺と守にこう告げてきた。

「今の回で球数が65球に達している。次の回で代わるなら2回戦でも多少は投げられる。だが完投するならほぼ間違いなく次は投げられない。俺は今の一条の状態なら完投させたいと思っているが、2人はどう思う?」

初回の慌ただしい立ち上がりと三振でアウトを重ねている影響でだいぶ球数が増えてしまっていたようだ。

「俺は最後まで投げ切りたいです」

俺は迷うことなく自分の意志を伝えた。

少し遅れて守も自分の考えを口にする。

「最後まで昴で行けると思います」

「わかった。暑さも厳しくなっているし、一応ブルペンで小田嶋に肩を作らせておくから無理はするなよ」

「はい」

と2人揃って答える。


9番の恭さんはストレートを捉えるもライトライナーだった。正面か。

3回り目に入り今日調子の良さそうな颯馬が打席に入る。

少し高く浮いたカーブを打ちに行くも上がり過ぎてしまい伸びを失ったライトフライに倒れた。

なんか嫌な感じだ……。

2番の璉さんもセカンドゴロに終わり、たった6球でチェンジとなった。


照り付ける陽射しが強さを増す中、俺は残り6つのアウトを取ることだけに神経を集中させる。

先頭の1番足川さん。過去2打席でいずれもヒットを打たれているので当然強く意識はしている。

俺はギアを上げ抑えにいく。高めの釣り球を振らせ3球三振に斬って取る。

2番の吉田には左対左で投げ切るのが難しいインコースを厳しく攻め続けたあと、アウトローいっぱいのストレートで見逃しの三振を奪った。これで2アウト。

3番の中村さんに対しては前の打席に見せなかったチェンジアップを低めに集めたあとの高めのストレートでキャッチャーフライに打ち取った。

守の上下左右に加え緩急を付けた好リードに助けられ試合の主導権を握り続ける。


6回の裏、1人出れば俺まで回る。

前の打席でスクイズを決めている宗さんはアウトコースのストレートに逆らわずコンパクトなスイングで三遊間を破っていった。

この流れに拓哉さんも続ければと思い打ち上げた大飛球の行方を見守ったが、あと一伸びが足りずセンターフライだった。

俺はここまでノーヒットのトミーに期待してネクストバッターズサークルに向かう。

ノーヒットなのは俺もか……。

過去2打席崩された形になっていたトミーがやっとらしい形でスイングをしたなと思ったが、豪快な空振り三振だった……。これもある意味ではらしさだ。


俺は過去2打席の反省を踏まえ慎重にボールを見極める1ストライク3ボールとなったところでカウントを取りにきた感じのカーブを強く叩く。

打球は……低いライナーでライト前へと抜けて行った。長打にできるボールだったのに……。若干ミスったか。

今日2出塁の巧は多分こういうピッチャー得意だろうな。

巧はタイミングを取るのが上手くバットコントロールも抜群にいいので、この手のピッチャーとは相性がいいと思う。

思った通り、初球のスライダーを痛烈な打球でセンターに弾き返した。見逃せばボールだろって低さだったが、よくあんなのを芯で打つよなと感心する。

でもこれで満塁。

頼むぞ、守。

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