監督の意図
『今年の支倉シニアは2年生の存在感が濃い』そう言われることが多く、監督である俺自身もそう思ってはいた。
1番の畑下の魅力は何と言っても足の速さとミート力の高さ、そしてその足の速さが生む躍動感満載の守備力と走塁だろうな。
5番の富岡で言えばパワーだろう。これほど4番らしさを持った逸材に出逢ったことがないと言ってもいいほどの大器だ。
6番の一条を説明できそうな言葉はたくさんあるが、彼ほど『天才』の4文字が似合う選手は現役の頃でさえ見たことはないと思う。
7番の蓬莱で言えばやはり選球眼の良さだろう。打席での冷静さには中学生離れしたモノを感じる。
8番の迫田はお父さん譲りの守備力の高さと鉄砲肩だろう。高校生と比較してもトップクラスだと思う。
こうした2年生たちを抱えている反面、3年生たちは地味な印象が強い。それは彼らも自覚している。能勢は別格だが……。
本多や板谷、藤田に橋本といったどちらかと言うと脇役タイプな選手たちがこういう場面で堅実に役割を遂行してくれるのは本当に助かる。
2年生たちも良いが、彼らにはまだ波があり安定感というところでは3年生たちには及ばない。
個性が強くなりすぎると一体感を失いやすい。
脇役タイプの3年生たちは主役タイプの2年生たちを上手くリードし支えている。
今日のような急な守備位置の変更やスクイズといった作戦にもきちんと応えてくれ、勝利を手繰り寄せてくれる。本当に有難い存在だ。
主役タイプだけでは打線として機能しない。状況に応じて誰かが犠牲を払ったりしながら勝利というゴールに向かうのが野球だ。俺はそう思う。
例えば畑下なんかは走攻守のすべてに恵まれ、おまけに肩も抜群に強い。
それに対して本多は能力的にはすべてにおいて劣る。だが堅実な守備に送りバントの上手さ、ポジショニングの良さなんかは畑下よりも良い。
そしてそういう良い部分を畑下に教えたりすることで、畑下自身のポジショニングや守備の堅実さにもかなり変化が出てきている。
畑下を1年生の春から1軍のベンチ入りさせているのは彼とは真逆なタイプの本多から自分に欠けているものを学び取って欲しかったからだ。
正直なところ、今の3年生たちが引退したあとで脇役タイプを担えそうな選手が少ないことに若干の不安を覚えている。
それが出来そうなのが迫田と蓬莱ぐらいしか浮かばない……。




