夏祭り
外はまだ暑いが日中に比べればまだマシだ。
道中には浴衣着た俺よりも数個年上だと思われるカップルらしき人達がたくさんいる。
1人で公園に向かっているとやたらと視線を感じる……。俺なにかしたんだろうか?
単に1人だから浮いているだけか。
公園に着くとすぐに松澤さんを発見した……だけど他にも数名いる。
確か……同じクラスの真田麻友さんに多分他クラスの女子2名、それにこっちも他クラスの見知らぬ男子2名とこちらは同じクラスで卓球部の野中健吾だ。
健吾は友達だからいいけど他ぜんっぜん知らねー。
どうすんだよこれ?家に帰ってネットで抽選会見てる方がマシじゃね?
気まずさを解消するため、誘ってきた松澤さんに声をかける。
「あのさ、知らない人ばっかなんだけど……」
松澤さんもしまったぁと思っていたのか首を掻きながら言う。
「ごめん。2組の有希ちゃんを誘ったら他の子も一緒に行きたいって流れになったみたいで……」
そんなことだろうと思っていたので驚きはしなかった。
そんな俺を見て健吾はケラケラと笑っている。
「おいっ、何が面白い?めっちゃ気まずいんだぞ」
「まあそう言うなよ。そういや試合勝ったんだろ?おめでと」
「おう。ありがと。腹減ったしなんか食いに行くか」
「そうだな」
と言って健吾は松澤さんに向かって親指を立てる。
松澤さんも同じようにして返す。
心底場違いだなと思っていた俺は気まずさから抜け出しホッとする。
「あー、こうして学校の外で昴と過ごすのってさ、初めてだな」
と健吾に言われる。
「そうだったっけ?」
「そうだよ。俺は卓球があるし、昴には野球がある。だからこの光景はかなりレア」
「確かにそうだな」
健吾は本当に良い奴だ。
俺たちが通っている中学校は県立だから、近隣の小学校からそのまま進学してきている生徒がほとんどで、入学当初俺と颯馬は浮いていた。
一部では俺たちの出場した大会のことを知っている生徒もいて、健吾はその1人だった。
完全にアウェーだった俺たちを元々小学校で築かれていたコミュニティに加えてくれた。
おかげである程度友達もできた。
健吾がいなかったら、学校が憂鬱になっていたかもしれない。
だからホントに感謝している。
「だろぉ?」
「そう言えばそうだな。ほとんどシニアの友達と過ごしてるからなんか新鮮」
「やっぱ、天下の支倉シニアともなると練習厳しいんだろ?」
「うん。それなりにね」
「学校の野球部には興味ないの?」
「ないね。そもそも俺自身が支倉の練習についていくのでヒーヒーだし、そんな余裕ないわ」
と買ったばかりのチョコバナナを口に頬張りながら言う。
チョコバナナって結構美味いな。
「そうか」
と言われ、
「そうだ」
と素直な思いを口にした。
時間は現在17時58分になっていた。もうそろそろ運命の抽選会が始まる。
選手の俺には結果を待つことしかできない。この時間は生きた心地がしない。チェンジアップの精度に不安がある今は特に……。
明日は午前中だけ練習なので、その時に拓哉さんに見てもらうつもりだ。
俺の不安感は表情に出ていたらしく健吾に指摘された。
「昴、顔に出てんぞ」
「えっ‼」
「抽選気になるんだろ?」
「うん」
再びスマホで時間を確認するとすでに始まっていた。
俺は固唾を呑んで画面を見つめる。
抽選の順番は去年のフェニックスカップ本選に出場したチームの中で成績の良かった都道府県順に行われる。同順位の場合は予選からのチーム防御率をもとに決められるらしい。
ウチは去年ベスト8だったがチーム防御率は良かったので順番は5番目だ。
そして画面に映った監督は7番目の枠を選んだ。
あとはすべての結果が出揃うのを待つだけだ。
その後も順調に進み18時30分をすぎたところで32の枠すべてが埋まった。




