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世代交代  作者: 砥左 じろう
25/92

あっという間に

球場に着いたとき、すでに試合は6対0とほぼ決まりかけていた。

予選とはいえ決勝……それでこんなに力の差があるのか。

「ねえ、昴はどこを守ってるのかしら?」

多分センターだろうと思って見てみると、右手にグローブをはめた昴の存在を確認できた。

「いたよ。センターにいる」

「あっ、いた。最近あの子投げないよね?」

「そうだね。まだ2年生だし中野監督も起用法に慎重になっているのかもね」

実際、昴が支倉シニアに入団した当初から才能を高く評価してくれていた監督さんは慎重に使っていく方針ですと育成方針を語ってくれていた。

「そうよね。でもたまにはみたいな~」

「なら全国大会で昴が投げる予定の日、俺有給使うから一緒に応援しに行こう」

「いいの?やったぁ」

「うん。せっかくの晴れ舞台だし」


試合は進み3回の表、支倉シニアの攻撃となっていた。

この回の先頭は8番ライトの蓬莱(ほうらい)巧くんからだ。

そしてこの回から相手の投手が代わったらしく左腕が出てきた。

見た感じあまり迫力は感じられなかったので、おそらく技巧派なのだろう。

巧くんは5球目の外に逃げるスライダーに上手く合わせレフトの前に運んだ。

この子はいいバットコントロールをしている。

次はエースの零くんか。

初球から打っていったものの若干詰まってサードゴロに倒れたけど、当たりが弱かったのが幸いして送りバントと同じ感じになった。

これで打順は1番の颯馬くんか。まだ3回なのにもう3順目なのか……。

颯馬くんは昴にとって1番身近な友達なんだよなぁ。

こうして見てると2人共本当に成長したな。


颯馬くんは6球目を見極めて出塁した。

チャンスで3年生たちに回ってきたか……。

結局2アウト満塁となって4番の拓哉くんが打席に向かった。

この子は何というかやっぱりオーラがあるな。

その拓哉くんに相手がビビッてしまったのか歩かせてしまい押し出しの1点が追加された。

ここで倭くんが打ったらこの試合もコールドになりそうだな。

倭くんはインコースへの球威のないストレートを完璧に捉え、打球はホームランバッターによく見る弾道を描きレフトスタンドの芝生に着地した。

グランドスラムか。英語だと満塁ホームランはグランドスラムと言う。倭くんの打球は助っ人外国人みたいで、満塁ホームランというよりグランドスラムと言った方がよく似合う気がする。


ベースを1周してホームへと戻ってきたトミーは満面の笑みを浮かべていた。

「ナイスホームラン。さすがだな」

「ありがとう。手応えバッチリだった」

「んじゃ俺も続くは」

と冗談半分で言った俺にグッジョブサインを向けたトミーは少年のように小躍りしながらベンチへと戻って行った。


「ここで昴も続ければいいね」

「うん。まあ相手の投手はもうガタガタみたいだしここで打っても……」

とか言ってる最中に初球を振り切り打球は右中間フェンスを越えた。

「……我が息子ながら恐ろしい才能だな」

「そのすごい子を産んだのは私よ」

と渾身のドヤ顔を見せる妻が言ってくる。

「本当にその通りだと思います。ありがとうございます」

「どういたしまして」


ホームベースを踏んでベンチ前へと戻ってくるとトミーが迎えてくれた。

「ホントに打つとはな。やっぱりすげえよ昴は」

「ありがと」

試合は4回の裏、最終回に入っていた。

すでにアウトカウントは2アウト走者なし。

バッターは3番。カウントは2ストライク1ボール。

次がラストボールになりそうだな。

右スリークォーターから放たれる零さんの横に鋭く滑るスライダーがアウトローいっぱいに決まった。

三振で試合は終わった。

この日の零さんは安定感抜群で打者12人に対してノーヒット、奪三振9という圧巻の投球を披露して本選出場を確定してくれた。


整列のときに、相手チームの選手たちからこう言われた。

「支倉は2年生たちもすごいな。来年も俺たちにチャンスはなさそうだ。俺たちの代わりに本選でも頑張ってくれよ」

「ありがとうございます。はい」

と返してベンチ裏へと消えて行った。

こんな感じであっという間に試合は終わったが、俺にとってはここからが本番で気の緩みは一切ない。

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