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世代交代  作者: 砥左 じろう
21/92

感謝

ああねみぃ~。まだ寝たりねぇ、そう思って枕元にある時計で時間を確認すると17時10分になっていた。

どうやら4時間近くも仮眠を取ってしまっていたらしい。仮眠とは言わないか。なんにせよ寝すぎだ。こんなんで今晩寝付けるのだろうか?

そんなことを思いながら起き上がって部屋を出た。


記憶が曖昧なのだが、みんな16時30分頃帰ってきたらしい。

俺が目を覚ましたとき、母さんはすでに夕飯を作り始めていた。

帰宅時に一応俺の部屋まできてようすを見にきていたようなのだが、爆睡中だったらしく全く気付かなかった。

試合終わりの俺に気を遣っててくれたようだが、17時を過ぎても起きる気配のなかった俺をさすがに寝すぎだと思った母さんが姉さんに頼んで俺を起こしに行かせたらしい。

寝ぼけ眼でうろ覚えだったのだが「お疲れ様。お母さん夕飯作ってるから下りてきな」と言われた気がする。うん。気がする。

だけど、部屋を出て階段を下りてるといい匂いが鼻を直撃してくるので、さっきのは確かだったんだなと思う。


「おかえり」

とキッチンで料理をしている母さんとその後ろで冷蔵庫を開けて麦茶を取り出していた姉さんに言った。

「ただいま」

と2人声を合わせて返してくれた。


「試合お疲れ様。明日は投げる予定あるの?」

と予定を訊いてくる母さん。

「多分ない。明日も野手としての出場になると思う」

「そう。なら次に昴が投げてるところを観れるのは本選になりそうね」

「うん。あと、こんなこと言うの恥ずかしいけど、いつも俺を支えてくれてありがとう。ご飯まで外で軽く身体動かしてくる」

と言って恥ずかしさのあまり返事を聞かず庭に向かうと、

「ちょっと待って」

と母さんに呼び止められた。

「何?」

「あのね、昴。リビングまでフェニックスカップ本選の日程表持ってきてくれる?あとで日程の確認をしておきたいの。それと、今の言葉すごく嬉しかったよ。ありがとう」

「それは良かった。これからも宜しくお願いします。あぁ、わかった。なら今持ってくるわ。今年もドームまで応援に来るつもりなの?」

「応援に行っちゃだめなの?」

と残念そうな顔をして訊いてきた。

来てくれるのは嬉しいけど、姉さんと努にも予定があったりするだろうから悪いなとは思う。

「もちろんいいけど、その、姉さんとか努にも予定があるんじゃ……。まあいいや。持ってくる」

と階段を上り日程表を取りに行った。


あったあった。初戦は来週の火曜日か……。しかもダブルヘッダー……。

去年もそうだったから今年もそうだろうとは思っていたけど、ダブルヘッダーか。どうなることやら。

リビングに戻るとテーブルに姉さんが座っていたので久しぶりに2人で話をしていた。

中学生になってからあまり2人で話した記憶がない。

姉弟というより同居人みたいな感じ。


訊くと姉さんも合宿があるようだったが、それは再来週の話だった。

母さんには姉さんの方から日程を伝えてくれるようなので俺は庭に向かう。

一眠りしたせいか全くと言っていいほど疲労感がない。

庭では父さんが努にトスを上げていた。

努は現在小5で近所の越智リトルでプレーしている。右投げ右打ちのショート兼リリーフ投手だ。

我が弟だけあってなかなかに筋が良い。

球速も110キロ以上は出ているらしくそこそこ有望視されている。

2年後、努も支倉に来るのかもしれないな。


「あっ、お兄ちゃんだ。一緒に練習する?」

「俺はいいよ。素振りで十分」

俺は持ってきた木製バットを振り始めた。

この木製バットは小4のときに素振り用として使い始めたけど、だいぶ手に馴染むようになってきて、中2となった今では父さんとの自宅練習のときにはこのバットを使って打ち込んでいる。

理由は単純で金属だと近所迷惑になるからだ。


側で打ち込んでいる努を見ていて随分とコンパクトなスイングをするなと思った。

このスイング、どこかで見覚えがある。

そうだ‼フェニックスの西潟だ。

でも努の奴いつの間にこんな洗練されたスイングを身に着けたんだ?

ちょっとした疑問を持ちつつも2人の邪魔にならない場所で黙々とバットを振り込む。

冬に夜、素振りをするのは地獄だが、夏は心地よい夜風が吹いているから最高だ。

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