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世代交代  作者: 砥左 じろう
12/92

Remind

久しぶりの女子会を満喫した私は夕焼けに染まる空の下、我が家へと向かっていた。

そんな私の向かい側から見知った顔の親子が現れた。司の奥さんとその息子の昴くんだ

ついさっきまで話題にあがっていた彼が目の前に現れるなんて……。


互いの距離が詰まるにつれて奥さんと昴くんの大きさに驚かされる。

その距離がなくなり真横に来たとき、昴くんの横顔が司にそっくりであることに気づいた。似てる。あまりにも似てる。生き写しといっても過言ではないほどに似てる‼


そして奥さんすごく美人!琴音が言ってた通り元バレー選手だっただけあってスタイルも抜群だな~。

昴くんの活躍ぶりからするに育児も完璧なんだろうな。私とは対照的すぎて敵意すら湧かない。


だが私には私の強みがある。それは仕事だ。大学生だった頃から将来は高給取りになりたいと思い勉学に勤しんできたし、その甲斐もあって今の地位を手にしている。

とは言え私にはこれといった特技がない。例えば料理が上手いとかスポーツが得意とか絵を描くのが上手とかいった子供が一目見ただけでわかる類のだ。


もし私に才能があるのだとするのならば、それは社交性だけだろう。

ただ、これは料理やスポーツや絵と違いはっきりと認識しにくいものだから、子供に伝わりにくい。

これが息子の育児をしているときに抱えていた1番の悩みだった。

だからこれと言って子供に教えられる特技のなかった私にとって、産後すぐに職場に復帰して働いている方が子供と密着して過ごすより楽だったのだ。


それでも母親として愛の限りを尽くして育ててきたつもりだったが、現状の差は悲惨だ。

よく何かを習得するのには1万時間を要するとか聞くけど、息子に特定の何かを長時間やらせたことはないし、結果が出ていなくても仕方がないかと思えてきてしまう。


家に帰ってきたけど誰もいなかった。息子は部活のあと遊びに行くって言っていたし当然か。夫はまだ仕事中みたいだ。

家事をしながらこの先の人生について思考を巡らせていると鬱病になりそうな気がしてきた。


未来が楽しみな司の家族と不安だらけな私の家族……。

今から来た道を戻ることは出来ない。自分から司を見限ったのに彼に責任転嫁をするのはあまりにも幼稚だし、そもそも筋違いだ。


夫はみなとみらいの高層ビル内に入っている大企業の役員で高給取りだ。私より若干多く稼いでいる。私たちはいわゆるパワーカップルだ。

私も夫もお互いの多忙さを承知した上で結婚した。子供が産まれてからもあまりペースを落とすことなく働き続け、見事出世争いに勝ち上がって今の地位を手にした。

客観的に自分のキャリアを振り返ってみて、社会人としては大成功だったなと思う。人も羨む大企業に勤めその中で出世し高給取りになった。

これらは世間の人が思う成功者の条件によく挙げられる例で、私はこれらのすべてを満たした。


再び一条司という名前を聞くことになるまで私は完璧な存在だと思っていた。

司のことは元甲子園のアイドルだけど今は都落ちの凡人として過ごしているものだと思っていた。

今にして思えば、司は奥さんと協力して育児に精を出していたから15年位名前を聞かなかったのだろう……。

そして今、彼が手塩にかけて育ててきた野球の天才は芽を出し、息子の世代の野球界を代表する存在として眩しすぎるほどに躍動している。


よく、ホントに私生活が充実している人はSNSで育児頑張ってますアピールとかをしないって聞くけど、司の家族を見ているとその通りなのかもしれないなと思う。少なくとも司の家族は。


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