またお前か、転入生
「…何なんだ!アイツは!!」
転入生の櫻葉 藍斗は、
話しかけてくるわけでもなく
ただ、ただ私を見つめる。
真横からの熱視線、女子の嫉妬の視線に
耐えきれず、昼休み本人に声をかけられる前に
京藤の元へ避難することにした。
「んー、好きなんじゃね?お前のこと。」
この友人も、自分同様、
人事なのでテキトーに返事をする。
「うぜぇ、京藤。」
「ちょ、なんで俺を殴るの?!」
「さっき笑いこらえきれずに
吹き出してクラス中の視線集めてただろうが
人の災難、笑うとか最低だねー?」
「いやー、お前が困ってるの見んの初めてだったから
おもしろくて、ついっ!」
すかさず膝蹴りを食らわす。
「…ッ、、」
声にならない声でなんか言ってる
友人を置いて先に弁当を広げる。
…うん!今日のお弁当も美味しそうだ。
それだけで嫌なこと(転入生、クラスの女子、
クソみたいな性格の友人)を忘れられる…さすが萌葱。
我が家の食事は全て兄の萌葱が作っている。
一つ上の学年の兄は今年で高校二年生、
勉強やスポーツは平均的で、
それでもその優しい性格と
綺麗な顔のおかげで相当モテる。
そんな兄が作る料理がとても美味しいと
知っているのは私と父さんとお義母さんだけだ。
謎の優越感に浸りながら
ピンクの如何にも女子のお弁当箱から
ふっくらした黄色を口に運ぶ。
「………ッ///」
甘い玉子焼き…これぞ幸せ!!
この幸せを邪魔するやつは許さ…
「ねぇ、君の下の名前なに。」
…私の机に図々しくもあざとく頬杖を付きながら
ガン見してくる爽やかイケメン転入生など私には
見えてないぞ。きっとアレだ!私じゃなくて
私の後ろにいるクラスメイトに声を…
「紺野さんってさ…」
クソッ私だった!クラスに紺野私だけだもん!
何の用だよコイツ!テメェが話しかけてくる度、
女子に(視線で刺し)殺されそうなんだよ!!
「なに?櫻葉くん、なんか用?」
女子の視線に耐えきれず、
速やかにことを終えさせるため
こちらから要件を聞くも、
酷く曖昧な表情を浮かべ…
「……ごめん、何でもない。」
と言って自分の席に戻って行った…。
なんじゃそりや…何がしたかったんだ?
***
お昼を終え午後の授業中も
様々な嫌な視線に耐え長い1日が終わった。
いつもは京藤と帰るのだが、
今日は萌葱が委員会で遅くなるので
一緒に帰る為に図書室で時間を潰す。
お気に入りの本を本棚から取り
いつもの席で放課後のグラウンドから聞こえる
運動部の掛け声をBGMにページをめくる。
誰もいない夕焼けに染まる図書室ほど
居心地のよい所はない。
廊下側から足音が聞こえて空気を消す。
見回りの職員に見つかると早く帰れと煩いからだ。
ガラッガラッと音を立てスライドの扉が開く。
気配を気にしつつも手はページを捲るのをやめない。
「紺野さん、何読んでるの?」
それをやめたのは目の前から
人の気配を感じ渋々、顔をあげた…またお前か、転入生。
***
「…小説」
そう言って何となく転入生に、
タイトルが見えないように本をたたみ膝の上にのせる。
「ふーん、本好きなの?」
「別に、暇つぶしで読んでるだけ」
何故、こうもコイツといるとイラつくのだろう。
…度々、私の平穏を邪魔するからか?
「紺野さんの名前って珍しいよね、”浅葱アサギ”って。」
なんで知ってるのキモイな、と少し引く。
櫻葉 藍斗は、それを察したように
「クラスの子から聞いたんだ。ごめん。」と答えた。
「ねぇ、紺野さんって……」
「悪いっ浅葱、遅くなったっ。」
委員会の終わった萌葱が
急いだのか汗を垂らしながら図書室に入ってきた。
「…えーと、浅葱の友達か?」
「んーん。他人だよ!そんなことより早く帰ろ!
もう最終下校過ぎてるよ!」
「え?ぁ…ああ、そうだな…。」
転入生の話が途中だったが
聞く義理もないので早々に帰ることにした。




