その果てに
一人の男が倒れ床を血で濡らしています。
男は今にも息絶えそうだがさすがは自称世界最強この程度のは死なかったです。
必死に足掻き回復を、そうして襲われた理由を私に問いただしています。
その問いを無視して、私は一つの本を眺めいるのです。
「いいの? 君がこの十年前ボクと出会ったあの日からずっと恨んでいた相手だろう? もっと傷つけたいとか、君に助けを請う姿が見たいとか、あの呆け顔にもっと残酷な真実を突きつけたいとかさ。もっとないの? ボクを悦ばせることがさ。それに日記を読んでその罪の数だけ生かしながら痛めつけるでしょ? 早くしてよ」
一匹の黒猫が何もない空間から現れ、私に話掛けてきます。
「いいよ別に。これはもうどこにも行けないし、ただあとは終わりを与えるだけ。そうでないと復讐は達成されない。それと私は」
私はこの黒猫に化けている半淫魔のマーリンと喋るときはこの軽く柔らかい感じの口調で話します。私の弱すぎる内面をフワリと覆い隠してこの半淫魔に見せて付け込まれないようにするためです。まぁ多分それは意味を成し得ていないと思っていますが一応です。男の世界の言葉だと念には念を。というわけです。
『何故裏切った!? モルレッド。妻たちの中でオレは一番モルレッドお前を一番信頼していた。なのになぜ。いつからだ!! いつからオレの敵になった。もしかして誰かに操られているのか』
頭の中に耳障りな声が聞こえてきた。これは男の持っている。異能力『念話』でしたっけ? 「お前ともっとつながっていたいんだ」みたいなキモチノワルイ声で欲しいとも言っていないのに上から与えてきた。異能力。同じく異能力念話を持っている相手同士なら伝えたい思いを声に出さずとも伝えられる異能力。毎回好きだとか感に触る言葉ばかり告げてくる。うざったい能力。だけど男はこの能力がどこからきているのかを全く知らないようです。
『それになんだその口調は!?』
この男はとてつもないほど愚かなのだなと思いました。そうそれだけ。
『聞いているのか? モルレッド! おいモルレッド!! まさか本当に操られているのか?』
この期に及んでまだ都合のいい妄想を妄信している男を無視して、私は思います。
あぁこの男の日記を読んでこの男への憎悪が増したはずなのに、この男が醜く成り果てよ
うともこの胸を訪ねてくるのは常に虚無感だけです。だから罪の清算のために痛めつける気にもならない。ならばマーリンが言ったように残酷な真実を告げるほかないでしょう。
そうすれば別の思いが沸いてくるかもしれないですし。
「何故いつから裏切っていたかって? 始めから。初めて見たあの日からずっと。そのときから貴方を殺すつもりでこの日貴方を殺す為だけに生きてきた。口調? 貴方に近づくために貴方が好きそうなキャラを演じてきましたがその必要もありませんので」
『なぜだ!! 何故オレ騙した!! 答えろ!! いやそれよりもオレかけてくれていた言葉たちはすべて嘘だったの!? 答えろ!! おい聞いているのか!!』
「なぜ? ですか? 貴方は本当に愚かですね。 私はサー・モルレッドあなたが殺したサー・ウィリアムとその妻の娘にして、貴方の殺した奴隷たちの良き友人でした。貴方に投げかけた言葉? えぇすべて嘘です。その場で貴方が求めていそうな言葉言うだけの簡単な仕事でした。貴方は分かりやすく愚かですので」
『は? お前がウィリアムの娘……ラントーン、ガラウィーム、ヘレス、ベディヴィアム、パルスシルヴァ、ケイー、リスタン、アグラウィム、ガーレス、パンデス、モルレッドを殺せ!! 一秒でも早く、あのイケ好かないウィリアムの種から生まれた子など見たくない。殺せ!!』
「さて私を殺しにラントーン、ガラウィーム、ヘレス、ベディヴィアム、パルスシルヴァ、ケイー、リスタン、アグラウィム、ガーレス、パンデスの十人が来るまで私の来歴を事細かにお教えいたしましょう。そのあとにこの部屋に来たラントーン、ガラウィーム、ヘレス、ベディヴィアム、パルスシルヴァ、ケイー、リスタン、アグラウィム、ガーレス、パンデスを貴方の前で屠りましょう」
『やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろ、ウィリアムの野郎の亡霊め死んだ後もオレ殺しに来やがって。あいつが悪いんだ。オレから安全な生活を奪ったからだ。オレは悪くねぇ!! 信じてくれ!! オレ悪くないだ。いや、オレが悪かった。ほら謝るから。ごめんなさい。だから助けてくれ。許してくれ。仲直りしよう。オレもお前がオレを刺したことは許すから。許して。』
そんな男の叫び声を聞いていても一切の感情が浮かばない。
それでも私はその先にあるかもしれないものと復讐のため、残酷に冷酷に男が幸せと信じて疑わなかった生活の真実を語ります。
謳うように、強い感情を望み請うように、男の崩れ落ちる顔を見るために。
「私はウィリアムお父様とその妻のマリーヌお母様の間に生まれた一人娘でした。
お父様は大臣のお仕事を、お母様は織物を作って売るお仕事して暮らしていました。
大地は痩せ細り、他国に攻め込まれ、魔物に怯えていた、国は不景気でした。
そんな中比較的マシでしたがそれでも私たちは贅沢があまりできず慎ましく暮らしていました。そして街には失業者や親に捨てられた子供たちが溢れかえっていましたし、中には 奴隷として売られる子供たちもたくさん、たくさんいました。お父様はそんな子たちを不 憫に思い奴隷という立場で育ていました。ある程度成長したら商売をしている知り合いを 紹介して職業を与えていました。
もちろんたくさん奴隷を買えばお金が足りなくなりますがお母様と私は納得していました。
それに表側では奴隷でしたが友達か兄弟か姉妹のように接していました。
特に女の子のモーガンと仲が良かった。
何をするにもいつも一緒。
そんな慎ましくも満たされた生活はとある悪魔によって壊されました。
そうあなたです。
貴方が逆上してお父様を殺しかけて、そのお父様を張り付けて奴隷やお母様に見せつけてそれを使い脅迫し人としての尊厳を奪うような行為を繰り返して、抵抗したら抵抗した人から殺していき最後に残ったお父様を滅多刺しにして殺しました。
私はお母様に隠されていたのであなたの毒牙にかかることなく生存しました。
そうしてあなたは転移の魔法を使って逃げました。
その時私は復讐を誓いました。
ウィリアムお父様とマリーヌお母様とモーガンとーーーーーーみんなの敵を討つために。
その時私の目の前に黒猫が現れました。
黒猫はマーリンと名乗りました。
マーリンーーーモルドレッド王伝説においてとある救世主に対抗するためとある淫魔が人間の女性に産ませた半淫魔。貴方やお父様の世界では高位宗教家に育てられ悪の道に堕ちることはなかったそうでうが、こちらでは違います。悪逆を良しとし、不徳良しとし、悦楽を好み、愉悦を求め、快楽に溺れ、快楽に溺れさせ、人を悪へと送る最高位の悪魔として有名だったのです。
知りもしなかったでしょう。貴方。
そして私はその最高位の悪魔貴方と同じように身を心を魂を売ったのです。
復讐のために。
そして私の修行と復讐の準備が始まりました。
まず、貴方の好みそうな性格に矯正して。
貴方が好みそうな口調に変えて。
そのうえマーリンから血を貰い私は四分の一淫魔に身を墜としました。
そして貴方が好きな年齢まで引き上げました。
そのせいでお母様から貰った澄み切った碧眼は汚らしい金色に。
お父様から貰った黒色の髪は汚れた桃色に。
変えていきました。
そうして全ての準備が完全に終わったとき私はお父様のコネを使って、あなたに招待状を送り、私も入学しました。
そうし偶然を装い出会って、関係を今の関係を築いていきました。
ちなみにラントーン、ガラウィーム、ヘレス、ベディヴィアム、パルスシルヴァ、ケイー、リスタン、アグラウィム、ガーレス、パンデスは私が四分の一淫魔の力を使って貴方に惚れさせていました。
今が幸せのほうが崩れたときがいい感じになと思ってです。
感謝してくださいね。貴方。
そうして悩んだときは貴方が求めている言葉を行動をする機械としてふるまいます。
そうやって潜伏して私への依存心を大きくしつつ幸せが最高潮に達した今復讐劇を始めました。
まず四分の一淫魔の力を使ってって? あぁ#淫魔__サキュバス__#って夢魔とも言うんですよ。
知ってました?
夢魔としてあなたの夢を操作して貴方の忘れ去った罪悪感と自責念を強め始めます。
そうして無防備に私に頼った時に殺す。
それが私の復讐計画の全貌です。
分かりましたか、貴方」
『嗚呼あああぁぁっぁぁっらっぁぁっらじぇ©部wrぬヴぇrヴぇや府vlbvhq日©べぅくぇりゅfとqybvぅあb人ヴぇんくぇ9瑠l九会kぎょえくぉbヴくぇbンヴィ部wrblrvy非lvbqruervbueqbv8yrblyyヴぇqヴぃいぇrlbyrqぅbヴぇうlぶlbhvbuvbeubuovbibubuぶccrうyヴぃえrbヴぃうえrbヴぃうえびbvりんvろんりんろ bnifknb jutwib ujじvrべいqvなびえqにんb9ういてんbq9ねtくいbんrwんbwrんぼtんりぼrんびおんbrうぃのbtの』
念話を使って雑音が流れてきます。
精神が壊れてしまったのかもしれません。
そういえば貴方壊れてしまう前に“奪ったのだから奪われる”と言いましたね。
だから復讐したのです。
あなたに奪われからまた貴方から奪ったのです。
そうこうしている間ラントーン、ガラウィーム、ヘレス、ベディヴィアム、パルスシルヴァ、ケイー、リスタン、
アグラウィム、ガーレス、パンデスが到着しました。
ラントーン、ガラウィーム、ヘレス、ベディヴィアム、パルスシルヴァ、ケイー、リスタン、アグラウィム、ガーレス、パンデスは男の末路を見て動揺します。
彼女たちは男の幸せのための生贄だったのです。
私の毒牙に掛かった蝶たちを憐れんでいました。
男に依存するように仕組んでいたからこの男をなくせば男と同じように廃人なるしかないでしょう。
動揺していた一瞬を利用してラントーンの首を剣で刈り取りました。
そのラントーンが殺された動揺でガラウィームを殺し、そのままヘレス、ベディヴィアム、パルスシルヴァ、ケイー、リスタン、アグラウィム、ガーレス、パンデスと殺していきます。
辺りは男の世界の言葉で死屍累々になっていました。
「いいのかい? そんなあっさり殺してしまって。彼をいたぶる為に彼女たちを用意したのだろう? 用意したものは存分に愉しまなければもったいないよ?」
マーリンが人間に戻り問いかけてきます。
「いいの。もう。どうだって」
結局この復讐の日を愉しむことはできなかった。
こんなことをあの男は愉しみながら、悦に浸りながらしたそうです。
あの男は狂っていたのでしょう。
私は男の作り出したものを数点盗みだし部屋を後にする。
そうやって血だらけで廊下を歩いているとライトーンの息子のギャラハッドが後ろから声をかけていた。あの男の
勘違いでこちらの世界では裏切りの狂騎士の名を与えられた哀れな子供。
「貴方が父さんを殺したのですか?」
「そうですね」
「そうですか……」
ギャラハッドはその事実知ってなおうつむくことはせず、真っ直ぐと私を睨みつけてきました。
その瞳には熱がこもっています。
“いつか、殺してやる”という熱が。
その姿に私は過去の復讐を誓った時の私を見ました。
そうしてあることを思いつきました。
男の道具の中から盗んだ剣と盾をギャラハッドに渡します。
そのあとギャラハッドの頭を彼の父親と母親の血が付いた手で撫でます。
ギャラハッドはその意図を理解すことなく。
私は理解させる気もないままその場を立ち去ったりました。
館を離れてマーリンがいないことに気がつきました。
考えてみれば当然でした。
彼は私の復讐の物語を見ていたのです。
私が復讐を捨てれば彼は私のところを去るのは当然でした。
奪ったのなら奪われる。
それこそが世界の理。
ならば男から奪った。
次は私は誰かに奪われるだろう。
そうでなくとも私は人を殺した淫魔なのだ。
人より長く生きて、人によって殺されるだろう。
だが私を殺す人が現れるのなら。
願わくば、彼ーーーギャラハッドに殺されたいと思った。
ご愛読ありがとうございました。