モテカワイケメン
可愛いものがチヤホヤされるのを見ると嫌なことを考えてしまいます。
しかし心では可愛いと思ってしまいます。
頭と心は違うということでしょう。
無憂園での彼の言葉を思い出す。
とても大きくなる。
歩きづらい。
リスクは低い。
「いやいやいや、全然低く無いよ。むしろ高すぎるよ。」
思わずツッコミを入れる。
とゆうか入れずにはいられなかった。
とても大きい。
確かに大きい。
しかし常識の範疇を遥かに超えている。
普通大きいって言ったら、プロレスラーとかそんなのを思い浮かべるだろう。
もはや人間の範疇を超えてるよ!
びっくり人間が腰を抜かして泣き喚くぐらいびっくりだよ!
てか歩きづらいってレベルじゃないよ。
歩けないよ!
事実、引きずって歩こうとしたが、ビクともしなかった。
地面から腕を浮かせようとすれば、足腰が悲鳴をあげた。
そのせいで今は座って体を休めている。
肩に引き続き腰まで痛めるところだった。
危ない危ない。
これからは腕を動かす時には地面につけたままにしないと。
「いや、待て待てそれはおかしい。」
腕ってそうゆうもんじゃないだろう。
普通、宙にぶら下がっているもんだろう。
てかこのままじゃ歩けないんだけど。
どうすりゃいいんだ。
「まさに天国から地獄だな。」
ちなみにこれは比喩ではない。
実際に体の半分以上は地獄に突っ込んでいると言っても過言ではないだろう。
このまま飢えるのが先か、動物に襲われるのが先か。
出来れば、どちらも御免被りたい。
ああ、せっかく蘇ったのにここまでなのか。
何も起きなくても一週間もせずに飢えて死ぬだろう。
彼に笑われるに違いない。
地上へは出張か何かで?
なんて言われるに違いない。
すいません。お父さん、お母さん。
僕もあなた達の元へ向かいます。
「天にまします神さま、アーメン。」
ちなみに両親共に健在、まだまだ現役である。
っと、そんなことを考えていると、不意に近くの草むらが震えた。
「ヒッ!?」
思わず体が跳ね上がる。
まさかこんなに早く野生動物とご対面とは。
背筋には冷や汗をかき、心臓の鼓動は激しさを増す。
頭の中では草むらから巨大生物が出てくる映像が繰り返される。
熊だろうか、猪だろうか。
はたまた野犬の群れかもしれない。
何にしても、恐ろしい想像ができてしまう。
きっとパニック映画の登場人物のように、痛みに泣き叫びながら死ぬのだろう。
そんなの絶対に嫌だ、でもどうすることも出来ない。
ああ、まかり間違って可愛い生き物でも出てこないだろうか。
例えば猫。
いやネコ科の動物は恐ろしいからな。
ならネズミ、、、は気持ち悪いか。
これはウサギだな。
そうウサギだ。
出てくるのがウサギだったら。
もしウサギなら最高なのに。
もしウサギなら、ウサギなら!
ゆっくりとした動作で、草むらから奴が姿を表す。
そいつは凶悪な赤い瞳でこちらを睨み、恐ろしい小さな鼻がヒクついて、見るに耐えない白い体毛が可愛らしい、、、ん?
赤い瞳、小さな鼻、白い体毛、愛らしいフォルム。
100人が見れば100人が可愛いというであろう仕草。
そして何より、垂れた耳がベリーキュートなつぶらな瞳のモテカワイケメン。
これは、まさかこいつは。
「ウサギだーーー!」
まさかのウサギであった。