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誰より大きな腕っ節  作者: アルミ3
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始まり始まり

始まり始まりと声に出すと、何の違和感もありませんが、字で書いてみると言い得ない違和感があります。


「寒い、、、。」


肌に風が吹き付けるのを感じ、身をよじる。

頬にはチクチクとした痛み、それにこそばゆさが伝わる。


全身を柔らかい植物が覆っている感触。

ほんのりと青臭い匂いが鼻腔をくすぐる。


ゆっくりと目を開く。

周囲には木々が生い茂っており、時折羽虫が飛んでいる。


一瞬、見慣れない景色に疑問を覚えたが、意識がハッキリしてくるにつれ、ついさっきまで起きていたことを思い出した。


「あー、いうーえおー」


確認のため声を出してみる。

問題なく声は出るようだ。


首を少し傾け体を確認してみる。

足はしっかり付いている。体も欠けているところは無いようだ。中身までは分からないが、心配しても仕方が無いだろう。


手を握ってみる。感触に問題は無い。開いてみる。ちゃんと動く。

ひとまずは安心だろう。

五体満足でいるようだし、手に関しては若干の違和感はあるものの、しっかり動く。


「はあぁ、よかったあ。」


体から力が抜ける。

かなりの不安があったが、本当によかった。


体のこともそうだが、どんな人外魔境に送られるのかと戦々恐々としていたのだ。

話では苛烈な世界だと聞いていたが、なんとものどかな土地では無いか。


聞こえるものは木々のせせらぎと風の音、見えるものは風に吹かれ擦れ合う木や草花。

なんというか、そう、平和だ。

蘇る前に生きていた世界でさえ、これほど癒されたことも無い。

それなりに好きなことをして生きてはいたが、何もしないというのは少なかった気がする。


毎朝、早くに家を出て、夕方仕事を終え、帰りにパチ屋に寄り、家に帰れば風呂に入ってスグに寝る。

ギャンブルだけが生きがいだったが、まさか自然がこんなに素晴らしいものだとは知らなかった。


こんなにのどかでは、眠くなってくる。

少し寝るか、とも思ったがこんな森の中で寝るのは流石にマズイと気づいた。


山なんだから、イノシシや熊などがいてもおかしくない。

もしかしたら毒虫に刺されるかも。


そう考えると、少し怖くなった。

夜になる前に森を出た方がいいかもしれない。


そうと決まれば早く移動しよう。

名残惜しい気持ちもあるが、背に腹は変えられない。


眠気を追いやり、体を勢いよく起こした、が。

グキッ、と肩から嫌な音がなり、体を後ろへ引っ張られた。


「あた、イッテえ!!」


咄嗟に腕で体を支えようとするが、腕が動かず、尻餅をつき、勢いのまま倒れ込んでしまう。


「何だってんだよう、くそぉ。」


あまりの痛みについ情けない言葉がでてしまう。


一体何に引っ張られたのだろうか。


今度はゆっくり体を起こす。

やっぱり何かに引っ張られている気がする。


だがそれ以外にも違和感があった。

さっき体の動作の確認をしていた時も感じていた違和感。


腕がなんだか変だ。

何というか、距離感がいつもと違うような。妙な動かし辛さが。


恐る恐る背後を確認する。

そこには腕があるはずだ。


後ろへ倒れ込まないように体を支えている腕が。

腕があるはずなん、、、だ。


「はえ?」


確かに腕がある。

明らかのおかしな腕がある。


記憶にある腕の何十倍もでかい腕がそこにある。


一瞬あまりにでかすぎて腕かどうか悩んだが、やっぱり腕だ。

ただ俺の体より遥かに巨大な腕だった。


腕の付け根へ目を向ける。

自分の肩にたどり着いた。

まぎれもなく俺の腕だ。


どうやら腕が重すぎて、体が引っ張られたようだった。

何だ気をつけなくちゃテヘペロって、、、。


「はあぁぁぁあぁぁ!?」


閑静で美しい森の中に哀れな男の叫びが響き渡った。


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