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誰より大きな腕っ節  作者: アルミ3
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会話の界隈

活気の良さとはすなわち会話の多さだと思います。

無言の界隈は廃れるでしょう。

しかし口うるさい飲食店以上に嫌いなものはありません。

彼はすぐに戻ってきた。

それこそ行って、帰ってきたような速さだった。


何のために席を外したのかよくわからない。

きっと俺には分からない理由があるんだろう。


「あなたの処遇が決まりました。」


彼が話し出すと、再び頭が空っぽになる。


「あなたには再び現世で暮らしていただきます。つまり、あなたは蘇ります。」


蘇る。つまりは生き返るということ。

俺は生き返るのか、嬉しい筈なんだがよく分からない。


「本来あなたは無憂園で永遠を過ごすことになる筈でしたが、生きる意志があるとの事ですので輪廻の輪に戻っていただくことになります。しかし輪廻の輪に問い合わせたところ、現世からの魂しか受け入れられないとの事でした。」


彼は困ったように顔をしかめる。


「しかし、無憂園では原則として生きる意志のない魂しか受け入れを認めていません。地獄等々にも問い合わせましたが、受け入れは出来ないとの事でした。いっそ天使か悪魔にするという案もありましたが、天使にするには穢れ過ぎ、悪魔にするには罪が足りないため無理との事でした。つまり、、、あなたの受け入れ先が無いのです。」


思考能力が無い上に、そもそも話に付いていけない。

でも自分が厄介な状況という事だけはわかった。


「それだけ分かって頂ければ結構です。それと思考能力を奪っていることを失念していました。お返しします。」


そう言うと、再び考えることが出来るようになった。

もう訳がわからない。

彼が誰なのか、どういう状況なのか、展開が早すぎてついていけない。


「突然のことで申し訳ありません。しかし、あなたは急ぎ、状況を理解し、行動を起こしていただかなければならないのです。」


ーーーすいません、お急ぎのところ申し訳ないのですが、どういう事なのか教えて頂けませんか。急に理解しろと言われても唐突すぎて何が何やら。


「あなたに知っていていただきたい事は、あなたが蘇るということだけなのです。その他のことはあなたが知る必要のないことですので。」


彼の言葉に少しムッする。

俺のことなのに知る必要がないなんて、すこぶる横暴だ。


しかしまあ、蘇るとは、なんというか願ったり叶ったりといったところか。

ここで下手な事をして、この話が無かったことになるのも困る。

ここは大人しく彼の言うことに従っておくか。


「それでいいのです。では話を続けますが、結果としてはあなたを一度現世に戻し、再び死亡した際に輪廻の輪が受け入れる事になりました。」


ーーーなるほど、ここからが無理なら、また地上からとゆうことですね。しかし、人が蘇るというのは良いのでしょうか。


「良いというと?」


ーーーその、倫理的に考えてどうなのかなと思いまして。


「私共の倫理では人が蘇ることは問題ありません。転生も結局のところ蘇りと大して変わりませんので。」


これは意外であった。

特に理由はないが、生き死にに関しては、神様などは厳しそうなイメージがあった。

しかし神様に問題はなくても人には問題だ。


ーーーそれなら良いのですが。でも死んだ筈の人間が生き返るのは現世では問題があります。


「そうですね。それも踏まえ、あなたには別の世界で生きていただきます。」


彼の口からまた不可思議な言葉が出て来た。


ーーー別の世界?地球以外に世界があるのですか?


「はい。世界はいくつもあります。あなたにはいずれかの世界で生きていただきます。」


まるで漫画のようだ。

世界がいくつもあり、それらの世界を冒険しながら世界を救う。

まるでありふれたファンタジーの王道作品のような話だ。


普通こんな事を言われれば、普通は相手の頭を心配すると思うのだが、何せ相手が相手である。

きっとマジな話なのだろう。


ーーーいずれかの世界ですか。選んだりなんかは出来ないんですか?


「出来ません。その世界はあなたを受け入れるのです。あなたも世界を受け入れなければなりません。」


ーーーそういう決まりなんですか。


「はい。そういう決まりです。」


そううまい話ではないようだ。

出来れば楽な世界に行きたいのだが、こればかりは祈るしかないだろう。


「残念ですが楽な世界というのはあり得ません。」


そうだった。思ったことが伝わるんだった。


ーーーすみません、妙なことを考えてしまって。


「構いませんよ。」


ーーーしかし、あり得ないというのは何か理由でも?


「はい、とても重要な理由があります。それもお話ししなくてはなりません。」


彼は深刻そうにうつむく。

その様子に、余程のことがあるのだと思い、身構えた。


「まず、この世に生きる全てには、多少なりの祝福と加護を受けています。」


彼の言う言葉は難しい。

聞き慣れない言葉ばかりだ。


ーーー祝福と加護、ですか。


「はい。輪廻の輪から再び現世に帰る際に祝福を、生まれ出る際に加護を与えられます。この二つは輪廻の輪を管理するものから与えられ、生前の行いと、死後の行いをかえりみて加護の大小が決定しますが、間違いなく全ての生きる者に与えられます。」


祝福と加護と言われても、なんだかピンと来ない。


「簡単に言えば運の善し悪しと考えていただいて結構です。」


ーーーああ、良い行いをすれば運が良くなるということですね。


「その通りです。そして蘇りであるあなたにも与えられる予定でした。」


ーーーでした?


「はい、あなたには与えられない事が分かったのです。」


言われた言葉をなかなか理解できない。貰えるものが貰えないというのは残念だが、そもそも何故貰えないのか、運がないってどういう事?パチンコで勝てなくなるとかか?

深刻に話をする以上大変なんだろうが。大変なのか?


「とても大変です。だからこそお話ししているんです。」


ーーーそうですよね、すいません。


「話を戻しますが、祝福を与えるのは輪廻の輪の管理者ですが、あなたは無憂園から蘇りますので、管理者からは与えられないのです。」


ーーーなんというか、もう少し融通を利かせたりなんかは出来ないのですか?あなたがくれたりなんかは。


「出来ません。」


ーーーさいですか。


「加護にしても与えるだけならば蘇りでも問題はないのですが、異世界というのが非常に問題なのです。」


彼は言う。


「世界がいくつもあるように、死後の世界もいくつもあり、それぞれ受け持つ世界が決まっています。そして、基本的に他所の世界にはわたし共は干渉ができないのです。」


ーーーでもわたしは他所の世界に蘇るのですよね。


「異世界に人が行くことは禁じられていません。ただ相手側に受け入れる意思さえあれば良いのです。しかし、わたし共は違います。わたし共が干渉すれば、それこそ世界規模での争いになりかねません。」


ーーーまあ他所の仕事に手を出したら嫌がられますもんね。


「そうなんです。そこから生じる問題で、生まれた後に与えられる加護をこちらの管理者には与えられません。あちらの管理者が与えるものなのです。」


ーーーなるほど。確かにそうなりますよね。それじゃあその管理者に貰えば良いのですか?


「そうも上手くはいきません。言ったように加護は生前と死後の行いからどれだけ与えられるか決まります。しかしあなたにはあちらで生きた記録も死んだ記録もありません。こうなった場合には、管理者の匙加減になるのですが、、、管理者曰く、加護は与えらないと言われました。」


ーーー記録がないから?


「はい。あちらの方はわたし共より融通が利かないようです。」


彼はヤレヤレというように顔を振るう。


ーーーちなみになんですけど加護と祝福がないとどうなってしまうのですか?


「言ってしまえば、すごく運が悪くなります。簡単に言いましたが、ありとあらゆる行動に邪魔が入りやすく、問題を起こしやすいです。いわゆるトラブルメーカーというものです。」


ーーーなんだか漫画みたいな体質ですね。


「過去にもそういった体質の方はいました。迫る不幸を跳ね返す才能のある方は後の世では英雄と呼ばれ、力のない方は生きる事を放棄する事が多いです。」


英雄。

またなんとも馴染みない言葉だ。


ーーー英雄になる自信無いです、、、。


「ええ、あなたには大した才能もありません。まして、彼らは少なかず与えられていますがあなたにはそれが無い。彼らよりもっと運が悪いのです。」


彼は随分辛辣である。

しかも話を聞く限り長生き出来る気がしない。


「はい、長生きはできないでしょう。」


ーーー簡単に言いますね。


「しかし勘違いしていただきたく無いのが、わたし共はあなたに申し訳なく思っているのです。そして蘇る以上、人生を謳歌して頂きたいとも思っています。そして、あなたの為に何かをしてあげたいとも思っているのです。」


ーーー何か、ですか。


「はい。そしてその準備も既に出来ています。」


彼は手を広げニッコリと笑顔を作る。


「あなたの欲しいものを一つのだけ差し上げましょう。さあ教えてください。」




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