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誰より大きな腕っ節  作者: アルミ3
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意思のように硬い石

人の心は変わっていくとよく言います。

私は心と意思は同じものであると思います。

意思のように硬い石とはつまりスライムのような石と言えるでしょう。

それは突然現れた。


周囲に漂うヒトダマは逃げるように離れていき、霧は晴れ、波はなりを潜めた。

いや、ここにある全てが、現れた男の意思に従うように道をあけたのだ。


かくゆう俺も言葉を無くしていた。

それ程までに彼に目を奪われていた。


黄金の髪、純白の衣、整った顔立ち、背後からは光が差し、優しい笑みを浮かべている。

何と言えば良いのか、言葉では言い表せない。


いや、言い表せないのではなくて、言葉が出てこない。

褒めようだとか、尊敬するだとか、貶そうだとか、そうする言葉が出てこない。


考えようにも、考えられない。

頭に靄が掛かるだとかそういうことでもなく、意識はハッキリしているけれど、なんというか、無駄なことを考えられない。

そんな感じだ。


「泣いていたのはあなたですか?」


彼が口を開いた。

空っぽだった頭の中に一つの言葉が現れる。


ーーーはい。


一言それだけが思い浮かび、再び静寂が頭を支配する。


「なぜ泣いていたのですか?」


ーーー死んでしまったからです。


彼にはこちらの考えが読めるようだ。

しかしそんな事さえ分からない。


泣いていた事を知られているのに、恥ずかしいとも思わない。

何も思わない。


「なぜ死んだことで泣いているのですか?」


ーーー生きていたいと思うからです。


彼は首を傾げ、少し考えるような仕草をした。


「あなたは生きたくなかったのではないのですか?」


ーーーいいえ。


「そんなはずはありません。そうでなければ、無憂園には来ない筈です。」


ーーー???


「無憂園。その名の通り、憂なき園。生きる事を放棄した者たちの楽園。輪廻の輪から外された魂たちの集う場所。それがここです。」



ーーーつまり、どういうことですか。


「あなたが生きる事を放棄したという事。あなたが望んだからここに来たのです。」


ーーーそんな事はありません。生きていたいです。


彼はまた首を傾げた。


「つまりあなたは間違いでここに来てしまったと、そう言いたいのですか?」


ーーーはい。


彼は困った顔をした。


「分かりました。少し席を外します。良いですね?」


ーーーはい。


そう言うと彼は空へと消えていった。

消えると同時に思考能力が回復したように、言葉が湧き出てきた。


あれはなんだったのか。どこに行ったのか。なぜ言葉が出なかったのか。これからどうなるのか。

全ては彼の知る事ではなく、今後知る事もないだろう。


どのような意思があろうともそんな事は関係無い。

彼の今後を決めるのは彼では無いのだから。

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