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第一話 その力は誰の為に・・・

この小説は作者のブログであるSieg’s retreat から転載したものです

‡で括っているのはそのところがブログでは一話になっているからです

よって、更新はブログのほうが早いです

次回作を早く読みたい方はそちらをお勧めします

‡1‡

 ある日、僕はこの世に降臨した

なぜ生まれたかは不明 ただとなりになぞめいた鳥が1羽

その鳥はとにかく黒いがカラスに見えない

黒い白鳥のようだ

この場所はどうやら鳥の巣のようだ

そう、でかい鳥の巣

「・・・君は・・・だれだい?」

僕は言った

「・・・」

その鳥は何も答えてくれない

「・・・鳥には何も聞いても答えてもらえるわけないか・・・」

僕は正直失望した

だがそんなことを言った直後奇跡は起きた

「我を鳥などと呼ぶな。無礼だぞ?」

その黒い鳥が王子のような口調で僕に言った

「我の名はフォレスト。お前、忘れたのか?」

フォレストと名乗った鳥が僕に質問してきた

正直 今の僕には思い出せることが何一つ無かった

「すみません、何も思い出せないんです・・・」

僕がそう答えるとフォレストはこう答えた

「そうか、なら1から思い出させてやろう。貴公はだれか、何をしなくてはいけないのかをすべて」

彼が語るに僕はこういう人物らしい

僕の生まれ故郷は天国でも地獄でも今いる地でもない

何も無い 無

僕は生まれての神

初代の神(人間が思っているような人型の神)と神獣(グリフォン、ペガサスなど)が生み出したらしい

何のために生まれたか それはこのフォレストと共に

世界から人の道を外れた人を消す

その人の親も友達からも忘れさせる

つまりいなかったことにする

それが僕の役目らしい

当時の僕はそのことを聞いても何も疑問を抱かないふつうの生き物だった


‡2‡

 真実はひとつしかない。だが真実を誤魔化しそして自分の過去を消すことなどいくらでも出来る

世界はこのことをどれほど受け入れるかで人間性が出るのだと僕は思っていた

--------------------------------------------------------------------------------

「・・・そういえば貴公は自分の名前さえも忘れているのか?」

フォレストが聞いた

このときの僕はどんなに思い出そうとも思い出すことが非常に困難だったので僕は正直に

「思いだすことが・・・かなりつらい状況です・・僕の名前さえも・・・」

僕がそう答えるとフォレストは失望した顔をした。

「哀れな・・・・」

本当に失望したのであろう。フォレストはそんな愚痴を吐いた

「では思い出させてやろうぞ。貴公がどんな神だったか。我が知ってるすべてのことを」

そしてフォレストは話し始めた


この時、正直いうと、僕は前の名前があった。当時の僕はその前の名前を使用していたのだろう

今の僕では前の名前を完璧に忘れてしまっている

今、僕が言える事は少なくとも昔の名前以外のことだけだ


フォレストが言うに僕は生まれた当時からこの体らしい

人間みたいに赤ん坊で生まれたのでは無いらしい

僕の見た目はずっと人間で言う中学2年生くらいの背だった


僕と人間を比べてみてわかったことは

人間は食事をしなくてはいけないが僕は何も食べずに生きていくことが出来る

人間には独裁心というものが昔から芽生えているが僕にはそんな感情が無かった

人間はすべての人間と助け合って生きていくが僕ら神族そこまで協力などはしない

協力しないというのが1番の違いだと僕は思う


「さて、少しは貴公の立場を理解したかな?」

フォレストが聞いてきた

「理解はしましたが・・・最後らへんに言った僕がフォレスト殿の家臣というのは嘘でしょ?」

「そのようなこと気にしないでよい。無礼だぞ?」

フォレストは即答してきた


「さて、ひとつだけ言うことを忘れてしまっていたな。この我らがいる場所は人間で言う雲の上だが我らでは天界と呼んでいる」

「てん・・・かい・・・」

「この天界の中央に丸い覗き穴と落とし穴みたいなのがある。丸い覗き穴からはこれから起こる事件のことなどを見ることが出来る。その事件を起こる前にその犯人を消す。これが大まかなことだ」


僕はそんなことを言われて理解することよりも実際に行ってみてやってみるほうが早いと思ったので

「じゃあ、その覗き穴に行こう」

と言った。そして覗き穴まで移動した


覗き穴の所には誰もおらず正直驚いた


「む、これは・・・おい*****(僕の名前だ)事件が起きそうになっておるぞ。せっかくの初仕事だ 試してみるがよい」

フォレストの態度には少々むかついたが確かに初仕事だしどんな感じかやってみたいとも思っていた


「ところで、どうやって消すの?」

確かにそんなことを思ったので聞いてみた

「それはだね、消す人のほうに指を指し指を振るだけだ。貴公にも簡単に出来るぞ」


いわれたとおりにやってみた。

すると事件(今回は殺人予告を出していた)の犯人が消えた

そして犯人を囲んでいた警察もなんでこんなところにいるんだろ?と疑問に思ったことをつぶやいて警察署に戻っていった


確かに、その人が生きていた。いや存在していなかったと言ったほうが正しいだろう

その証が何一つ消えていた


   ‡3‡

 「すごい力だ・・・」

思わず僕は口に出してしまった

「力?違うな。これは貴公の能力なのだよ」

フォレストが言った

「能力・・?」

「これは貴公だけがもっている力ではない。ご先祖様から代々引き継がれている力だ。そうだね一度貴公はは、下界で言う『学校』に言って見てはどうかな?」

「下界?学校?」

「下界というのは人間共がいる世界のことだ。神になる貴公のことだし学校へいって見るのがいい教えになるかもしれないな」


なんだかんだで学校と呼ばれる場所へ僕は行くことになった

さすがに僕は学校で本名を使うわけにもいかないので『黒鳥 殻守』という名前を名乗り始めた

この名前を名乗ったからたぶん本名を忘れてしまったのだろう


僕が行った学校は『中学校』と呼ばれている

とりあえず登校は楽だった。

僕の羽は自由自在に消すことができるため登校中は人目のつかないところで空を飛び回った

そして足で歩くことはとてもだるかった


そして学校に通い始めてわかったこと


1、いじめというものがとてもたくさんある

フォレストが言ってた「いじめというものはとても醜い行為だ」と

だから僕は手始めにいじめをしているやつを消した


2、学校の先生をいい人だと思うなとフォレストに言われた

最初のほうは意味がわからなかった。先生はいつも優しく教えてくれてとてもいい人だと思い始めていた

だが理解したのは学校通い始めて2週間くらいたったときのこと

クラスの友達が突然発狂しナイフを持って暴れ始めた

その理由は悪魔と契約したかららしい

悪魔は少年を操り殺戮の限りを起こそうとしているらしい

そしてそのとき普通先生は子供を守る義務があるというものだが

その先生は生徒を置いて逃げ出した

もちろんそんな先生を消していった


少年に取り付いた悪魔は神の能力を使用し地獄に追いやり少年の罪をきれいさっぱり消してあげた


学校通い始めて1年になる僕は受験戦争というものに巻き込まれ始めた。

だが僕は生まれつき身体能力などは非常に高く頭もよかった 人は僕みたいなやつは天才というらしい

成績の通知表は毎回オール5


1年もすれば友達もでき一般的な生活もしていた

みんな僕を「いいなぁ~」とか「偏差値高い高校受けるんだろ?」とか聞いてくる

高校というものがかなり重要らしいってことがかなりわかった

そして人並みの感情を持ったからこそあることがわかった

「僕は・・・・最低な奴だ」

今までの自分のやってきたことを振り返ると泣けてきてしまう


ただ思った そう人並みの考えがもてたから思えたのだろう


僕は最悪な奴だと


   ‡4‡

今まで過ごしてきてようやく分かった


自分は最悪な奴だと



理由は簡単に説明できた

自分の勝手な想像で人を消した

一応、消した人には罪もあるがまだ許されるものかもしれないものだった

だが当時の僕は改善の余地があるような人物も消した

消してしまった

自分でもいまさらだがそのときは悪いことをしたやつは死ななければつみを償えない

そう感じていた


ある日、天界にいるフォレストにあいに行こうと思った

誰も見ていないところ羽を伸ばし羽ばたいた

そのまま雲の中に潜り込む

そしてその中にはでかい鳥の巣が一つ

そしてその中に黒い白鳥が一羽

「フォレスト・・・なぜだ、なぜ前の神は僕にこんな役を!?」

僕が質問するとフォレストは呆れるような口調で言った

「ふむ・・・下界の空気にふれさせてはだめだったかな・・?」

「ふざけないでくれ。君ならなにか知っているんだろ?」

「ふざけてなどいない。貴公の生まれた理由など簡単過ぎて答える気になれ無いのだ。へどがでる」

こいつを頼りにした僕が馬鹿だった

「今、『こいつを頼りにした僕が馬鹿だった』っと思ったであろう?」

フォレストはどういったことか僕の考えを読み取った

「不思議に思ったであろう?貴公の考えることなどすぐにわかる。そして特別に答えてやろう。生まれてきた意味じゃないがこれからすべきことをな・・・」

そういって語りはじめた・・・



「要するに・・・どうしようもない ということ?」

「まぁそうなるな。神とて万能ではない」


なら僕は・・・どうすればいい・・・

消してしまった人の分幸せにでもなればいいのか?

いや、こんなありきたりなドラマのような考えは無意味だろう

本気で考えるためには、きれいごとを並べてはいけない

僕は天界を出て、家に戻った

辺りはすっかり暗くなっていた

時間でいうと18時くらいだろう

この家はフォレストが用意してくれた物だ




フォレストが設定した僕の情報はこうだ

名前は黒鳥(くろとり) 殻守(からす)

私立中学に通う中学生でとても成績優秀

運動もでき、部活等には未所属

両親は12歳のときに事故でなくなった

以降施設入りを予定されていたが親が残した金があまりにも莫大であったことと料理等の家事は自分でできるため一人暮らし



あまりにも出来過ぎだろうと思う設定だが人間は得にこのことを気にかけていない

人間とはなんだろうな


今後の自分の在り方を考えているとインターホンがなった

カメラで誰がきたのかを見てみる

来たのは学校の友人だった

こいつについては全データを処理済みである

名前は竹垣 陽一 男性

母親は明るい人間で家事などをすべてこなす主婦の鏡みたいな存在

父親は大手企業に勤めているサラリーマンである

収入は平均レベルで悪くない生活を送っていた

妹が一人いて小学3年で名を美紀という

まるで絵に書いたような幸せな日々を送っている人間であった


「カム~、最近表情が良くないからすこし相談にのりにきてやったぜぃ」

カムとは僕の愛称らしい

前になぜカム?と質問したことがあったが、雰囲気的にととてものんきな返答をされた

陽一はそんな家庭で育ったせいか非の打ち所がない素晴らしい人間であった

とりあえずせっかく来てくれたので追い返すわけにもいかず中に入れる

「さて、なんで最近暗いんだ?」

陽一がずばり質問してきた

「正直あまり触れてほしくない質問だな。多分君では答えられない」

「なんだよそれ~。なら答えてやろうじゃないの~」

こいつはいつもこうだ。

だがこれが陽一の良いところである

「なら答えを聞こう。もしも君が自由に人を消すことができ、その人に関することもすべて消去できたならどうする?」

もしも、をつけることで実際には起きてないようにしたが内容は全く同じだ

「!?それが質問の内容か?なんていうか・・・深いねぇ・・・言葉につまる」

まぁ、それだから困っているのだが

「ま、俺ならその力を使うな」

予想外の返答 人間はすこし自分が持つことはありえない未知の力に興味を示しすぎではないか・・?

「じゃあ使うとして、そのあとにその罪の重さを理解する。自分がやった過ちはもう、どうすることも出来ない ならどうする?」

「うううむ・・・深いなぁ・・・」

ここを答えてもらわないと意味がない

「・・・というより、どうすることも出来ないってことは無いんじゃないか?」

それはとても画期的な返答だった

「どうすることも出来ないなんていうからそうなってしまうんであって・・・実はできるかもしれない」

「ではどうやって!?」

すこし口調が強くなってしまった

「力に頼らずに自分の本来の力で」

何の解決にもなってない

     でも少し見えた気がした




相談のあと、陽一は紅茶を一杯飲んで帰っていった

少し気持ちが軽い

人には・・・神が知らない不思議な力があるのかもしれないな


次の日、学校に行くとき乗っていた電車に痴漢が現れた

被害者は僕の学校の生徒

制服で分かった

「やめてください!誰か助けて!!」

その少女は叫び助けを求める

犯人はニヤリと笑顔を見せ、犯行をしていた

周囲から人はいなくなり、誰も助けようとしない

「これだから人間は!!」

僕はつい言葉にだしてしまった

今までの僕ならここで力を使う

でも、今の僕は絶対にそんなことをしない


僕は犯人の右肩を叩いた

「ああ?」

犯人は不機嫌な顔を見せながら振り返る

なにも躊躇せず犯人に言った

「痴漢は迷惑防止条例で禁止されています。違法者には一年十ヶ月の懲役または五万円の罰金です」

「意味わかんねぇこといってんじゃねえぞ!!」

男はそういって殴り掛かってきた

殴りはとても遅く簡単に避けれた

よけながらなお、男に忠告する

「意味はちゃんと通じているはずです。警察に突き出されたくなければ今すぐ彼女から離れろ!!」

「なめたこと言ってんじゃねぇぞ!!」

なお殴り掛かってくる

こいつには呆れた

「なら仕方ない」

僕はそういうと男の攻撃を避け、腹を殴る

男は当然避けることは出来なく、そのままクリーンヒット

少しのうめき声と共にその場に倒れる

周りにだれもいなくてよかったっと心底思った

「さて、とりあえず君は逃げろ」

怯えていた少女に声をかける

「は、はい!」

少女の目はとてもキラキラしていた

そのまま隣の号車に走っていく

全然気づかなかったけど周りの号車から結構覗かれていたのね

「カッコつけやがってぇ・・・・調子にのってんじゃねぇ!!」

全速力で走ってくる

だが人間の限界など簡単なもの

顔に回し蹴りを決めた

男はその場でK.Oされた

そしてそいつの腕を近くにあったロープで縛り、次の駅でおりたあと警察に突き出した


結果 警察の感謝状を手に入れた代わりに1時限目を遅刻

まぁ、人間が学ぶことなどとっくに知っているからいいのだが




昼休み、特にあてもなく学校を歩き回っていた

だが、あまりにも暇だったので屋上で昼寝を始める

よく人間はこんなつまらない毎日を過ごせるものだ

そんなことを考えながら目を瞑る

すると、突然隣から声が聞こえた

どうでもいいと無視をしていたら突然くすぐられた

目を開けてくすぐった張本人を見る

「ちーす!カム、客人だぞ!」

声の主は陽一、そして隣には見覚えのある生徒

「陽一、こいつは誰だ?」

「え?知らないの?亜理紗、本当にカムのこと知ってるの?」

亜理紗と呼ばれた少女が答える

「へぇ・・カムって言うんですね。今朝はお世話になりました」

そういってお辞儀をしてくる

寝たままだと失礼だと思い、僕は起き上がった

でも立つ気にはなれないので、地べたに座った状態である

「まず一つ言っておく。僕の名前はカムではなくカラスだ。」

陽一の言葉で名前を書き換えられてしまうところだった 危ない危ない・・・

「カラスさんですか。とてもかわいらしいお名前で」

亜理紗がふふふと笑う 待て、この名前がかわいいと思うのか?君は?

率直な感想は胸に秘めておく

「申し遅れました。今朝助けられた白鳥 亜理紗です。あの時は本当に助かりました。ありがとうございます」

素直にありがとうと言われたことがないのでなんとも言えない感情が心に残る

「気にしなくていい、少し実験がしたかっただけだ」

能力を使わず本来の力でどこまでできるかの実験

まぁもちろんそれだけではないのだが

「ヒュゥーーーー!カム、こんなかわいい娘助けたの?」

陽一が口笛を吹きながらこちらを見る

腹が立つがなぜか恨めない

「目の前で困っていたんだ。だから助けただけだ」

「あらら~隅に置けないねぇ!」

こいつ、人の話を聞いてねぇ・・・!

「じゃ!お邪魔虫は退散!じゃあね!」

そういって陽一は屋上から階段を下っていった

目の前に亜理紗が立っている

いつまでここにいる気だ?

そう思いながら彼女を見ていると何かに気づいたかのように言った

「どうかしましたか?」

寝させてくれ、寝るのは暇つぶしにもってこいなんだ

もちろん思うだけで口には出さない

亜理紗がとなりに座った

「そういえばカムさんは部活とか参加しているんですか?」

カラスだ! そうか・・・カムって言いやすいんだな だからか

「参加していない」

落ち着いた口調で言う

「そうなんですか~・・・」


話題が切れて無言の時間が流れる

こいつ何時クラスの戻るつもりだ・・・?

改めて寝転がる

また無言の時間が流れる

こんなところフォレストに見られるとまた何か言われるんだろうな

そのまま10分くらいたってからチャイムが鳴った

午後の講義の始まる予鈴だ

「では私、クラスに戻りますね!」

そういって階段を下りていく

さて、僕も戻るか

スロープに乗って滑りながら階段を下りていく

2階の一番端に僕のクラスがある

クラスに入ると同時にチャイムがなった 本令だ

先生が何か言いたそうに教卓からこちらを見てくるが無視して席に着く

午後の講義は英語と世界史

また、退屈な時間が始まる




さて放課後

今日は友達の健から部活の助っ人頼まれていたかな・・・

健が入部している部活は剣道部

お前ら部活やっている時間あるのか?3年だろ!?

そんなこと思ったところでどうしようもない

でもつい思ってしまう

人に関わり過ぎたかな・・・

なぜ今日助っ人に頼みにきたのか

防具を着けながら健に聞いてみた

「今日、実は3年の引退試合なんだ。我が部では引退の時に5人チームを作って1,2年生のチームと戦うんだ。全部に勝てば無事引退、負ければ勝つまで再戦」

なるほどな

「1,2年生は15人いるんだけど、3年は4人しかいないからさ・・・勝つためにもお前の力を借りたいんだよ、殻守!」

健はそういって面をしっかりと縛って立った

1,2年が15人か・・・3チーム抜けしなくちゃ行けないのか・・・

僕はなぜか大将に選ばれた

なぜだ・・・?部員じゃないのに

意図を聞いてみると・・・

「殻守にまで回らせないため。俺らの戦いだし、できるだけ俺らで片付けたいんだ」

よし、理解


ちなみに今回は一本勝負らしい

試合が始まった

最初は先方同士の戦い

敵は1年だけのチーム

向こうのチームからは先輩に勝てるわけないじゃん・・・とか呟いている生徒がいた

始まって2秒もしないうちに 面あり!! と声が響いた

うちのチームの勝利である


たまぁに4番手くらいまで押されていたときはあるが基本しっかり勝っていた

2チーム抜きをしっかりやり遂げて

今3チーム目の大将である

僕らのチームの先方があっさりとやられてしまった

健いわく

「あの敵の大将、現在部長なんだけど非常に強いの それもそのはず、なんていったって3歳から剣道やってたんだって。俺ら3年は皆やり始めて立った3年だから勝てないんだ・・・」

そんな弱気なことを言う

そのまま僕以外皆やられて、とうとう僕の番が来た

相手はニヘラと笑っていた

まるでこんなやつ余裕だよと言っているようだった

「始め!!」

審判の声がかかる

「いやあああああああああ!!!!!めええええええええええぇぇぇぇぇん!!!!!!!!!!」

相手が気合いっぱいに面をうって突っ込んでくる

その攻撃を竹刀で弾いた

すると、隙あり!と言わんばかりに引き胴を打ってくる

だが、僕はそこで飛び跳ねた

約100cm位飛び上がる

相手の竹刀は力いっぱい振ったせいか大きく空振りをした

相手は呆然とした顔でこちらを見ていた

周りからはざわめきが聞こえる

そのまま僕は着地する

着地と同時に相手に面をくらわせる

とても重い音が回りに響き、相手はくらくらと混乱していた

相手が動けない隙に

「いやああああああぁぁぁ!!!!!!どおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」

相手に胴を打って切り抜ける

少し格好をつけて膝立ちをした

「ど・・・・胴あり!!!」

一瞬沈黙が流れ、そしてその後にわああと周りから歓声が流れた

試合終了後に健が僕の元にやってきた

「さすがだ、殻守!今度機会があれば剣道を教えてよ!」

「機会があればね」



多分その機会は訪れないだろうけどね


  ‡5‡

多分その機会は訪れないだろうけどね




理由は単純である

だって僕ら皆受験生だし!


そう、知っての通り、我ら中学3年生はバリバリ受験戦争に巻き込まれているのである

今はもう夏が過ぎ駅前の塾でも『夏期講習!』の看板が無くなっていた

先ほどの剣道の試合も終わり、帰り道を歩いていたら感じたことである

どこの塾もすべて同じような看板を毎回出している

『塾生募集!』『今でも間に合う、中3の秋!』『体験授業(無料)実施中』

少しは捻りを入れてほしいものだ

僕はそんなことを思いながら駅ホームに入っていった


今日は10月21日

特に何もない平凡な日

次の電車の確認のため時刻表を見る

次は25分着

まだ5分あるな・・・

僕は退屈は嫌いだ

暇つぶしをするため図書室から借りた本をバッグからとる

借りているのは文庫本で持ち運びにとても便利だ

途中まで読んでいるが今のところの内容はこんな感じ


青い瞳を持つ少年はその目で人の寿命を見ることができる

そしてその力を使って余命1日の人に最高の時間をプレゼントする

そんな小説だった


正直思う

下らない、どうせ死んでしまうなら何をしても同じだろう

僕にはこの主人公の意図が分からない

でもストーリーはとても面白く、作者には読者をひきつける何かがあった

さて、文庫本を取り出したのは良いものの5分という短時間で読む気にはなれない

そのままバッグの中にしまった

少しもやもやするが、まぁあとでゆっくり読むとしよう


さて、これで時間が過ぎたわけではない

まだ時間が4分半ある

先ほども言ったが退屈は嫌いだ

何かないかと周りを見渡す

もちろんあるわけがない

一般の人はただ立っているだけか携帯音楽端末を聞いている

ZONY製のYou ped と言う端末らしい 今度買おうかな

学生は基本友達とべちゃくちゃ喋るか、または参考書を読んでいるか

くそ、一人って孤独なんだな

こんなことを考えても5秒位しか発ってない

まだ4分25秒ある・・・


何度も言う 退屈は嫌いだ

少しイライラとしていたら聞き覚えのある声が聞こえた

「あら、カムさん こんにちは!」

振り返ると声の主の亜理紗がいた

「・・・」

とりあえずこいつと関わると面倒臭そうなので軽く無視をする

「カムさん、少しイラだってません?どうかしました?」

なんと、こいつは僕の思考を読み取ったのか・・・?

実際、ただ顔に出ていただけだと気づくのは家についてから

「そういえば今日は部活の助っ人やっていたらしいですね。お疲れ様です」

無視をしているのにも関わらず話しかけてくる

少し耳障りになってきたので飲み物を買うのを口実に近くの自販機まで歩く

だが何故かついてくる

こいつはいったい何なんだ・・・・

少し彼女を睨む

でも彼女は何故か笑っている

これは・・・嫌がらせなのか?

自販機にお金を入れてD・Cグレープを買った

D・Cグレープは下界の飲み物のランキングでは上位に入るうまさである

彼女の視線をものともせず蓋をプシュっとあけてごくごくと飲む

強炭酸のため刺激が強い。だがこれがいい

この強炭酸と、グレープの味がマッチしていつ飲んでも飽きない味を作り出してくれるのだ

缶のため、一瞬で飲み終わる

缶をゴミ箱に捨てるとちょうど電車がやってきた

・・・が、周りの空気が少しおかしい

電車はしっかり止まっている

だがドアは開かず、停車位置もおかしい

そして、次には女性の悲鳴が聞こえてきた

叫んだ女性の元に走る

亜理紗は僕の走りについてこれないようだ

でも走って一緒にやってくる


女性は口を両手で覆い、座り込んでいた

体はがたがたと震えている

周りの人たちも同じように震えており、顔面蒼白だった

「どうしたんですか!?」

女性に聞いた

すると女性は右手を前に突き出し、電車を指差す

だが、そこには電車が止まっているだけ、

ぱっと見ではぜんぜん分からない

だが気づいた

女性は電車を指差していたわけではなく、線路を指差していたのであった

そこには真っ赤な液体と、ぐちゃぐちゃになった肉片

そして、潰れた顔


亜理紗は絶句した

そう、今、目の前で


人が死んだのだ



僕と亜理紗は目撃者として事情聴取を受けた

ホームは電車が止まったままであり、電車はその区間は停止

代わりのバスを運営しているところであった

なぜ僕と亜理紗が話すことになったかって?

それは目撃したであろうあの女性は恐怖で震えて何も言わないからさ

僕は素直にそのとき飲み物を買っていたこと、突然、叫び声が聞こえたこと

駆けつけてみると人が轢かれていたこと を伝えた

そういうと警察は

「つまり、君たちは何も分からないんだね?」

と返答してくる

正直ムカついた

この僕に知らないことがあるだと?

少なくともお前よりはたくさん知っているよ!

この考えが、全ての火種だったんだろう



亜理紗は相変わらず泣いている

正直泣いている子を見ると、どうしても助けたくなる

仕方ないから慰めの言葉を掛けた

少し亜理紗は落ち着きを取り戻した

「家に帰ってゆっくり休むといい。今日、君は何も見ていないんだ」

亜理紗は黙って頷き、バスで帰っていった


さて、ここからは僕のターン

今回の事故の内容をしっかり集めて警察に突き出してやんよ!

まずは目撃証言

警察に散々事情聴取されて、やっと開放された人に改めて話を聞く

だが・・・やはり中学生ってこともあり

「君の遊びに付き合っている時間はないんだ ごめんな」

とか

「知らないほうがいいこともいっぱいあるんだよ。」

とか

「これは学校での話のネタには重すぎるよ 教えられない」

とか言ってくる

でも念を押して聞き返すとしっかり答えてくれた

怖かったのか・・・?僕のことが・・・?


とりあえず分かったことはこうだ

被害者は自殺の可能性が高い

電車が来た途端に線路に身を投げ、そのまま現在に至る


自殺か・・・人生生きていればまだ楽しめるだろうにな

聞き込みで手に入るのはこれくらいか

僕は黙って人目のないところで羽を広げ家に帰った

もう、自分の能力は使わないと決めていたが、場合が場合だし使ってしまったなぁ・・・


家に着くと早速パソコンをつける

画面に Mirrors XP とOS名が表示され、そのまま待機しているとデスクトップ画面になった

まずメールを確認 特に面白い情報はない

さて、本題に移るか

まずネットで事故についてググってみる

今日起きた事故についてはどこにも乗っていない

「・・・なぜだ?」

目撃者は結構いたはず

それなのに1人くらいネットに記載する人がでてもおかしくはないはずだ

調べて出てこなければ実力行使!

ネットを全てやめて特性のツールを起動する

すると、壁からキーボードと画面が二つずつ出てきた

「さぁ、検索を始めよう」

あくまで落ち着いた口調で言った

一番左の画面には警察のHP

中央の画面には黒い画面に白い線がポツポツと点滅中

右の画面にはたくさんのツールが起動していた


目にも止まらぬ速さで警察のHPを進入していく

両手を起用に使い、キーボードをカタカタと打っていく

そして、IDとパスワードを要求され始めた

これは失敗するとこちらの情報が漏れるという危険なところである

だが、そんなものをものともせずIDとパスワードの検索を始める

ID *****

パスワード *********

検索完了

入力をし、警察の機密データを探り始めた

そして、見つけた

10/21 事故ファイル

その中に、少女自殺事件

このデータを丸ごとコピーし、ハードディスクに入れる

コピーが完了した

ツールを閉じる

画面とキーボードもしまわれていき、いつも通りのパソコンになる

「所詮、人が作ったものなどこんなものさ」

おっと、つい口に出してしまった

さて、コピーデータの内容を見てみる


被害者の名前は 斉藤 里香

界境中学に通う中学3年生

体、右半分(特に頭部)を強打し、死亡を確認


・・・界境中学って僕の中学じゃないか!


そこまで分かったところでふと時計を見る

時計は12に針を差していた

つまり12:00 寝る時間

明日は休日なので続きは明日調べるとしよう




そう思い、布団について僕は寝た


   ‡6‡

 とある日、一人の少年と出会った

私が電車に乗っていたとき、痴漢にあった

その時、助けてくれたのが彼である

助けてくれたときの彼はとてもかっこよかった

電車を降りて、学校にいっても彼のことが頭から離れない

友達に相談してみた

すると友達は・・・

「ふむ・・・それは恋だね」

と言ってくる

私ももう中学3年生だ

初恋は小学6年のときだ

つまり恋は経験してる

だから分かる

この感情は恋じゃない

友達は親切なことに彼の親友を紹介してくれた

この人に合わせてもらえばいいってことらしい

「やぁ!俺、竹垣 陽一。普通に名前で呼んでくれていいよ。」

「ありがとう。私白鳥 亜理紗」


そういって昼休み陽一君に彼の居場所まで連れてってもらった



場所は屋上

彼は昼寝をしている

陽一君がカムと彼の名を呼び彼が起きた

なるほど、名前はカムというのか

私はカムと呼んで彼に話しかけた

が、実際はカムという名前ではなくカラスだった

名前は 黒鳥 殻守

なんか可愛い

素直にそう思って可愛い名前と伝えたら不思議な目で見られた

友達は私のセンスが分からないというけどそんなにおかしいかな・・・?

色々会話しているうちに陽一君がいなくなってる

そして無言の時間が流れる

予鈴がなった

カム君に詫びを言って私はクラスにもどる

午後の授業は化学と国語

化学の授業好きなんだよね~

私はそんなことを思いながら授業を受けた




放課後

私は部活に行く

入部しているのは弓道部

1年のとき友達に誘われ入部したのだ

今では部長も任されており、充実した部活を送っている

ただ・・・さすがに3年生ってこともあり、もうすぐ引退

次の大会が、最後の部活となる

さて、それまで頑張ろうか!

私は大会目指して今日も練習をした

私の率いる弓道部は比較的に男子が少なく女子の比率が多い

弓道を始める人で男子の人は実は少ないのかもしれない




さて、部活も終わり、あとはゆっくり帰るだけ

私は駅へと歩き出す

駅に着き、改札を通ってホームにつく

次の電車は何分かなぁ・・・と思い時刻表を見ているとカムを見つけた

すかさず彼の近くにいく

何故か彼の隣は落ち着く

なんでだろ・・・

カム君は飲み物を買いに自販機まで歩いて行った

何を買うんだろう・・

少し興味が沸き、ついていってみる

カム君がこちらの表情を伺ってきた

何か心配でもしてくれてるのかなぁ・・・と思い笑顔で返す

すると何故か呆れた様子をこちらに見せた

あれ・・・?私何かやったかなぁ・・・

それにしてもカム君は本当においしそうに飲む

よっぽどD・Cグレープが好きなんだろうね

カム君が飲み終わると同時に電車が来た

私は電車に乗ろうとする

だけどドアが開かない そして停車位置が少しおかしい

カム君を見ると彼の表情は少し強張っている

カム君に声を掛けようとしたら女性の悲鳴が聞こえた

私はびっくりして、声の方向を見る

するとカム君はその方向に走っていった

私のカム君について行った


行き着いた先には・・・顔面蒼白の人々が多数

そしてガタガタと震えている

カム君が声の主である女性に声を掛けた

すると女性は右手を前に突き出し、電車を指差した

でもただ電車が止まっているだけで・・・私には何がなんだかわからない

カム君が電車に近づいていく

私も一緒についていく

そして気づいた

気づきたくなかった

指が差していたのは電車ではなく、線路

そしてそこには真っ赤な液体とぐちゃぐちゃの肉片

そして何より・・・

潰れた顔

私は言葉を失い、そこで体勢を崩してしまい、泣き崩れちゃった




その後警察の事情聴取があったけど・・・私は泣き崩れてしまったのでカム君が全てやってくれた

それが終わるとカム君がこっちに歩いてきて

「大丈夫?立てるか?少し深呼吸をしたまえ」

と言う

これは彼なりに私を慰めてくれているのかな?

私は深呼吸をし、少し落ち着きを取り戻せた

「家に帰ってゆっくり休むといい。今日、君は何も見ていないんだ」

私は黙って頷き、バスで帰っていった

電車が止まっているせいでバスがかわりに止まっている区間を移動してくれている


さて、家に着いた私は今日のことの整理で精一杯

今日はたくさんの出来事があった

朝はカム君に初めて出会い、助けてもらった

昼はカム君にお礼の言葉を言いに行った

そして放課後には自殺に遭遇

もう・・・ついているんだか、いないんだか・・・

でも、やっぱり恐怖は消えない

今でも私は震えている

人の死を初めて目撃して冷静でいれる人なんていないよね!?

怖い、助けてほしい

そうだ、また明日カム君に会いに行こう

少しは私の支えになってくれるかもしれない

そう思うと少し身軽になった

私はお母さんが作ってくれた夕食をとりシャワーを浴びて今日は早めに寝た

時間は9:00




翌日

いざ目が覚めると、気持ちは結構楽になっているものである

ただ、昨日の出来事が頭から離れない

思い出してしまう

やっぱり、カム君に相談しよう

私はそう思い、朝食をとって学校に行った

バスに乗り、駅まで移動する

バスに座っていると・・・カム君を見つけた


「おはよう!カム君!」

するとカム君は照れたのか分からないけど表情を少し変えていった

「朝から元気だな」


   ‡7‡

 ま~い~に~ち~ひと~つ、ま~めちしき ランランラン♪

どこかで聞いたことのある曲が流れる

ちなみにこの曲は僕の携帯から流れている

そう、目覚ましだ

そういや、昨日クラスで陽一が勝手に僕の携帯いじっていたな・・・

面白いことをする っていうから興味本意で貸したけど・・・なんだこれ?

眠気と疑問が僕を襲う

そりゃ神だって眠くはなるさ

皆、僕は目覚めは悪いほうだと言う

確かにそうだろう 何よりこの目覚ましメロディーに早速イラっとした

いつまでも曲が流れているので携帯のボタンを押してストップする

はぁ・・・眠い

「ん~~~・・・・」

僕は体を伸ばした

よし、動く

そのままベッドを降りて顔を洗いに洗面所にいく

バシャバシャっと顔を洗い、鏡を見る

そこには見慣れた自分

鏡に映った自分を見て意味なく笑ってみる

少し目覚めた



さて・・・朝食作らなくては

現在の時間はAM7:00

昨日この時間にご飯が炊けるように設定したので炊飯器を開けるとモワっとごはんのいい香りがする

僕は冷蔵庫から鮭の切り身を取り出し、焼いた

その間に、味噌汁を作る

英語では味噌スープとか言うらしいけど・・・そのまま味噌汁って外人が言ったほうが面白いのにね!

おっと御託でした

さて、魚も焼きあがり、味噌汁も完成

食卓にご飯、鮭の切り身、味噌汁が並ぶ

なんとも質素だが毎朝の朝食である

ちゃちゃっと食べて歯を磨く

そして制服に着替えいざ学校に出発



そういえば昨日の事故のせいで電車が動いていないのだった

バスに仕方なく乗り、学校に通うことにした

何より・・・バス、狭いんだよなぁ・・・

自宅付近のバス停で待っているとお待ちかねのバスがやってくる

もちろん乗る

すると、彼女・・・亜理紗を見つけた

僕は運が悪いのか・・・・

彼女は僕を見つけると声を掛けてきた

「おはよう!カム君!」

・・・・はぁ、朝から彼女に出会うとは・・・

疲れがどっと出た

そして彼女に向けて第1声

「朝から元気だな」

すると彼女の顔はさらに明るい表情になる

「元気、元気!カム君は?」

こいつ・・・昨日の事故を本気で忘れたのか?

確かに君は何も見ていないとはいったけど・・・

「というより、何時から君は僕の事をカム君と呼ぶようになったのか・・?」

「カムさんって言うと何ていうか・・カム君が年上に感じる気がするし、何より呼びづらいから」

「・・・」

絶句

「まず、君と僕は親戚か?」

「いや、違うよ?」

「なら、君と僕は友達か?」

「うん」


\(^0^)/


い・つ・の・ま・に!!!

「え?違うの!?」

亜理紗は驚いた口調で言う

「否!断じて否!」

まず昨日助けただけの人がなぜいきなり友達になっているのだ!?

亜理紗が顔を俯かせる

そして・・・微かに聞こえる泣き声

「えぐ・・えぐ・・・なんで・・・そんな・・・」

うわぁ・・・完璧僕悪者だよ・・・

周囲の人の視線が痛い

「・・・ああ、もう! 分かった!君と僕は友達だ!」

そんなことをいうと亜理紗は顔をあげてこちらを見る

そこにあるキラキラとした目は助けたときとは違う また別の目

まるで・・・ 本当? と問いかけてきているようだった

だから僕は頷く

すると彼女は僕に飛びついてきた

「・・・・!?!?!?!?!?!?」

僕の声にならないこの声

おい、少なくともバスの中だぞ!?

周囲の人から声がする

あの人たちやっぱり付き合っているのね とか

もう女の子を泣かすんじゃないぞ とか

知るか!!!こいつの気持ちは複雑すぎて読めん!!

とりあえず亜理紗を座席に座らせる

だが、気がついたらバスは駅についていた




この駅の名前は『雷光池』

かつてこの駅の近くに池があったらしい

だけど、過去に起きた大地震で池は崩壊

その池の跡地には今、蛍のように体を光らす虫がたくさん生息していると言う




バスから降りると亜理紗はとてもウキウキとしていた

こっちは本当に疲れたよ・・・はぁ・・・

「カム君カム君!早く行こ!」

亜理紗はそう言って僕の腕を引っ張って走り出す

ははは・・・以後面倒臭くなりそうだ・・・

だが、退屈じゃない

たまにはこういう人生もいいかもしれないな・・・

さて、今日は学校でもやるべきことがたくさんある

斉藤 里香ちゃんの情報を得るためだ

まずは陽一にでも聞くかなぁ・・・

陽一はその性格がゆえにあちこちの人と情報を交換している

斉藤 里香ちゃんの情報の一つや二つ持っているだろう




学校に着く

何故か僕の左腕を抱きしめるように亜理紗が縛りついている

歩きづらい・・・・

そして何より・・・生徒の視線が痛い!

結局クラスに着くまでずっと左手は抱きしめられたままだった

亜理紗のクラスは3年2組

北校舎三階を左に進んで2つ目のクラス

僕のクラスは3年4組

同じく北校舎三階を左にすすんで4つ目 というより一番奥のクラス

2組に着くまでにいろんな人と会って、そして全員に温かい目で見守られた

通り過ぎると泣いていた人もいたけど・・・なんで?

4組に着くと陽一が待っていた

「カム~、おっは~!」

相変わらずのマイペース

「おはよう。早速聞きたいことがある」

「・・?何々?」

「『斉藤 里香』についてだ」

「ふむふむ、そのこのこと聞いてどうすんの?付き合うの?あっそう、でも君には亜理紗ちゃんがいるよ?」

ははは・・・・彼女とはそんな仲ではない

軽くスルーして事情を説明

だが、彼女が死んだ と言う情報は隠し一部嘘をついて説明した

「なるほどね。でも生憎彼女の情報をあまり知らないんだ。彼女の友達を紹介するから少し待ってて」

そういうと陽一は廊下を走っていった

するとすぐに一人の男子を連れてきた

「彼は里香ちゃんの彼氏。そして僕の友達」

「陽一・・・Thank you!では彼と話があるから少し席をはずしてくれ」

「了解!カム、何かあったら好きなだけ頼ってくれよ!」

本当にいい奴だ

つくづく思う


「さて、俺に何のようだ?」

男は少し強気に言う

「まさか、俺の彼女に惚れたとか言うなよ」

男は笑いながらいう

「もちろんそのような事は御座いません。今日は少し彼女について聞きたいことがあるのです」

丁寧にいう

「ん?そういや今日、里香来てないな・・・?遅刻する奴じゃないし、欠席だったら俺にメールをするのだが・・・」

「本日、里香さんが乗る電車がトラブルで止まってしまっているようです。先ほど先生から聞きました」

淡々と嘘を並べる

「あ・・・そうか。俺に一通くれてもいいのにな・・・。さて、何が聞きたい?」

「彼女の学校の生活についてです。最近極めて暗くなったり、虐め等を受けているということはありませんでしたか?」

すると男は怒った口調で言う

「そんなことあるわけねぇだろ!!里香はいつも明るくて、里香の周りにはいつも人がいっぱいで笑顔もいっぱいなんだ!」

「分かりました。お時間をいただいて申し訳ありませんでした」

僕はしっかり礼をし、男にクラスに帰ってもらった

少々怒っていた様だが・・仕方ないだろう




さて、次は親に会いに行かなくてはな


   ‡8‡

 ま~い~に~ち~ひと~つ、ま~めちしき ランランラン♪

どこかで聞いたことのある曲が流れる

ちなみにこの曲は僕の携帯から流れている

そう、目覚ましだ

そういや、昨日クラスで陽一が勝手に僕の携帯いじっていたな・・・

面白いことをする っていうから興味本意で貸したけど・・・なんだこれ?

眠気と疑問が僕を襲う

そりゃ神だって眠くはなるさ

皆、僕は目覚めは悪いほうだと言う

確かにそうだろう 何よりこの目覚ましメロディーに早速イラっとした

いつまでも曲が流れているので携帯のボタンを押してストップする

はぁ・・・眠い

「ん~~~・・・・」

僕は体を伸ばした

よし、動く

そのままベッドを降りて顔を洗いに洗面所にいく

バシャバシャっと顔を洗い、鏡を見る

そこには見慣れた自分

鏡に映った自分を見て意味なく笑ってみる

少し目覚めた



さて・・・朝食作らなくては

現在の時間はAM7:00

昨日この時間にご飯が炊けるように設定したので炊飯器を開けるとモワっとごはんのいい香りがする

僕は冷蔵庫から鮭の切り身を取り出し、焼いた

その間に、味噌汁を作る

英語では味噌スープとか言うらしいけど・・・そのまま味噌汁って外人が言ったほうが面白いのにね!

おっと御託でした

さて、魚も焼きあがり、味噌汁も完成

食卓にご飯、鮭の切り身、味噌汁が並ぶ

なんとも質素だが毎朝の朝食である

ちゃちゃっと食べて歯を磨く

そして制服に着替えいざ学校に出発



そういえば昨日の事故のせいで電車が動いていないのだった

バスに仕方なく乗り、学校に通うことにした

何より・・・バス、狭いんだよなぁ・・・

自宅付近のバス停で待っているとお待ちかねのバスがやってくる

もちろん乗る

すると、彼女・・・亜理紗を見つけた

僕は運が悪いのか・・・・

彼女は僕を見つけると声を掛けてきた

「おはよう!カム君!」

・・・・はぁ、朝から彼女に出会うとは・・・

疲れがどっと出た

そして彼女に向けて第1声

「朝から元気だな」

すると彼女の顔はさらに明るい表情になる

「元気、元気!カム君は?」

こいつ・・・昨日の事故を本気で忘れたのか?

確かに君は何も見ていないとはいったけど・・・

「というより、何時から君は僕の事をカム君と呼ぶようになったのか・・?」

「カムさんって言うと何ていうか・・カム君が年上に感じる気がするし、何より呼びづらいから」

「・・・」

絶句

「まず、君と僕は親戚か?」

「いや、違うよ?」

「なら、君と僕は友達か?」

「うん」


\(^0^)/


い・つ・の・ま・に!!!

「え?違うの!?」

亜理紗は驚いた口調で言う

「否!断じて否!」

まず昨日助けただけの人がなぜいきなり友達になっているのだ!?

亜理紗が顔を俯かせる

そして・・・微かに聞こえる泣き声

「えぐ・・えぐ・・・なんで・・・そんな・・・」

うわぁ・・・完璧僕悪者だよ・・・

周囲の人の視線が痛い

「・・・ああ、もう! 分かった!君と僕は友達だ!」

そんなことをいうと亜理紗は顔をあげてこちらを見る

そこにあるキラキラとした目は助けたときとは違う また別の目

まるで・・・ 本当? と問いかけてきているようだった

だから僕は頷く

すると彼女は僕に飛びついてきた

「・・・・!?!?!?!?!?!?」

僕の声にならないこの声

おい、少なくともバスの中だぞ!?

周囲の人から声がする

あの人たちやっぱり付き合っているのね とか

もう女の子を泣かすんじゃないぞ とか

知るか!!!こいつの気持ちは複雑すぎて読めん!!

とりあえず亜理紗を座席に座らせる

だが、気がついたらバスは駅についていた




この駅の名前は『雷光池』

かつてこの駅の近くに池があったらしい

だけど、過去に起きた大地震で池は崩壊

その池の跡地には今、蛍のように体を光らす虫がたくさん生息していると言う




バスから降りると亜理紗はとてもウキウキとしていた

こっちは本当に疲れたよ・・・はぁ・・・

「カム君カム君!早く行こ!」

亜理紗はそう言って僕の腕を引っ張って走り出す

ははは・・・以後面倒臭くなりそうだ・・・

だが、退屈じゃない

たまにはこういう人生もいいかもしれないな・・・

さて、今日は学校でもやるべきことがたくさんある

斉藤 里香ちゃんの情報を得るためだ

まずは陽一にでも聞くかなぁ・・・

陽一はその性格がゆえにあちこちの人と情報を交換している

斉藤 里香ちゃんの情報の一つや二つ持っているだろう




学校に着く

何故か僕の左腕を抱きしめるように亜理紗が縛りついている

歩きづらい・・・・

そして何より・・・生徒の視線が痛い!

結局クラスに着くまでずっと左手は抱きしめられたままだった

亜理紗のクラスは3年2組

北校舎三階を左に進んで2つ目のクラス

僕のクラスは3年4組

同じく北校舎三階を左にすすんで4つ目 というより一番奥のクラス

2組に着くまでにいろんな人と会って、そして全員に温かい目で見守られた

通り過ぎると泣いていた人もいたけど・・・なんで?

4組に着くと陽一が待っていた

「カム~、おっは~!」

相変わらずのマイペース

「おはよう。早速聞きたいことがある」

「・・?何々?」

「『斉藤 里香』についてだ」

「ふむふむ、そのこのこと聞いてどうすんの?付き合うの?あっそう、でも君には亜理紗ちゃんがいるよ?」

ははは・・・・彼女とはそんな仲ではない

軽くスルーして事情を説明

だが、彼女が死んだ と言う情報は隠し一部嘘をついて説明した

「なるほどね。でも生憎彼女の情報をあまり知らないんだ。彼女の友達を紹介するから少し待ってて」

そういうと陽一は廊下を走っていった

するとすぐに一人の男子を連れてきた

「彼は里香ちゃんの彼氏。そして僕の友達」

「陽一・・・Thank you!では彼と話があるから少し席をはずしてくれ」

「了解!カム、何かあったら好きなだけ頼ってくれよ!」

本当にいい奴だ

つくづく思う


「さて、俺に何のようだ?」

男は少し強気に言う

「まさか、俺の彼女に惚れたとか言うなよ」

男は笑いながらいう

「もちろんそのような事は御座いません。今日は少し彼女について聞きたいことがあるのです」

丁寧にいう

「ん?そういや今日、里香来てないな・・・?遅刻する奴じゃないし、欠席だったら俺にメールをするのだが・・・」

「本日、里香さんが乗る電車がトラブルで止まってしまっているようです。先ほど先生から聞きました」

淡々と嘘を並べる

「あ・・・そうか。俺に一通くれてもいいのにな・・・。さて、何が聞きたい?」

「彼女の学校の生活についてです。最近極めて暗くなったり、虐め等を受けているということはありませんでしたか?」

すると男は怒った口調で言う

「そんなことあるわけねぇだろ!!里香はいつも明るくて、里香の周りにはいつも人がいっぱいで笑顔もいっぱいなんだ!」

「分かりました。お時間をいただいて申し訳ありませんでした」

僕はしっかり礼をし、男にクラスに帰ってもらった

少々怒っていた様だが・・仕方ないだろう




さて、次は親に会いに行かなくてはな


   ‡9‡

 さて、次は親に会いに行かなくてはな



でも今はまだ授業も始まってない朝

まずは・・・・授業が終わるまで待たなくては

学校の授業は同じことを必ず3回やる

皆がしっかり理解してから授業を進めるらしい

そんなこと1度聞いただけで理解できるのにな

やっぱり人は無能だ




さて、昼休み

僕は毎度の如く屋上にあがり、食事をとることにした

実はこの学校の天井から見える風景は悪くない

青々とした緑の中に、きれいな町が見える

そして、いつも空は青く空気はきれい

星空もなかなかきれいに見える知る人ぞ知るベストスポットなのだ

つまり、夜になると天体研究部が屋上を占領するのだが・・・




屋上に着くと先客がいた

落ち着いた雰囲気にポニーテールの頭

白鳥 亜理紗である

僕は諦めて別の場所で食事をとろうと思い、引き返そうとすると亜理紗と目が合った

「あ、カム~!!やっぱり昼休みはここにくるんだね!」

亜理紗は大声でこちらに言ってくる

あれ?等々君付けすら無くなった・・・?

「どうしたんだ、君は?」

亜理紗に近づきながら質問をする

「屋上気に入っちゃってね!これから私もここで食事を取ろうと思うの!」

「なるほど。君の考えは理解した。好きにしろ」

僕は階段の上の屋根に行く

ここで座りながら風景を見て食事を取るのが僕の日課だ

食事中は一言も喋らない、自分の世界を楽しむ

聞こえてくるのは風の音と鳥のさえずり

最高の贅沢だ




・・・なのに今日は不協和音が入ってくる

亜理紗が僕の元にやってきて話しかけてくる

「ねぇねぇ、今日の放課後あいてる?」

「いや、空いてない。調べ事がある」

「調べ事?何の?」

「簡単には言えない」

「じゃあ難しく言って!」

「そういう問題じゃない!」

「ええ・・・だって・・・・」

「頼む、少し黙ってくれ。僕の食事の一時を邪魔しないでくれ」

亜理紗に言うと亜理紗も黙り黙々と食事を始めた

ふぅ・・・これでいつも通りの食事ができる!

「こういうのもいいね!」

・・・だから君は!!




午後の授業が終わると、残るは放課後

僕は早速里香の家に足を向わせた

何故か後ろから亜理紗がついてくるのは言うまでもない

里香の家は電車を乗って6個目のバス停から歩いて10分の場所にあった

「調べ事って・・・友達について個人情報を調べるの?それはストーカーって言って犯罪なんだよ?」

今勝手に着いてきている君に言われたくない

「君には話したくは無かったが・・・まぁ仕方ない。話してやる」

「お、やっと口を開いたね」

一々気に障る奴だ・・・

「この家にいる、いや『いた』のほうが正しいな。いた子の名前は斉藤里香、この前電車に引かれた子だよ」

「え・・・?」

亜理紗の顔が真っ青になっていった

「僕はあの事故について色々調べているんだ。彼女は自殺したらしい、だから原因を洗っているんだ」

「じゃあつまり、今両親に話を聞こうとしているの?」

声は震えていた

「そうだ」

僕はそう答えインターホンを押した




ピンポーン




音の後にインターホンから声がする

『はい?どちら様でしょう?』

「界境中学3年、華道部の黒鳥 殻守と申します」

『・・・』

少々沈黙が流れる

もちろん華道部なんてでまかせだ

里香が華道部に入っていたことを知ったので同じ部活に属していたと説明する

そうすると里香のことを知っている ということになる

『里香はまだ帰ってませんけど・・・』

里香が死んだことを知っているのは学校の先生くらいだ

生徒にはまだ伝えられていない

「そうですか、中で待たせてはいただけませんか?」

『・・・いいですよ』

少し暗い声だった




中に入るとなかなかきれいな家だった

しっかり掃除も行き渡っており、床はピカピカ

嫌な姑を入れても埃を見つけることなんてできないだろう

「こちらにお掛けください」

母親はそういい、ソファーに手を差し出す

もちろん亜理紗も一緒に入ってきているので二人で座れるソファーだ

「里香は帰ってくるのが最近遅いんですよ」

母親は笑って答えているが実際笑っているのは表情だけで全体の雰囲気と矛盾していた

「そんな嘘はいりません」

僕は真剣な眼差しを母親に向けた

「嘘?それは何のことですか?」

「あなたが一番よく知っているはずです。今私に 里香は帰ってくるのが遅いといいましたよね?里香ちゃんは事故で亡くなっているはずです。何しろ私たちはその現場を目撃しました」

母親の表情が一気に崩れた

改めて現実を見せたので仕方ないだろう

泣き崩れてしまった




一定時間が経った

母親も泣き止み、やっと質問できる環境になった

「里香の死を知っている貴方達が何をしにいらしたのですか?」

「気になることがありまして・・・。彼女は自殺した可能性が高いと警察が言っております。それはあなたもご存知のはずです。最近彼女に代わったことはありませんでしたか?」

「・・・いえ、特に」

母親の目は真剣そのもの。何かを偽っている様な感じではなかった

この人は嘘を言ってない

「ですよね。学校でも明るく接していましたので問題は無かったと思います。では・・・失礼します。何か分かりましたら教えていただけませんか?同じ部員として、いえ友達として非常に気になるのです」

外は夕暮れ時になっており、空がオレンジ色で満たされていた

友達であると分かって貰えると信用がより一層深まるものだ

実際話したことも無い、赤の他人だが

「分かりました」

母親はそれだけ言うと玄関への扉を開けた

「お邪魔しました」

亜理紗はそういってペコリと頭を下げた




家をでると目の前を女性が横切った

彼女はとなりの家に入っていった

どうやらご近所の人のようだ

・・・・どこがで見た様な・・・


亜理紗がこれからどうするか聞いてきた

「とりあえず僕は現場に潜り込んで新たな情報を手に入れてくるよ」

「そう・・・。じゃあ私は今日は帰るね」

亜理紗はそういって僕に手を振り走っていった



さて、現場に戻るか

バス停まで歩いていき、時間を確認する

するとちょうどよくバスがやってきた


現場に着くとマスコミがわんさかと取材をしていた

カメラがパシャパシャと撮影をしておりフラッシュがまぶしい

何しろもう夜で当たりは真っ暗

フラッシュは本当にまぶしい

そしてとても騒がしい

近所迷惑を考えたらどうだ

あまりにも騒がしいので潜り込むのがとても簡単だった

先頭まで潜り込んでいくとある人と目が合った

「あの女・・・昼のときの・・・?」

里香の家の隣に住んでいる女性と同じ顔 同一人物であろう

とても背筋が凍る

それもそのはず

ここで人が死んだというのに女性は不敵な笑みをしていた




思い出した




彼女は第1発見者の女

あの時、ひどく怯えていた女性じゃないか・・・

彼女について調べる必要があるな

僕はそう思いバスに乗って駅えと向った




自宅から最短の駅から続く道を歩いていた

いつもは人目の多いところなのだが・・・今回はとても少ない

というより人が歩いていない

おかしい・・・・何かがおかしい・・・・

不思議に思いながらも歩いていると背中から体に冷たい何かが入ってくるような感じがした

そのあと熾烈な痛みを感じる

後ろを振り向くとそこには女性が一人・・・・

僕は後ろからナイフで刺されていることに気づいた

「貴方は・・・気づいてしまったわね?ならここで死んでもらわなくてはいけないわ。『小さな探偵さん』!」

そういって彼女はナイフを引っこ抜くと今度は心臓に突き刺してくる



・・・こいつ・・・罰当たりなことを・・・・


そこから 意識が無くなった


   ‡10‡

 一人で帰ることほど悲しいことはない

周りで友達や、恋人と一緒に帰っている人を見ると羨ましく思う

友達がいない訳じゃない

ただ、同じ方向の人がいないだけだ

だから私はどんなときも登下校は一人だった




でも今は違う

私はカムとあったことで登下校一人じゃなくなった

彼と一緒にいると安心する

それは・・・もしかして・・・




 目が覚めた

どうやら私は眠っていたようだ

しかもベットではなくて家のソファーで

窓からは朝日が入ってきて、今日の始まりを示していた

上に毛布を掛けてくれている

お母さんがやってくたのかな・・・

テーブルを見て見ると上に一枚の置手紙があった

-亜理紗へ 今日は朝早くからお仕事なので行かなくてはいけません。朝ごはんは作っておいたので食べてね!-

いつもありがとう、お母さん

私は顔を洗うために洗面台に歩いていく

鏡に映った自分を見るとわけも無く笑った

少し眠気が取れた

顔を洗って食事をする

さて・・・今日も学校だ




今日から電車はいつも通りに雷光池に止まるようになった

警察が現場の処理を昨日終えたのだ




雷光池に着いた

やっぱりあの事故が脳裏に浮かぶ

忘れたいと思う記憶ほど忘れられないものだ

「今日・・・カム、どうしたんだろ・・・」

いつも同じ電車、同じバスに乗っているカムが今日は乗っていない

早めに行っちゃったのかな・・・

私はそう考え、学校に向った




いざ学校に着くとすぐ教室に向かい、荷物を置く

そしてそのまま殻守のクラスに走って向った

そして転んだ

「いたたたた・・・やっぱり廊下は走っちゃいけないね」

私は一人呟き、殻守のクラスに歩いていった




教室のドアに着いたところで カム~ と叫んだ

クラス中の男子がこちらを見てきたけど・・・なんでだろ?

あれ?カムがいない・・・遅刻かな?

殻守の変わりに陽一が話しかけてきた

「カムね、今日は欠席らしいよ。カムにしては珍しいんだけどね・・・」

明らかに陽一は殻守の死を隠していた

だが、亜理紗はそんなことに気づくはずが無かった

誰でもそうであろう

昨日まで一緒に喋っていた人が突然死んだなんて思うはずがない

「そうなの・・・。あとでお見舞いしようかな?」

陽一が何か言おうとしが、すぐにその言葉を飲み込んで黙った

「あ、私カムの住所知らないや・・・」

私はそう呟きながら自分の教室に戻った




昼休み

いつもの屋上

カムが大好きなカム専用の食事スポットで食事をする

何か偉くなった気がする




いつもならカムと一緒にご飯を食べるのだが、今日はそのカムがいない

私は黙って食事をする

そういえば昨日カムは黙って食べろって感じなこといってたなぁ・・・

そんなことしてもつまらないのに・・・

やっぱり皆で楽しく食べるのが一番!

何でカムにはこの気持ちがわからないんだろ?

「皆で食べるのが、一番おいしいんだよ~~~!!!!」

カムに届け、私の気持ち

そんな意味合いで空高く叫んだ

その場で寝転がる

カムはきっと、この青い空が大好きなんだろうね

私はひたすら続く青い空を見ながら思った




放課後

電車に乗って帰宅する

でも・・・今日はやっぱりカムのお見舞いに行きたいな・・・

私はそう思い、カムの乗車駅『新穀寺』に向った




新穀寺駅から出てみると、結構人がたくさんいる

歩いて14分くらいの距離とか言ってたなぁ・・・

実はバスの中でカムの情報をある程度聞いていたのだった!

いやぁ、聞いてて正解!

現にこうやってお見舞いに行けるし




少し歩いたところで警察がたくさん歩いていることに気づく

不振に思い近くにいた野次馬の男性に話を聞いた

「え?ここで何があったかって?うーん・・・君に話すべきか少し悩むが・・・まぁ、教えてあげるよ。 昨日ここで殺人があったんだ。今朝ここで倒れている人を見つけてね。確か君の制服と同じ界境中学だったはず。男の子だよ。見つかった頃にはすでに死んでいて、背中と、心臓にグサリだ」

男性が身振りそぶりで説明する

背筋が凍った

そして嫌な汗が出てくる




まさか・・・・!




私の知っている限りこの駅を使って登校する中学生は実に少なく、知っている限りただ一人

そう、黒鳥 殻守 ただ一人だ

「警察が今死体の身元確認中らしい。可哀想な中学生だったな・・・」

男性は少し殻守に同情した口調で話す

「ちがう・・・カムじゃない・・・カムじゃない!」

私はそういってその場から走り去った

「あ・・・君! ああ・・・やっぱり中学生に話す話ではなかったかな・・・」

私は近くにあった公園に身を潜めて泣いた




泣いていると男の人がこちらに歩いてきて警察手帳を見せて質問をしてきた

若い人で落ち着いた顔つきのメガネを掛けた青年だ

「君、黒鳥 殻守という少年を知ってるかい?」

多分私の制服を見て判断し質問しているのであろう

「はい・・・」

暗く、曇った声で答えた

それなのにこの人は遠慮なく話を進める

「実はその黒鳥 殻守君が現在行方不明でね、殻守君だと思われる死体が見つかったんだ。不思議なことに彼には両親もいなければ祖母や祖父もいない。さらに叔父、叔母、従兄弟そういったものも全部だ」

この人は人の気持ちなど大きく無視をする

「それで・・・私にその身元確認をしろと・・・?」

「そういうことになる」

そういうと彼は胸ポケットから写真を取り出して私に見せた

そこには、間違いも無くカムの顔が移されていた

私はそれを見て号泣

そして警察の青年は黙って頷き、どこかに歩いていった

正直あの警察の男のことなんてででもいい




ただ・・・殻守が死んだ事実はどうしても受け入れれなかった




そして陽一はこのことを知っていた

陽一は・・・私に黙ってくれていたんだ・・・傷つけないために・・・


私は家に帰って布団についた

友達が死んでもいつも通り平然と動いているこの世の中がとても嫌だった




殻守が死んで約二月くらいたった

今日は12月23日 天皇誕生日

あたりはしっかりクリスマスムードであった

でもいつまでも私の心は暗かった

あの日以降私は不登校になった

弓道の大会なんてもはや出場する気も失せた

友達が死ぬことがとても悲しいことはよく分かる

でもここまで続くものなのだろうか・・・

基本どんな嫌なことも1日立てば気分が安定するはずである




もしかしたら・・・殻守は私にとってとても大切な人だったのかな・・・


   ‡11‡

 生き物は必ず死ぬ

それが人生の終わりであり、結末なのだ

違う視点から言えば死ななければ生き物ではない

永遠に生きる者など 生きてはいないのだ


ねぇ


何で僕は死ねないの?



 気が付くと、そこには空が広がっていた

周りは・・・でかい鳥の巣のような形だ

そして・・・黒い白鳥が一羽

「やぁ、目が覚めたのかな?」

「・・・」

僕は答える気力を失っていた

思うのはただ一つ

私は死んだのでは?

「まさか・・・また我の名前を忘れたのか?」

「いや、忘れていない。ただ今ここにいるのが不思議で仕方ない」

僕ははっきりした口調でフォレストに問う

するとフォレストは目を見開いた後に大声で笑いながら答えた

「ふはははあははははあはははは!!! 神が死ねると思うてか? これは傑作だ!」

「神は・・・死ねない・・・・」

それはとても重い言葉

自然の摂理を一気にぶち壊す言葉

死とは体と魂の完全な分離を指すと言っても過言ではない

幽体離脱は不完全な分離という表現が正しいだろう

神は生きていないのだ

だから現在、死んだはずなのに体と魂もひとつに収まっている

まえに聞いたことがある

自然の摂理を無視すると、そこから生態系にひびが入り世界が崩壊していく

だから決して死人は蘇ってはいけないのだ



フォレストは笑いを堪えて語り始める

「死ねないのだよ。神はその仕事を全うし、新たな神を生み出すまで死ねないのだよ。何があっても」

「・・・じゃ、じゃあ下界に僕の体は無いのか?そうなると僕を殺したやつは何を殺した!?」

問い詰めると今度は真剣なまなざしでフォレストがこちらを向いた

「君の体は下界にある。性格にはダミーだがね」

ダミー・・・・?

僕の考えを悟ったのか フォレストは呆れ顔をして説明した

「神が万が一、人間の死ぬという扱いにあった場合 神は自分のダミーを作成し変わりに殺すことができる」

「おいおい・・・何だそれ、ダミーって何だよ?そいつも生きているんじゃないのか?」

「もちろん、その場で作ったダミーだがしっかり生きている。故に人形ではありえないような鮮血を出したりして死ぬことができる」

こいつ・・・平然と言ってやがる

「ふざけるな!作った命をその場で奪うなよ!それでもお前は神か!?」

「なら、自然の摂理が壊れていくのを無視するのが神がすることか!?」

こいつ・・・ありえない!

「うらぁ!!」

僕は怒りに身を任せフォレストの頬を強く殴った

フォレストは横に倒れ、そして何事も無かったかのように立ち上がった

翼をばさばさと動かし、整えてから下郎を見るかのように覚めた目でこちらを睨む

「無礼な・・・やはり、下界の空気に流されたみたいだな。情に流されては何も解決できんよ!」

フォレストはそういいながら羽ばたき、僕を蹴り飛ばした

僕は受身をとり、かろうじで耐える

「少し頭を冷やせ。その考えを改めるまでな」

頭を冷やすのはお前のほうだ

「僕はすぐに下界に降りる。今関わっている事件を解決し、あの子の無念を晴らしてあげたいんだ」

自分でも言って驚いた

僕はここまで人の心を受け入れていたんだな

「それは無理だ。少しの間君は下界に降りることが禁止されている。確か12月24日のあたりだったか」

そんなに!

あと約二月はある!

「なぜだ!僕が何をした!」

「君自身何もしていない。だが、下界の人間に殺された扱いだ。ある程度人の記憶から忘れ去られてもらわないとあとで面倒なのだよ」

・・・どうして・・・こうなった



下界に降りることはできない

僕は仕方なく覗き穴から下界を見下ろしにいった

だが、ぽっかりと落とし穴のように空いていた覗き穴は消えていた

不思議に思い、僕は近くにいた神獣に話しかけた

「ん?ああ、覗き穴?あれはかなり前に消滅したよ。この天界も技術が発展してね。今までは旧文明が作ってくれた覗き穴より新しくできたいイメージャーが有力なんだ」

イメージャー・・・?

そういえば僕はあまりこの天界のことを知らない

旧文明などといわれても下界では天才扱いの僕でも分からない

何よりそんな知識など無いのだ

でもとりあえず一言質問

「イメージャーって何ですか?」

「イメージャーとはね、神学学者が作った下界空想移動装置のことなんだ」

「・・・分かりやすくお願いします」

「つまり、その装置を使えば意識だけで下界を散歩できる装置のことさ」


これだ

これを使えば事件を追える

「すみません、そのイメージャーを使える場所を教えてもらえませんか?」

「いいよ!やっぱり君も下界を見てみたいという感じだね?」

彼はそういって僕をイメージャーまで案内してくれた


イメージャーという装置は見た感じ石の椅子だった

座ってみるとやっぱり石に座ったような感じ

でも、それからが違った

目の前に天使文字がずらっと出てきて僕の頭の周りを回転し始めた

そして、それが一斉に弾ける

僕は意識が遠くなるのを感じた


目が覚めると僕は学校の屋上にいた

下界に着いた

改めてそう感じる

屋上から見える景色はいつ見ても格別で、やっぱり今もそうだった

とりあえず教室に行ってみる

教室の前に着くと何故か懐かしい感じがした

1日もたっていないのに・・・不思議だ

いざ、教室に入る

扉は開いていて、簡単に入れた

扉に「空けたら閉める!」と書いてあるがやはり無視する奴がいる

相変わらずだな

陽一を見つけた

話しかけてみたが返事が無い

そっか・・・今ここにいるのは意識だけだったな

少し憂鬱な気分になった

僕は諦めて学校を出ようとする

亜理紗の教室を横切ったときにある違和感に気が付いた

亜理紗の気配がしない

今日は欠席なのだろうか・・・

珍しい


僕は学校を出て警察署に向った

署のなかではもう里香の自殺事件をとりあげている奴は誰もいなかった

それもそのはず

あの事件は『自殺』で解決してしまっていたのだ

今時そんなでたらめな捜査をする警察はいないだろう と思うのだが実際はこの通り

だれも他殺の可能性を考えていないようだ

今俺がここに入れればこんな結果は絶対無いのに!

自分を深く呪った


僕が天界にいる間何度もイメージャーを使った

そして一つ気づいた

僕が死んだ扱いになってから白鳥 亜理紗が一度も学校に行っていない

心配して彼女の家に向う

もちろん扉は開いていない

でも・・・毎日のように彼女の泣き声が聞こえてくる

「・・・どうしたんだよ・・・どうして君はそんなに僕に左右されるんだ?」

だれも返答してくれるはずのない質問をする

言葉はただ空しく消えていくだけ・・・・

こんなに亜理紗が悲しんでいるのに僕は何もできない

僕も・・・悲しくなってくるじゃないか・・・・

僕は彼女の家の前で泣いていた




12月24日

人々がクリスマスイブで楽しんでいるとき

やっと僕は下界に降りることが許された

僕はすぐに下界に降り、亜理紗の家に向った


そして、今やっと彼女の家に着いた

ここまで必死に羽を羽ばたかせ、なによりすぐに亜理紗に会いたかった

僕は自然と彼女に惹かれていたのかもしれない

彼女の家のインターホンを押す

『どちらさまですか・・・?』

亜理紗の声だ

「僕だ、殻守だ」

そう答えると扉が開いた

そこから確かに亜理紗が出てきた

いつもの落ち着いた雰囲気にポニーテール

少し胸が高鳴った

だが・・・彼女の口から出た言葉は予想外のものだった




「・・・貴方は・・・だれですか?」


   ‡12‡

 「・・・貴方は・・・誰ですか?」



たった一言

この一言で僕の世界は壊れた気がした




僕は亜理紗に 間違えました と伝えその場から去った

何でこうなったのだ・・・

僕は疑問を覚えたまま学校に向った

目から雫がこぼれたが気にしてはいなかった




駅に向う道を歩いていると落ち着いた顔つきのメガネを掛けた青年が話しかけてきた

警察手帳を見せてくる

「黒鳥・・・殻守さんですね?」

その口調はあくまで落ち着いている

この男警察であるのなら確実に知っているはずの情報を知らないのか・・・

僕は何より死んだのだ 扱い的にだが

「ほう、その目で言いたいことは全て分かりました。僕は死んでいるのになぜ貴様は驚かない? でしょう。あなたが死んだ扱いなのは知っていますよ」

こいつ・・今なんていった・・・?

僕が死んだ扱いだということを知っている?どういうことだ?

そして男は心を読んだかのように答えた

「知っている理由は簡単です。私はあなたの情報を知っているからです。先代の神様にお世話になりました」

「じゃあお前も神か?」

「いえ、私はただの人間です。ですが人間としてあなたを導くために色々と教え込まれた人間です。いわゆる助っ人ですね」

現にこうやって僕が下界に下りてきているのだ

そんな人がいてもおかしくは無いだろう

「じゃあ、その助っ人君は何しに来た?」

「学校に向うのはお止めなさい。貴方は死んだ扱いの身だ。今貴方が学校に行けば人々が混乱に陥るでしょう」

なるほどな

僕が今学校に向かい、教室に入った地点で周りの人から僕は蘇った人に見えるわけだ

「ただ、竹垣さんにはあった方がいい。彼は今後もあなたのお手伝いをしてくれる」

陽一のことも知っているのか・・・

侮れないな・・・こいつ

「だが、陽一も混乱するだろう?」

「竹垣さんにはこちらから適当に説明させていただきます。あ、それと白鳥 亜理紗さんについてですが・・・」

「亜理紗がどうした!?」

「急かせないでください。彼女からは不思議な力を感じます。もしかしたら今後あなたの人生を大きく変える存在になるかもしれません。」

・・・亜理紗が?

あいつはただ人のことをしっかり見守ることができ、ちょっとしつこい少女だ

そう、どこにでも居そうな一般的な中学生

だからなおさら不思議に思う

なぜ彼女が・・・?

「ただお気づきの通り彼女はあなたのことを忘れております。いわゆるうつ病の様子ですね。誰とも関わりたくないのでしょう」

それほど彼女は大きな傷をおったのか・・・

僕の胸が締め付けられるように痛かった

「さて、私はこれで失礼します。この後すぐに竹垣さんに会ってくださいね」

「待て、お前は自己紹介もせずに帰るのか?」

「おやおや失礼しました。私は如月 敦と申します。以後お見知りおきを」

敦はそのまま礼をしてその場を去った

学校の人にばれないで・・陽一に会う方法か・・・・

僕はふと携帯電話を取り出した




学校の屋上はやっぱりきれいだ

風景がとてつもなく絶景である

今は授業中なので誰もここには足を踏み入れない

僕は羽ばたいてここまで来た

今居る場所はお気に入りの階段があるところの上

そして・・・陽一も今階段を上ってきた

「はぁ・・・はぁ・・・やぁ、カム!大変だったねぇ・・・僕も知らなかったよ。まさかカムにあそこまで似た人がいて、さらにその人が殺されたなんて・・・」

如月はどんな説明をしたのだ・・・?さすがに無理があるだろう

でも陽一は気づいた様子は無かった

「ねぇカム。学校にはもどらないの?」

「学校のほうでは完璧に死んだ扱いになっちゃったんだ。今の僕はこの学校には居られない」

淡々と嘘を並べる

「でも学校に説明すれば・・・」

「そんなこと改めてやっていたら再入学前に受験だよ。時間が無い・・・」

「でも中学卒業の証や履歴が・・・」

「その辺はこの通り問題ない」

そういって僕は卒業証書を陽一に見せた

「え・・・なんで!?」

「この学校の先生はいい人ばかりでね。僕が死んだときにせめて卒業させてあげようとしたらしい。先ほど調達した」

陽一はポカンと口を開けたままになっていた

「さて・・・そろそろ授業が終わる頃だ。僕はここから去るよ。授業中呼び出して悪かった」

ふと陽一が我に帰り笑いながら怒り出す

「そうだよ!君も僕も受験生なんだから!次呼び出すときは放課後にしてよね!」

そういって陽一は階段を下っていった

「ふふ・・・そうだな」

僕はクスリと笑い羽を伸ばす

陽一といるとやはり気持ちが軽くなる

僕はそのまま羽ばたいて家へと戻った

・・・ちなみにこのとき飛んでいるところを数人見られてしまい、界境中学の七不思議に入れられてしまったのは


内緒だ




家に戻り、パソコンを起動させる

犯人の女性を調べるためだ

まず前科が無いかを調べるため警察のサイトにハッキング

そこから警察のパソコンに繋ぎ、データを一から洗い出した

そして・・・見つけた

あの時見た顔を一致する顔写真

名前は・・・加藤 美由紀

幼い頃に両親に虐待され、あまりのストレスに両親を手に掛けた

その歳・・・わずか5歳

専門家は「5歳で人を殺せるとは思えない。気持ちの操作にも慣れていない年頃だ」と主張

よって彼女は無罪とされた

その後、おじの下で彼女は暮らすことになった

だがそこから約12年後 17歳のとき薬物乱用で逮捕

部屋から覚せい剤が見つかった

では5歳のときも覚せい剤を使って乱心し両親を殺したのでは無いか っという意見も出たが12年もたっていて証拠不十分、尚且つ5歳で覚せい剤に手を染めるとは思えないと主張

もちろん後者の意見が通り、彼女は初犯のため執行猶予付きの1年6ヶ月の懲役になった

・・・ではなぜ彼女は里香を殺したのか

そこが今の疑問点である

彼女は僕を刺した時こういった 貴方は・・・気づいてしまったわね?ならここで死んでもらわなくてはいけないわ。『小さな探偵さん』!

多分彼女が僕に不振な点を持ったのは『僕を里香の家の前で目撃したこと』と、『現場で僕を目撃したこと』の二つであろう

さらにそこで顔を合わせてしまったため、疑われていると思い込んだ

だが・・・彼女が言った『気づいてしまったわね?』は何を指しているのか・・・

まず、僕は彼女を不振に思っただけで何も気づいてはいなかった

だから現に今、こうして調べているのだ

もしかしたら・・・気づいてしまうような証拠を彼女は残してしまったのか・・?

僕はすぐに事故の現場、目撃証言を改めて考え直す・・・




自殺・・・右半身強打・・・幸せ・・・虐待・・・覚せい剤・・・・

「・・・・見えた」

状況証拠は揃った。頭の中ではロジックが完成している

後は物理的証拠・・・・だが、探すものはすでに理解している

僕はすぐに里香の自宅に向った




里香の家に着くと、母親はすぐに入れてくれた

そしてすぐに話を持ち出す

「彼女が自殺した日に着ていた服って・・・今もございますか?」

唐突な質問に母親が驚いている

「あ・・・・ありますけど・・・どうするんですか・・・?」

「私の知り合いが警察でしてね。少々それをお預かりしたいと言っているのです」

「・・・なぜ?」

「里香ちゃんは・・・他殺の可能性が高いのですよ」

沈黙が続いた

そして母親は部屋を出て、そのとき着ていたぼろぼろになった制服を持ってきた

袋の中にピッチリと入っている

「どうか・・・どうかあの子の無念を晴らしてください!」

もはや相手が中学生だろうがいいのだろう

今は猫の手も借りたいって心境なのだろう

「分かりました。」

僕はただそういい、家を去った




家を出て、すぐにその場を離れる

となりが犯人の家なのだから仕方ない

その場を離れてから敦に連絡をする

この前陽一からケータイ番号を聞いておいたのだ

「もしもし、如月です」

「殻守だ」

「おやおや、どうなさいましたか?」

「君は確か警察だったな」

「そうですが・・・何か?」

「渡したいものがある。里香の服だ」

「・・・なぜそれを私に?」

「この服についている指紋を調べてほしい」

「分かりました。新穀寺駅で待ち合わせしましょう」

その返答を聞いた瞬間僕は電話を切った




新穀寺に着くと敦が待っていた




「確かにお預かりしました。ですが・・・これが何なんですか?」

「君は気にしないでいい。結果が出たら教えてくれ。」

僕はそういってその場から去る

これから・・・面白くなりそうだ!




そして・・・・亜理紗を助けなくては・・・


   ‡13‡

 プルルルルルルルル・・・・




携帯がなってる

画面には女という字と口、月と書いてある

・・・誰だ・・・こんな時間に・・・

今の時間帯はAM3:30

とても常人が起きている時間ではない

とりあえず僕は電話に出た

「こんな時間に誰だ・・・?」

「私です。如月です」

電話の主は如月だった

女と口と月はそういう意味だったのか・・・

寝惚けのせいか頭が回らない

「何のようだ?というより時間帯考えろ・・・」

やばい・・・ねむい

「いやぁ・・・神も眠るんですね。すみませんでした。結果が出たので早速報告しようと思ったのですが・・・時間を考えてかけ直します」

電話はそのままブツンと切られた

くそ・・・なんだあいつ

・・・眠い。寝よう

そしてそのまま再び眠りについた



プルルルルルルル・・・・

まただ・・・また携帯がなっている

着信の相手はまた如月

そして時間はAM4:00 

「また貴様か!時間考えるのじゃなかったのか!?」

あまりにもムカついたので思いっきり言ってやった

気分がスカッとした!

「ちゃんと時間考えていますよ」

何だこいつは・・・30分過ぎると敦の中では時間を考えた結果になるのか・・??

「私が思うに貴方は丑三つ時に電話をした私を怒ってるのかと思いましたので丑三つ時が終わってから電話しました」

・・・そういうことか

もはや怒る気にもなれない

「さて、本題に入らせて頂きます。例の制服から指紋が検出されました。一番目だったのは背中にベッタリとついた手の形の指紋です」

「わかった・・・その指紋の情報を僕のパソコンに送ってくれないか?」

「了解いたしました」

そのまま電話は切れた

僕はパソコンを起動し、メールで送られてきたデータを見る

前に刺されたとき、肩に付着していた指紋を独自に出していた

だが指紋は崩れていてあまりはっきりとは見えない

このような指紋が出ると警察は扱ってくれないので、今回は如月に任せていた

さて、手に入れた二つの指紋を合わせると見事に一致

そして、警察で管理していた加藤 美由紀の指紋にもぴったりと一致した

物理的証拠、決まった




翌朝、僕は加藤の自宅に如月と訪れた

それから雪がふわふわと降ってきていて、たまに服の中に入って冷たかった

こいつ・・・昨日寝てないらしいのにピンピンしている

どんな体のつくりなのか・・・少し興味があるな・・・

そんなことを思いながらインターホンを押す

『はい・・・どちらさまで?』

女性はとても寂れた声で質問してきた

少なくとも客に対する反応ではないな

ここのインターホンは今の時代には珍しくカメラがついていないインターホンだった

だがこちらにとっては好都合だ

「警察の如月です。お話を伺いたいのですが」

敦が答える

さすが警察。その雰囲気は本当に警察そのものだ

『少し待ってて・・』

彼女はそういい、2分後くらいに家から出てきた

僕はすぐ近くに隠れた

何より彼女に一度殺されているのだ

見つかったらまず逃げるだろう

「さて・・・警察が私に何のようですか?」

彼女は笑顔で質問する さっきの声が嘘みたいに明るかった

「外、すごい寒いですね・・・できれば中でお話したいのですがよろしいですか?」

雪が降っているし仕方がないだろう

「わかりました。どうぞお上がりください」

彼女はそういい、家の中へ誘導してくれた

「あ、すみません。今日は私の助手も来てくれているので彼も一緒にいいですか?」

「構いませんよ。寒いので早くどうぞ」

彼女の返答を合図に僕は姿を現した

「・・・!?」

彼女が驚きの顔をした

「あ、紹介が遅れました。彼は私の助手『黒鳥 殻守』くんですよ」

如月がほくそ笑んだ。とてもムカつく笑い方だな

「ど・・・どうぞ」

彼女は家の中に入っていくのと同時にそういった




家の中は綺麗でさすがは女の人の家だと思った

だが、現在はそんなことをしに来たのではない

「さっそく本題に入らしていただきます。この前駅で自殺の事故がありましたよね?貴方はあのときの第1発見者だった。間違いないですか?」

如月が話を進めていく

「はい、間違いありません。私は突然目の前で起きたことを信じられずにずっと俯いていました」

「自殺した彼女は実は貴方のお隣の斉藤さん宅の里香ちゃんだということは知っていましたか?」

「え・・・!そうなんですか!?知りませんでした!!」

彼女はあまりにも驚いた表情をする

「・・・嘘だな。僕は貴方を三回見ました。一度は最初の事故のとき、二回目は斉藤宅を伺っているとき、そして三度目は再び現場に行ったときだ」

僕は話に割り込み、言った

「そうですね・・・・確かに私は貴方を三回見ました。でも・・だからといって知っていることにはなりませんよ?」

確かにそうだ

だが根拠はちゃんとある

「そうでしょうか?三度目現場であったとき、マスコミが取材をしていました。それに対応する警察の態度はとてもいい加減でしたね」

「だから、それと何が関係あるのですか!?」

半ば怒鳴り気味で言ってくる

「あまりにもいい加減な対応で、大声で被害者の名前を言っていたんですよ!」

まず一つ、彼女の矛盾が証明できた

一気にそこから崩していく!

加藤 美由紀は何かを言おうとしたがそれをすぐに飲み込み、平然とした顔で笑った

「あ、そうですそうです!私はあの時に知ってしまったんでした。今、警察の方々が突然伺ってきた驚きで忘れてました」

美由紀は苦笑しながら説明した

「なるほど。実は知っていたのですか」

如月が話を進めようとする

「ところで、私がそれを知っているからなんだって言うんですか?まさか、私疑われているんですか?でもあれは自殺でしたのよね?」

「そうです。一応警察では自殺として扱ってます。ですが・・・あれが自殺ではなく他殺の可能性が出てきているのですよ」

「他殺の可能性?なんですって!」

そんな一々驚いたフリをしなくていいのに・・・

「実は貴重な目撃証言がありましてね。向かいのホームから見ていた人の証言なのですが、なんとも『彼女の後ろに人影が見えた気がした』って証言だったんです」

「え?でも周りにいた人たちは突然飛び降りたように見えたって言ってましたよ?」

「そこからは僕がお話します。それはトリックだったんです。あの時間では太陽がちょうど西の空にあるんです」

「だから?」

おいおい・・・美由紀さんがとうとう言葉が崩れてきたぞ

「事件があったところは西側にありました。見事に東側にいる人たちの逆光の一にあったんです。だからただボーっと見ていた人には女の子が突然飛び降りたようにしか見えなかった」

「・・・・」

「けど実際は背中をバンと押されて線路に飛び出てしまっただけだったんです。つまり、背中に大きく人の手のように指紋がついているはずと思い、鑑定してもらいました。すると見事に出てきたんです」

彼女は何も言わずただ聞いていた

「ちなみに僕はこの前通り魔に襲われましてね。刺されて死に掛けたんですが腕のいい名医に会いましてこの通り完治しました」

「んで・・・私に何が言いたいのですか?」

彼女が腕に握り拳を作り、ぎゅっと力を加えていた

「そのとき肩に付着した指紋と、彼女の背中についていた指紋が見事に一致しましてね。犯人には殺人の罪と殺人未遂の罪を味わってもらうことになりますね!」

僕は笑いながら話した

だが、目は笑わない 笑えるものか

「何が言いたいときいているんです!!!」

とうとう彼女は怒鳴り散らした

「貴方は気づいているはずです。僕が言いたいのは貴方が犯人だということだ!!」

負けじと僕も大声で応戦

「何を根拠に!?」

「出てきた指紋と、警察で保管されていた貴方の指紋を合わせたところ一致しました。バリバリ黒です」

ああ・・今気づいたが話が二人で進んじゃって如月、蚊帳の外にいるな

ま、いいか

「僕は少々貴女のことを調べさせていただきました。幼い頃に虐待にあっていたようですね」

彼女は何も言わないが、顔に肯定と表すような表情が浮かんでいた

「そして貴女は17歳で薬物乱用で捕まっている。あなたの親は薬物をやっていたのではないですか」

顔が少し強張る 図星のようだ

「それで薬物が切れた両親はストレス発散に我が子を傷つけた。そしてあなたもストレスを発散するために幼いときに薬物を乱用。その場の気分で殴りかかってくる両親を八つ裂きにし殺害した。そうですね?」

「ああ・・・・あの時私が殺した。だが時効は過ぎている!今更捕まえることはできないよ!」

そういって彼女は笑いながら泣いていた

いまでも・・両親を殺したことは悔いているのかもしれない

でもそれゆえに

「貴女は・・・彼女、里香ちゃんの幸福が羨ましかった。両親に愛されている里香ちゃんが羨ましかったんです」

「・・・・ということは・・・自分が彼女のように親に愛されていたら・・・ということですか?」

すかさず如月が話しに入ってくる

「ご名答。貴女は里香ちゃんが羨ましすぎて憎んだ。同じように苦しませたいと思ったんですね?」

返事はない

「でも親から愛を奪うことはできない。どうせできないなら親から子を奪ってやろうと思った。だからある日たまたま同じホームにいた里香ちゃんを殺害した」

「うるさい・・・・うるさいうるさいうるさい!!!!!!!お前らに何がわかる!親には愛想疲れ、幼稚園にも行かせてもらえないで生涯孤独にすごしてきた私の何がわかるって言うんだ!!」

「わかりません」

僕は即答した

「ふざけるなぁ!!私はお前らのような奴が大嫌いなんだよ!!!正義の味方を気取って実際傷ついている奴らに何もしてあげないお前らのような奴がね!」

彼女は少々興奮気味、すこしやばいかもしれない

「私はね、まだ捕まるには行かないんだよ!これからは私の親のような奴らを殺して回るんだ!体を引き裂いてやって、何も言わずに唖然とした顔のまま死ぬ。傑作でしょ!?でも本人は死んだことに気づいてないの!!いざ気づいて自分の死体を見るとただの肉片よ!!本当に素晴らしいわ!!!」

こいつ・・・狂ってやがる

「だから貴様らもここで死ね!!!」

彼女は突然ナイフを握り僕めがけて突進してきた

右手を突き出し、ナイフを刺そうとしてくる

僕は回避し、彼女を突き飛ばした

そのまま彼女は床に滑り込む形で体制を崩し激しく転んだ

そのままテレビが載っている台にぶつかり、痛そうにうめく

僕は彼女の元へ走り、大きくナイフを握っている右手を蹴る

ナイフはダイニングのほうに落ちていった

これで人まず安心かな・・・・そんなことをふと思ったとき今度はその場に合った紐で首を縛ってきた

「君を殺すのは二回目だねぇ・・・・!今度はしっかり息の根を止めさせてもらうよ!」

そのまま加減もなしにぐいぐいと縛っていく

意識が朦朧としてきた・・・そんなときだった

ゴン!っと重い音が響く

「神を殺そうとするには100000年早いですよ」

如月が美由紀の頭部を殴っていた

彼女は脳震盪を起こし、その場で倒れた

その隙を突いて、手錠をかける。あとは警察だな・・・・




翌日、警察はあの事件を自殺事件ではなく殺人事件として受け入れた

加藤 美由紀は殺人の容疑で逮捕された

でも、逮捕されたときはとても清清しい顔だったらしい

もしかしたら・・・誰かが止めてくれるのを待っていたのかもしれない

気のせいかもしれないけどね



亜理紗・・・・こっちは終わったよ。

あとは君を助けるだけだ・・・


   ‡14‡

 誰でも後悔はする

だから僕も今、後悔している

でも、する後悔は小さくはすることはできる

自分が歩く道は自分で決める

そしてその進んだ先で味わうことはその道だけのことなのだ

もしもあの時、違う道を選んでいたら、また違う人生が広がっていたかもしれない

これが・・・一番よかった選択?



――――――――――――――――――――――――――


 今の時間はPM7:00頃

僕は走っていた

加藤美由紀を逮捕してもらったあと、警察に少々連れていかれ話しを聞かされていた

やっと開放されたと思ったらこの時間だ 嫌になる

警察署から彼女、ありさの家までざっと2時間はかかる

飛べばもちろん早いのだが、一目も多いため飛ぶのは困難だった

結果現在に至る

僕は休憩もせず、彼女の家に走っていた



――――――――――――――――――――――――――


「私に関わると皆死ぬんだ・・・だからカムも死んだ・・・」

私に関わると不幸なことしかない

そういえば昨日 黒鳥 殻守 となのる少年が家を訪ねてきた

家にお母さんがいなかったため私が直接でたが、彼のはずがない

何よりカムは死んだのだ

写真も見させられた

現場も見た

状況証拠だけで十分だ

小学生のときに大の仲良しだった男子が自殺した

原因はイジメ

彼自身悪くないのに、周りは自分より弱者を作りたがる

だから集団になって寄ってたかって彼をイジメた

でも私は助けることが出来なかった

私もイジメられるかもと考えると助けれなかった

そして気がついたら死んでいた

家の中で首を吊っていたらしい

朝、彼を迎えに行こうとすると彼の家に警察が集まっていてそういっていた

悔しい

二度とあんなことは嫌だ

だから何があっても皆笑えるようにしようと思った

そして、ある日私の前に殻守君が現れた

彼の不思議な魅力に私は惹かれていたのかもしれない

でも仲良くなれたと思ったらこれだ

「・・・私は・・・もう誰とも関わりたくない・・・」



――――――――――――――――――――――――――――


肺が苦しい

足が痛い

腕から力が抜けている

走り続けて1時間は経った

でも距離はまだ半分ある

僕の勘が正しければ彼女は今とても危うい位置にいる

早く助けなければ・・・

そう思うとさらにスピードを早める

足が悲鳴をあげてきた

構ってられるか

僕はなお走りつづけた



――――――――――――――――――――――――――――


私がいるから行けないんだ・・・

私が今、ここに存在するから皆死ぬんだ

もういやだ

こんなに苦しむのならいっそ楽になりたい

お父さん、お母さん・・・ありがとう

こんな疫病神をここまで育ててくれて

そしてごめんね

少し悲しませるかもしれない

でも・・・この現実から逃げたいんだ

これ以上・・・私の好きな人に死んでほしくないんだ・・・



私の家は3階建て

そして今いる部屋は3階

ベランダから飛び降りれば・・・楽になれるかな

下は歩道だから他人には迷惑かけちゃうかな・・・



――――――――――――――――――――――――――――


少し体力が無くなってきたみたいで足が思うように動かなくなってきた

それでも僕はひたすら走る



小石に躓き転んだ

右膝を擦りむき、足首をくじいてしまった

これでは思うように走れない

もう自分の事情なんてどうでもいい

時間はあと30分

これからかっ飛ばせば5分もしないうちに着くだろう

僕はそう思い、羽を伸ばして羽ばたいた



―――――――――――――――――――――――――――――


私の体はすでにベランダに立っていた

「ごめんね・・・お父さん、お母さん・・・・」

目から雫が零れる

やっぱり悲しいよ

でもこうしなければもっと私苦しんでしまう

「カム・・・私もそっちに行くからね・・・罪は償うから・・・」

足を柵に乗っけてその上に立つ

下を見るとやはり高いのでとても怖い

・・・でもこの怖さも一瞬ですむ・・・

痛みも・・・悲しみも・・・・

私は目を閉じて体重の赴くままに飛び降りた



――――――――――――――――――――――――――――――


早く・・・もっと早く!

きっと彼女は自殺をしようとする

天界から彼女を見ていたとき彼女はいった

「カム・・・助けて・・・」と

今考えてみればそうだ

僕の名前を忘れるはずがない

何しろ殻守という名を可愛いといった人だ

誰もこの名前を可愛いとは思わない

つまりそれなりに強い印象が彼女にあったはずだ

それなのに会って話しをすると彼女は忘れているように見せた

それは彼女自身が僕という存在はいないと考えているせいだろう

助けを求めてもそいつはもういない

僕ならそんな悲しみを受け止める自信はない

何しろ中学生なのだ



この下が彼女の家だ

僕は一気に体を急降下させる

彼女の屋根に身をおいて座った

彼女はベランダにいた

「ごめんね・・・お父さん、お母さん・・・・」

何を謝っている

「カム・・・私もそっちに行くからね・・・罪は償うから・・・」

何の罪だ!

君は何か勘違いしている

君は悪くない

彼女は突然飛び降りた

ふざけるな、君が死んだら僕だって悲しむんだ

僕は羽を伸ばし、急降下する

そして落ちていく彼女を抑え、強く抱きしめた

地面にぶつかるぎりぎりのところで体制を立て直しまた高く飛び上がった

そのまま屋根に乗っかり彼女の体を離す

まず分かったのは彼女の驚きの顔だった

目で分かる

貴方は何者?なんで私を助けた?

いや、それ以前に

「カム・・・くん?」

あの時は忘れていた振りをしていたのにね

「ああ、そうだよ。僕の名前は黒鳥 殻守 元界境中学3年 部活は無所属 弁当は決まって屋上で食べる 通称カムだ」

答えた瞬間、亜理紗の表情が一気に崩れた

僕の胸に顔を押し付け、大きな声をだして、泣いた

これだけの悲しみを背負っていたんだな・・・



泣き止んだあとに僕は彼女に話しをした

話の内容は僕の話

実は僕は神で人を理解するために下界に下りたということ

生きている理由

下界で感じたこと

そして何より・・・

「人を好きになってしまった。僕の心はそこまで人に似てしまったらしい」

僕は彼女の隣にすわりながらいった

「人の心に似たくなかったの?」

単純な疑問だろう

「そういうわけじゃない。どちらかというと今はこれでいいと思っている」

「じゃあ・・・何か不満なの?」

「じゃあ単純かつ明快に言わせてもらう」

彼女が疑問の表情を見せる

漫画とかなら頭に?が出ているような表情だ

「僕は君が好きだ」

時間が止まったように無言の時間がさっていく

「君が誰を好きになろうとも構わない。でも僕は君を勝手に好きになってしまった。だから・・・君の意見を聞かせてくれ」

また沈黙の時間が去っていく

「私には小学生のとき、好きな人がいたの」

・・・?

何だその返答は

「その時に感じていたものが恋だと思ってた。でもね、今感じているこれもまた恋だと思ったの」



・・・・



「私もカムが好き」

その返答は予想とは正直違う返答だったと思う

今ここでは答えられないとかそんな感じかと・・・

「本当にそれでいいのか?後悔しないか?僕はあくまで君の本当に好きな人についていってほしいと思う。」

「だから私は本気でカムが好きなの!ほかの誰かに告白されようとも私が本気で好きなのは殻守だけ!」

ありさはそういい残し、屋上からベランダに移り、部屋に入っていった

今・・・殻守って言わなかったか・・?

気のせいか・・・・

僕はその場から逃げるように飛び去っていった

凄く気分が晴れ晴れしい





僕が選んだ道は人としてこの下界で暮らすこと

神としてやるべきことはあるけれど、僕は亜理紗と人としてこの世界にいたい

後悔はしない

これが一番いい選択だからね

はい!

ってことでブログのほうでは13話分をまとめて投稿しました

長いですね

何文字だったかな?

まぁ気にしない気にしない!


これで本を作るとしたら・・・文庫で言うと何ページ分だろ?

20ページいくかいかないかかな?

まぁいいや


楽しんでいただけたでしょうか?

自分でもジャンルがまったくもってわからない小説です

前書きでも書いたように次回作が気になる方はブログのほうを覗いて頂けるとはやいかな?


では、あとがきはこの辺で失礼します (´・ω・)っ旦

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