「好き」の確認
「撤回して。
私のことは、何を言っても良いけれど、
私を愛してくれているファンを、侮辱するのは許せない。
何がおかしいの。
愛じゃない?
しょせん幻想?
昔の私みたい。
昔は私もそう疑ってた。
アイドルの私への「好き」は、
全て嘘なのではないかって。
だから、私は確かめることにしたの。
初期から追い続けてくれている
古参ファンの3人を監禁したわ。
信じてないわね。でも本当よ。
「古参のファンの人だけの為の
プライベートライブ」と言ったら、
拍子抜けするほどあっさり、騙されてくれた。
一人ずつ隔離した部屋で、椅子に縛り付けて
ヘッドホンを付けて、AIの声だけ聞こえるようにした。
バレないようにAIに加工させた文章を、AIに話させたわ。
彼らの目の前の映像に、
AI加工で殴られて血を流している私の写真を次々と映したわ。
ヘッドホンから、わざと音質を悪くした
私の憐れな、助けを求める声も一緒に。
渾身の演技だったわ。
3人は完全に信じてくれた。
普通なら信じない。
わざとらしい「プライベートライブ」に誘われて、
監禁され、そのアイドルが傷つけられる映像や音声が流れる。
ドッキリを疑うのも当然。
普通なら。
でも、驚いてるあなたが証明してるけれど、
私のイメージ、自己演出で作り上げたイメージは
「絶体的純真無垢」
嘘臭いという人々をも、
騙し尽くす天性の技巧。
「あの子が、こんな悪趣味なことをするはずがない」
古参で今まで私を見て来たファンである程、そう思う。
私の蟻地獄にハマった者である程。
分かるでしょう?
今まで騙されていたあなたなら。
後ろから3人を目隠しして、
生爪を剥いだわ。
私がこれ以上殴られないために、
3人は我慢してくれた。
私は3人の愛を感じた。
彼らの悲鳴に感動して涙を流したわ。
長い時間、拷問を続けた。
このために1年間訓練して
体力と腕力を付けてきたことが、実った。
自分のために発しているかと思うと、
彼らの叫び声が、
満員の会場のエールのように聴こえて
胸を打たれたわ。
感動で何度も拷問器具を取る手が震えた。
その時間は、私にとって
彼らとの濃密な
最高の時間だったわ。
そして、最後の時がやって来た。
私の命か、自分の命か。
選択を迫ったの。
今でも、思い出すのが苦しい。
直ぐに、自分の命を投げ出してくれると思った。
それなのに。
2人、自分の命を選んだ。
信じられなかった。
でも、それが真実だった。
彼らは最期に
「お母さん…」
と、他の女の名前を呼んで、死んだ。
灰は燃えるゴミに出したわ。
最後の1人は、
私の命を選んだ。
あの瞬間を、私は一生忘れない。
生まれてきて良かったと、本気で思った。
私は、彼を、
苦しまないよう細心の注意を払って
殺した。
彼の身体は、
バラバラにして腐らないように保管してある。
ほら見て、
今も肌見離さず持っているの。
拷問中の血まみれの彼の写真。
ほら、こっちも。
お守りに入れた彼の髪の毛の一部。
この袋綺麗でしょ。
生爪と頭蓋骨の欠片を入れてるの。
緊張した時や側にいてほしい時に
大切に、かじってる。
彼の鍵で彼の家へ行って
彼の私物を回収したわ。
彼の実家へも行って
彼のアルバムも回収した。
私の家に、彼専用の部屋を作ってあるの。
彼の全てを詰め込んである。
彼の写真も部屋中に貼り付けてある。
ふふっ
恥ずかしい。
どちらが古参ファンか分からないわね。
彼は、最期の時まで、私を愛してくれたわ。
愛は存在するのよ。
あら、大丈夫?
凄く青ざめてる。
信じられないものを見たような目をしてる。
分かるわ。
未だに私だって、信じられない。
でも、これが真実よ。
ちょっと
どこに電話してるの?
そんなに震えて。
他の人にも伝えるの?
恥ずかしい。
でも、まあ
そうね。
誰に聞かれたって恥ずかしくないわ。
だってこれが
真実の愛だから」




