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第51章  指数の名前

 翌週。


 全ユーザーに通知が届いた。


 いつもより長い文章。


 管理センターからの公式通達。


『D-Index評価基準の暫定改訂について』


 教室が静まり返る。


 ユウは、ゆっくりと読み進める。


『従来、D-Indexは危険予測指標として運用してきました。

 しかし観察データに基づき、一部個体差が非攻撃的かつ安定的に存在することが確認されました』


 ミホが息を止める。


『よって、D-Indexを単一の危険値として扱う運用を停止します』


 画面が切り替わる。


 右上の表示。


 《D-Index:04》


 その下に、小さな文字が追加される。


 《Type:Stable》


「……タイプ?」


 アヤが声を漏らす。


 リョウが続きの文章を読む。


『今後、指数は以下の区分で表示されます。


 Stable(安定型)

 Alert(注意型)

 Critical(危険型)』


 教室がざわめく。


「俺のは?」


 ケンタが確認する。


 《D-Index:00》

 《Type:Standard》


「Standard……」


 少しだけ、寂しそうな声。


 ユウの恐竜が、ゆっくり瞬く。


 緑が、やわらかく揺れる。


 《D-Index:04》

 《Type:Stable》


 強制補正の表示はない。


 警告もない。


「危険じゃないってことだよね」


 ミホが言う。


「少なくとも、今はな」


 リョウが静かに答える。


 さらに通知が続く。


『指数の意味は、今後「差異の強度」として再定義されます。

 差異は直ちに危険を意味するものではありません』


 ユウは、その一文を何度も読む。


 差異。


 違い。


 色。


 放課後。


 校庭。


 Bを選んだ恐竜たちが、それぞれ違う動きを見せる。


 円を描く個体。


 地面を軽く叩く個体。


 静かに空を見る個体。


 どれも、Stable。


 遠くで、Standardの恐竜も歩いている。


 均一な動き。


 だが、その足取りがほんの少し揺らぐ。


 ケンタがそれに気づく。


「……動き、違う」


 画面を見る。


 《D-Index:00 → 01》


 《Type:Stable》


「え?」


 思わず声が出る。


 標準化されたはずの恐竜が、

 ほんの少しだけ色を帯びる。


 薄い緑。


 目立たない。


 だが、確かに違う。


「移ったわけじゃない」


 リョウが言う。


「影響し合ってるんだ」


 ユウは、恐竜に触れる。


「消さなくてよかったな」


 恐竜が、はっきりと瞬く。


 肯定の光。


 空は、変わらない。


 管理は続いている。


 指数も消えていない。


 だが、名前が変わった。


 意味が変わった。


 D-Indexは、

 もはや“危険値”ではない。


 違いの強さ。


 多様性の揺らぎ。


 完全な自由ではない。


 だが、完全な抑圧でもない。


 世界は、一段だけ成熟した。

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