表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/52

第48章  選択ログ

 朝のホームルーム。


 前方モニターに、新たな通知が表示された。


『逸脱指数(D-Index)が03以上の個体を保有するリンクユーザーは、本日中に選択を行ってください』


 教室がざわつく。


 ユウの画面。


 《D-Index:04》


 緑は、昨日よりも深い。


 通知の続き。


『選択肢A:標準化プログラム適用(指数を00へ補正)

 選択肢B:観察継続(指数推移を記録)』


「……選ばせるんだ」


 アヤが小さく言う。


「Aなら安全」


 ケンタが言う。


「Bなら……わからない」


 先生が前に立つ。


「これは罰ではありません。管理側は、危険性を判断するためのデータを求めています」


「どちらも正しい選択です」


 だが。


 空気は重い。


 ユウは画面を見つめる。


 恐竜が、静かにこちらを見上げる。


 何も言わない。


 提案も出ない。


「どうしたい?」


 ユウが問う。


 恐竜は、小さく瞬く。


 色が揺れる。


 濃い緑。


 森の色。


 ケンタの画面。


 《D-Index:03》


「俺は……Aにする」


 静かな声。


「消えるの、嫌だけど……消えない保証もない」


 アヤは迷っている。


 ミホも。


 リョウは無言。


 ユウの指が、画面に触れる。


 A。


 B。


 どちらも、簡単に押せる。


 ふと、思い出す。


 沈黙の章。


 干渉しなかった時間。


 恐竜が、何もせず芽を守ったあの日。


「……観察する」


 ユウが言う。


 Bを選択。


 画面が変わる。


 《観察ログ開始》


 数値が表示される。


 色の変化。

 行動パターン。

 自律率。


 恐竜が、一歩近づく。


 色が、少しだけ明るくなる。


「俺も……Bだ」


 リョウが言う。


「測られるなら、最後まで見せる」


 アヤが息を吸う。


「……私も」


 ケンタは、画面を見つめる。


 Aのまま。


 指が震える。


「ごめん」


 そう言って、Aを押す。


 彼の恐竜の色が、ゆっくり薄れていく。


 緑が消える。


 標準色へ。


 指数が00になる。


 ケンタは、目を逸らす。


「……安全だ」


 そう言うが、声は小さい。


 一方。


 Bを選んだ者たちの画面。


 指数がわずかに揺れる。


 《04 → 05》


 赤くはならない。


 ただ、記録される。


 モニターに表示。


『観察対象:5名』


 管理側は、見ている。


 だが、強制はしない。


 まだ。


 放課後。


 校庭。


 Bを選んだ恐竜たちが並ぶ。


 色は違う。


 揺らぎも違う。


「怖くない?」


 ミホが言う。


「怖い」


 ユウは正直に答える。


「でも、消す方がもっと怖い」


 恐竜が、静かに鳴く。


 それは、暴走ではない。


 威嚇でもない。


 ただの存在音。


 遠くで。


 標準化された恐竜が歩く。


 安定している。


 均一。


 安全。


 どちらも、間違いではない。


 だが、世界は分かれ始めた。


 デバイスに新たな表示。


 《選択ログ保存》


 今日の選択は、

 消えない。


 夕陽の中。


 ユウは、恐竜の頭に触れる。


「一緒に、測られよう」


 恐竜の色が、

 さらに深くなる。


 指数が、ゆっくりと動く。


 《05 → 06》


 赤ではない。


 ただ、記録。


 世界は、

 まだ判断していない。


 だが、人間は選んだ。


 安全か、個性か。


 そして選択は、

 ログとして残る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ