第47章 危険値
翌朝。
デバイスの表示が変わっていた。
画面の右上に、
見慣れない数値。
《D-Index:02》
「……なにこれ?」
ケンタが顔をしかめる。
他の画面を見る。
01。
03。
02。
微妙に違う。
「Deviation Index……逸脱指数」
リョウが小さく読む。
「標準からのズレを数値化してる」
恐竜は、
静かに立っている。
だが、
昨日より色がはっきりしている。
緑が濃い。
ピロン。
通知。
《個体差増加傾向を検知しました》
《一定値を超えた場合、自動補正を実行します》
「補正……?」
アヤの声が揺れる。
教室の前方モニターに、
管理センターからのメッセージが表示される。
『アップデート後、一部個体に再び差異が確認されました。
安全確保のため、逸脱指数が05を超えた場合、
強制再初期化を行います』
「再初期化って……」
ミホが息を呑む。
「リセット?」
「個体データの再構築だろうな」
リョウが言う。
「色も、成長履歴も、
全部“標準”に戻す」
ユウは画面を見る。
《D-Index:04》
昨日より上がっている。
恐竜が、
こちらを見上げる。
静かに。
問いかけるように。
「……下げたほうがいいのかな」
ケンタがつぶやく。
カードを取り出す。
標準化カード。
推奨カード。
“安定化用”。
「使えば、下がるはずだ」
誰も止めない。
誰も促さない。
その時。
ユウのデバイスが震える。
《D-Index:05》
赤く点滅。
教室の空気が、
一瞬で重くなる。
恐竜の色が、
さらに濃くなる。
緑が深く、
目が強く光る。
警告音。
《強制補正を開始します》
「待って!」
ユウが叫ぶ。
画面に触れる。
反応はない。
恐竜の足元から、
白い光が立ち上る。
色を削る光。
均一に塗り替える光。
その瞬間。
恐竜が、
一歩前に出る。
光を踏み越える。
白を弾く。
《異常反応》
恐竜は暴れない。
攻撃もしない。
ただ、
色を守る。
「……危険じゃない」
アヤが言う。
「ただ、違うだけ」
ユウは、
標準化カードを握る。
でも、
通さない。
「消さない」
小さく、はっきりと言う。
数秒の静止。
警告音が止まる。
強制補正が中断。
《再評価中》
恐竜は、
ゆっくりと息を吐く。
色は残った。
完全ではない。
でも、消えていない。
画面の数値が変わる。
《D-Index:05 → 03》
「……下がった?」
ミホが驚く。
「抵抗したからじゃない」
リョウが言う。
「暴れなかったからだ」
管理側は、
“危険”を測ろうとしている。
だが。
個体差=危険
という式は、
少しずつ揺らぎ始めている。
恐竜が、
ユウを見つめる。
問いは、
まだ終わらない。
色を守るか。
安全を選ぶか。
教室の空気は、
昨日よりも張り詰めている。
敵はいない。
だが、
価値観はぶつかっている。




