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第43章  もし、わざとなら

 地下通路の調整が終わった翌日。


 教室の空気は、

 どこか落ち着いていた。


 芽は安定し、

 恐竜たちも静かだ。


 ――だからこそ。


 その疑問は、自然に生まれた。


「さ」


 ケンタが、

 何気なく言う。


「もしさ、

 わざと崩したらどうなるんだ?」


 教室が、

 一瞬だけ静まる。


「わざとって……」


 アヤが顔をしかめる。


「実験だよ」


 ケンタは続ける。


「原因が俺たちなら、

 調整できるかどうかも、

 分かるだろ?」


 ユウは、

 すぐに否定できなかった。


 確かに。


 偶然ではなく、

 意図的に行えば――

 限界も見える。


 放課後。


 人目の少ない空き教室。


 ケンタが、

 空間拡張カードを三枚並べる。


「やりすぎない」


「でも、

 少し強めに」


「……一枚で様子見よう」


 ユウが言う。


 だがケンタは、

 二枚目も手に取る。


「大丈夫だって」


 スキャン。


 一枚目。


 恐竜は、

 静かに受け入れる。


 二枚目。


 光が、

 一瞬だけ揺れる。


 画面の端が、

 微かに歪む。


「止めろ」


 リョウが言う。


 ケンタは、

 迷う。


 ――三枚目。


 その瞬間。


 教室の照明が、

 小さく明滅した。


 スマートボードの画面に、

 ノイズが走る。


 デバイスの背景が、

 急激に広がる。


「……やばい」


 ミホが息を呑む。


 恐竜は、

 画面の中央で

 低く唸っている。


 拒否。


 強い拒否。


 空間が、

 無理に広がる。


 背景が薄くなる。


 色が、

 抜ける。


「戻せ!」


 ユウが叫ぶ。


 ケンタは、

 慌てて限定カードを通す。


 一枚。


 光が弱まる。


 二枚目。


 歪みが、

 ゆっくり収まる。


 教室が静まる。


 恐竜は、

 しばらく動かない。


 目が、

 細くなる。


「……ごめん」


 ケンタが言う。


 軽い気持ちだった。


 確かめたかっただけ。


 でも。


 ユウは、

 デバイスを見る。


「崩せる」


「でも、

 すぐには戻らない」


 恐竜が、

 ゆっくりとこちらを見る。


 怒っていない。


 だが、

 距離がある。


「これが、

 “意図”か」


 リョウが静かに言う。


「偶然より、

 重い」


 先生は、

 ログを見て一言だけ言った。


「理解して、

 行ったのですか?」


 誰も、

 答えられない。


 その夜。


 ユウは、

 デバイスを見つめる。


「もし、

 もっと強くやったら?」


 恐竜は、

 小さく光る。


 肯定でも、否定でもない。


 ただ、

 問いを返すように。


 バランスは、

 偶然でも崩れる。


 でも。


 意図的に崩すと、

 何かが変わる。


 空間だけではない。


 信頼。


 距離。


 関係。


 恐竜は、

 力を持っている。


 人間も、

 力を持っている。


 問題は――


 それを、

 試すかどうかだ。

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