第41章 光の暴れ方
芽の模様が示した座標は、
倉庫跡のさらに奥――
使われなくなった地下通路だった。
入り口は半ば崩れ、
普段なら誰も近づかない場所。
だがデバイスは、
はっきりとそこを指している。
「……行くのか」
ケンタが小さく言う。
ユウはうなずいた。
「恐竜が、
ここだって言ってる」
恐竜は画面の中で、
落ち着いている。
だがその光は、
いつもより鋭い。
地下通路へ足を踏み入れた瞬間。
デバイスが一斉に震えた。
「っ……!」
アヤが声を上げる。
画面の恐竜たちが、
一瞬ノイズを帯びる。
拒否でも、要求でもない。
――不安定。
通路の奥。
芽と同じ光が、
壁一面に広がっていた。
だがそれは、
整った模様ではない。
乱れた点滅。
崩れた配置。
制御を失ったデータのように、
暴れている。
「……これ、
同じ芽?」
ミホが息を呑む。
ユウはデバイスを見る。
恐竜が低く唸る。
初めて見る反応だった。
次の瞬間。
通路の照明が、
一斉に明滅する。
スマートフォンが圏外表示に変わる。
デバイスの背景が、
強制的に暗転。
「まずい……!」
リョウが叫ぶ。
光が暴れる。
壁の芽が、
互いに干渉し合い、
渦を作る。
倉庫跡で見た整然とした配置とは違う。
――過剰。
与えすぎた時のノイズと、
似ている。
「……これ、
誰かが無理に重ねた?」
ケンタが言う。
ユウは気づく。
「違う」
「芽同士が、
合わないまま増殖してる」
恐竜が画面の中央へ飛び出す。
強く光る。
提案アイコンが表示される。
だが、いつもと違う。
“単独選択”。
「一枚だけ……?」
ユウは、
自然系カードを取り出す。
恐竜が小さく首を振る。
違う。
空間拡張カード。
――光る。
「これか」
スキャン。
瞬間。
画面が広がる。
暴れていた芽の光が、
一部だけ吸い込まれる。
渦が、
弱まる。
「空間を、
広げた?」
アヤが言う。
「狭いから、
干渉してたのか」
リョウが続ける。
もう一枚。
通そうとした瞬間。
恐竜が強く唸る。
拒否。
今は、
一枚でいい。
数秒後。
壁の光が、
ゆっくり安定する。
完全ではない。
でも、暴れない。
地下通路に、
静けさが戻る。
デバイスの表示も回復する。
恐竜は、
静かにユウを見る。
「……助けられたのか?」
ユウが聞く。
恐竜は、
小さく瞬く。
勝利ではない。
制圧でもない。
――調整。
ミホがつぶやく。
「これ、敵じゃない」
「バランス、
崩れただけ」
ユウは、
芽の残った壁を見る。
整ってはいない。
でも、
呼吸しているように光る。
恐竜は、
ゆっくり通路の奥を見つめる。
まだ先がある。
芽の暴走は、
ここだけではない。
探索は、
発見から理解へ進んだ。
そして今。
初めて知った。
この世界は、
壊すことも、守ることもできる。
恐竜は武器ではない。
――均衡を取る存在だ。
そして人間は、
選ぶ側だ。




