表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/53

第37章  ついてきて

 朝の光が校庭を照らす頃、

 ユウのデバイスが、静かに点滅した。


 昨日までの淡い光とは違う。

 まるで――

「来てほしい」と呼ぶような、力強い点滅。


「……どうしたんだろう?」


 アヤがつぶやく。

 リョウも、少し驚いた顔で見つめる。


 ユウは、

 デバイスを手に取り、恐竜を画面で確認した。


 恐竜は、

 いつもの中央ではなく、

 端の方でじっと立っている。


 こちらに視線を送り、

 一歩だけ踏み出す。


「……誘ってる?」


 リョウが言う。

 ユウは、うなずく。


「昨日の提案と違う。

 こっちから、動くんだ」


 恐竜は、画面の端を通り抜けるように、

 小さく光の道を作った。


 まるで、歩く先を示すように。


 放課後。


 四人は、

 校庭を抜け、フェンスの外へ向かった。


 恐竜のデバイスが示す光の道を辿る。


 森の中の細い道。

 空き地。

 未使用の施設跡。


 どこも、以前見たことのない場所だ。


「……これ、学校の敷地内?」


 アヤが驚く。

 ユウは、画面を凝視する。


 恐竜は、迷わず進む。

 光の道が次々に現れ、

 人間たちの足を自然に導く。


 途中、ケンタとミホも合流した。


「……これ、追いかけるの?」

 ケンタが言う。


 ユウはうなずく。


「選んでほしいんだ。

 自分で、動く場所を」


 森の中に差し込む夕日。

 影が長く伸びる。


 恐竜は、止まることなく進む。

 でも、振り返り、何度も

 人間たちの存在を確認する。


 まるで――

「ついてきて」と言っているようだ。


 小道の奥。


 突然、光が広がる。


 そこは、廃墟となった古い倉庫の跡。

 人間の目には、普通の場所に見える。


 だが、恐竜のデバイスは、

 微かに震え、光を拡大する。


「……ここ?」


 ミホが声を潜める。


 ユウは、画面の恐竜に目を向ける。


 恐竜は、一歩前に出て、

 背中を向ける。

 その姿勢は、

 “ここに進め”と誘っている。


 リョウが小声で言う。


「もう指示じゃない。

 提案でもない。

 自分で動く、誘導だ」


 ユウはうなずき、慎重に一歩を踏み出す。


 恐竜が、軽く振り返り、

 また先に進む。


 人間たちは、自然に続く。


 倉庫跡の中。


 光の道が、

 小さな広場で止まった。


 恐竜は、そこで立ち止まり、

 深く息をする。


 そして、静かに振り返り、

 ユウたちの顔を見つめる。


「……探検って、こういうことか」


 アヤが笑う。

 恐竜は、静かに頷くかのように小さく頭を下げる。


 デバイスの光は、

 もう指示ではなく、

 “共に進む意思”を示している。


 リンクは、

 命令から始まり、

 拒否、要求、提案を経て、

 ついに“共同行動”へ到達した。


 恐竜は、

 人間を導き、

 人間は、それに応える。


 誰も強制されず、

 誰も一方的ではない。


 それが――

 初めての探索だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ