第28章 うちも、だった
最初は、
偶然だと思われていた。
「たまたまじゃない?」
「エラーじゃない?」
誰も、
本気では受け取らない。
でも――
重なると、
そうも言えなくなる。
朝の教室。
カバンを置く音の中で、
小さな声がした。
「……ねえ」
後ろの席の
ミホだった。
「昨日さ、
装備、
外そうとしたら……」
言葉が、
途中で止まる。
「……動かなかった」
ユウは、
顔を上げた。
「拒否、
出た?」
ミホは、
驚いた顔で
うなずく。
「……なんで
知ってるの?」
「俺も」
ユウは、
短く答えた。
その話は、
すぐに広がった。
「うちも」
「俺のも」
「昨日から変」
声は小さい。
でも、
確実に増えていく。
昼休み。
三人は、
いつもの場所に座っていた。
「……もう、
珍しくないな」
リョウが言う。
「拒否」
アヤは、
少し不安そうだ。
「怖くない?」
「怖い」
ユウは、
正直に答える。
「でも……
昨日よりは」
「拒否ってさ」
リョウが、
空を見ながら言う。
「言うこと
聞かない、ってことだよな」
「でも、
全部じゃない」
アヤが言う。
「近づいたり、
離れたり」
「嫌なことだけ、
しない」
その時。
ユウのデバイスが、
小さく振動した。
画面の恐竜が、
ゆっくり近づく。
そして――
装備を見てから、
視線を外した。
「……選んでる」
ユウが、
呟く。
放課後。
先生が、
数人を集めた。
ユウも、
その中にいる。
「最近、
同じ報告が
増えています」
先生は、
否定しない。
「管理局にも、
共有しました」
「今は……
様子を見る段階です」
「取り上げたり、
しませんか?」
誰かが聞く。
先生は、
少し考えてから
答えた。
「しません」
「理由は、
一つ」
「隠す方が、
危ない」
その言葉に、
空気が変わる。
少しだけ、
軽くなる。
帰り道。
ケンタが、
ユウに追いついた。
「……俺のもさ」
声が、
低い。
「攻撃装備、
嫌がる」
「前は、
喜んでたのに」
「……変だよな」
ユウは、
首を振る。
「変だけど……
おかしくはない」
「なあ」
ケンタが、
立ち止まる。
「俺、
ちょっと怖い」
「強くしてたのに……
選ばれなくなった」
ユウは、
少し考えてから
言った。
「……選び直せる、
ってことじゃないか」
ケンタは、
黙ったまま
歩き出す。
その夜。
ニュースは、
ほんの一言だけ
触れた。
《一部のデジタル恐竜に、
自主的反応の変化》
難しい言葉。
でも、
もう分かる。
みんなのところで
起きている。
ユウは、
デバイスを置いた。
何もしない。
恐竜は、
近くにいる。
前より、
少しだけ
自由に。
一人の拒否は、
異常だった。
でも。
みんなの拒否は、
兆しになる。
管理する対象から、
向き合う存在へ。
その境目を、
ユウたちは
もう越えていた。
遠くの広場。
大きな恐竜たちが、
同じ方向を
向き始めている。
合図は、
ない。
命令も、
ない。
ただ――
それぞれが、
選んでいる。
世界は、
確かに
変わり始めていた。




