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第27章  しない、という答え

 それは、

 放課後のことだった。


 特別な日じゃない。


 宿題があって、

 夕方には暗くなる。


 いつも通りの一日。


 ユウは、

 自分の部屋で

 デバイスを見ていた。


「……そろそろ、

 外せるかな」


 あの、

 データクロー。


 ずっと付けたままの

 簡易装備。


 恐竜の性格には、

 合っていない。


 それは、

 分かっている。


 解除条件は、

 ほぼ満たしていた。


 安定度。

 リンク率。

 経過時間。


 あと一つ。


 本人の反応。


「……お願い、

 してみるか」


 ユウは、

 デバイスを

 そっと持つ。


「外すよ」


 操作。


 解除コマンド。


 画面が、

 一瞬光る。


 だが――

 何も起きない。


 《待機中》


「……あれ?」


 もう一度。


 同じ表示。


 恐竜は、

 画面の端にいる。


 こちらを、

 見ていない。


「……どうした?」


 ユウの声が、

 少しだけ

 揺れる。


 命令は、

 正しい。


 条件も、

 満たしている。


 なのに――


 恐竜は、

 動かない。


 その時。


 画面に、

 見慣れない表示が

 一行だけ出た。


 《拒否》


 短い。

 説明はない。


「……え」


 声が、

 小さく漏れる。


 拒否?


 エラーじゃない。


 バグでもない。


 拒否。


 ユウは、

 しばらく

 何もできなかった。


 怒りは、

 ない。


 怖さも、

 少ない。


 ただ――

 戸惑い。


「……なんで?」


 恐竜は、

 ゆっくり振り向いた。


 画面の中央。


 目が合う。


 でも、

 近づかない。


「……外したくない?」


 問いかけ。


 もちろん、

 返事はない。


 でも――

 次の動きがあった。


 恐竜が、

 クローを

 一度だけ見てから、

 ユウを見る。


 そして、

 止まる。


「……守り?」


 ふと、

 思う。


 この装備は、

 強化用だ。


 でも――

 守られていたのは、

 どっちだ?


 昨日の夜。


 家の外で、

 通信障害があった。


 デバイスが、

 一瞬だけ

 不安定になった。


 その時、

 恐竜は――

 動かなかった。


 暴走も、

 しなかった。


「……あ」


 ユウは、

 小さく息を吸う。


「まだ、

 不安なんだ」


 自分が。


 環境が。


 この世界が。


 ユウは、

 解除操作を

 やめた。


「……分かった」


 言葉にする。


「今日は、

 やめる」


 その瞬間。


 恐竜が、

 一歩、

 近づいた。


 次の日。


 学校で、

 この話をした。


「拒否!?」


 リョウが、

 声を上げる。


「それ……

 ヤバくない?」


 アヤは、

 静かだ。


「……でも」


 少し考えてから

 言う。


「ちゃんと、

 理由がありそう」


「命令、

 聞かないってさ」


 リョウが言う。


「それ、

 怖くない?」


 ユウは、

 首を振った。


「怖いけど……」


「全部、

 思い通りの方が

 嫌だ」


 昼休み。


 三人は、

 校庭の端で

 話していた。


「先生に、

 言う?」


 アヤが聞く。


「……言う」


 ユウは、

 即答した。


「隠すの、

 違う」


 放課後。


 先生は、

 しばらく

 黙って聞いていた。


「……拒否、か」


 難しい顔。


 でも、

 否定しない。


「それは、

 重要な情報だね」


「怖かった?」


 ユウは、

 少し考える。


「……はい」


「でも、

 嫌じゃなかった」


 先生は、

 うなずいた。


「なら、

 今はそれでいい」


「言うことを聞かない、

 =危険、

 じゃない」


「考える余地が、

 生まれたってことだ」


 帰り道。


 ユウは、

 デバイスを見る。


 恐竜は、

 静かだ。


 でも――

 前より近い。


 命令しない。


 従わせない。


 代わりに、

 待つ。


 それは、

 弱さかもしれない。


 でも――

 関係は、

 確実に変わった。


 遠くの広場で、

 大きな恐竜が

 一度だけ立ち止まる。


 進むか、

 止まるか。


 誰にも、

 決められない。


 世界は、

 そういう段階に

 入っていた。

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