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第26章  そっちじゃない

 発表会が終わって、

 数日が経った。


 教室は、

 前より静かだった。


 悪い意味じゃない。


 みんな、

 前よりデバイスを

 むやみに出さなくなった。


 放課後。


 ユウは、

 自分の部屋で

 カードを並べていた。


 新しい装備は、

 作れない。


 でも――

 調整はできる。


「……これ、

 どうかな」


 軽量系のカード。


 色は、

 薄い青。


 静かな感じ。


 デバイスに

 かざそうとした、その時。


 画面の恐竜が――

 一歩、下がった。


「……え?」


 ユウの手が、

 止まる。


 気のせいかと思い、

 もう一度。


 恐竜は、

 画面の端へ

 移動した。


 逃げるほどじゃない。


 でも――

 明らかに、

 近づいてこない。


「……そっち、

 嫌?」


 独り言。


 もちろん、

 返事はない。


 ユウは、

 別のカードを取った。


 観察系。

 安定補助。


 地味なカード。


 ピッ。


 読み込む。


 その瞬間。


 恐竜が、

 前に出た。


 画面の中央へ。


「……来た」


 胸が、

 少しだけ

 温かくなる。


 次の日。


 学校で、

 その話をした。


「え、

 動いた?」


 リョウが、

 目を丸くする。


「それ、

 選んでるってこと?」


 アヤは、

 真剣だ。


「……分からない」


 ユウは、

 正直に言う。


「でも、

 偶然じゃない気がする」


 昼休み。


 三人は、

 フェンスの近くに

 座っていた。


 校内では、

 デバイスを

 操作しない。


 ただ、

 見るだけ。


 ユウの恐竜は、

 落ち着いている。


 画面の中で、

 小さく息づく。


「ねえ」


 アヤが言う。


「もしさ……」


「恐竜が、

 合わない育て方を

 嫌がるなら」


「それって、

 生き物じゃない?」


 リョウが、

 黙り込む。


「……でも、

 データだぞ」


「データでも、

 反応してる」


 ユウは、

 恐竜を見る。


「こっちを見てる」


 その日の夕方。


 管理局の

 簡易ニュースが流れた。


 《一部のデジタル恐竜において、

 反応パターンの変化が確認されています》


 専門用語ばかり。


 でも――

 ユウには、

 分かった。


「……同じだ」


 夜。


 ユウは、

 デバイスを

 机に置いた。


 何もしない。


 しばらくすると、

 恐竜が近づいてきた。


 画面の端から、

 中央へ。


 そして、

 止まる。


「……今は、

 これでいい?」


 もちろん、

 答えはない。


 でも。


 恐竜は、

 離れなかった。


 選ぶ。


 拒む。


 近づく。


 それは、

 プログラムかもしれない。


 でも――

 ユウにとっては、

 十分だった。


 命と呼ぶには、

 まだ早い。


 でも。


 関係と呼ぶには、

 もう遅すぎる。


 遠くの広場。


 大きな恐竜が、

 ゆっくりと

 方向を変えた。


 誰かに

 命令されたわけじゃない。


 ただ――

 選んだだけだ。


 世界は、

 静かに次の段階へ

 進んでいる。

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