第25章 見せる、ということ
そのお知らせは、
放課後の放送で流れた。
「デジタル恐竜の
育成・観察発表会を行います」
教室が、
ざわっとする。
「バトルじゃありません」
放送委員の声が、
はっきり言った。
「育て方、
気づいたこと、
工夫した点を
発表してください」
「……発表?」
リョウが、
間の抜けた声を出す。
「無理」
「人前で?」
アヤは、
少し考えている。
「でも……
面白そう」
ユウは、
黙って
デバイスを見た。
画面の恐竜は、
相変わらず
静かだ。
準備期間は、
一週間。
家庭内での
装備調整はOK。
ただし、
新規生成は禁止。
「え、
じゃあ差、
埋まらなくない?」
誰かが言う。
先生は、
首を振った。
「差を埋める会じゃありません」
「違いを
知る会です」
放課後。
三人は、
ユウの部屋に集まった。
「何、
発表する?」
リョウが聞く。
「強さ、
言えないし」
「装備も、
微妙だし」
ユウは、
少し考えてから
言った。
「……失敗」
「え?」
「暴走しかけた話」
アヤが、
目を丸くする。
「それ、
恥ずかしくない?」
「でも、
一番覚えてる」
「それに……」
ユウは、
画面の恐竜を見る。
「あれがあったから、
今がある」
リョウは、
少し黙ってから
うなずいた。
「……それ、
いいかも」
発表当日。
体育館。
簡易スクリーンに、
デバイスの画面が映される。
一人ずつ、
前に出る。
装備自慢。
レア進化。
派手な成長。
拍手が、
起きる。
ケンタの番。
「最初、
強くすることばっか
考えてました」
画面には、
あのツノ装備。
「でも、
暴走して……」
ざわっ、と
空気が動く。
「今は、
軽い装備に
戻してます」
恐竜は、
落ち着いていた。
拍手が、
前より長い。
そして――
ユウの番。
少し、
緊張する。
「……最初、
間違えました」
正直に言う。
「バーコード」
笑い声が、
少しだけ出る。
「暴走して……
怖かった」
画面の恐竜が、
小さく動く。
「でも、
ちゃんと戻った」
「カードも、
育て方も」
「今は、
強くないです」
ユウは、
はっきり言った。
「でも……」
少し、
間を置く。
「ちゃんと、
目が合います」
一瞬、
静かになる。
そして、
拍手。
大きくはない。
でも、
途切れない。
発表が終わる。
先生は、
最後に言った。
「同じ恐竜は、
一体もありません」
「それは、
みんなが
違う選択をしたからです」
帰り道。
「……勝ち負け、
なかったな」
リョウが言う。
「でも、
なんか……」
「楽しかった」
アヤが、
笑う。
ユウは、
空を見る。
少し、
夕焼け。
遠くの広場で、
大きな恐竜が
じっと立っている。
今日は、
動かない。
まるで――
見ているみたいだった。
強さを、
見せなくてもいい。
結果だけが、
すべてじゃない。
選んだ理由と、
向き合った時間。
それを見せる場が、
確かにあった。
そして、
ユウは思う。
この遊びは、
続けられる。
ちゃんと。




