第24章 ルールは、守るためにある
朝。
教室に入ると、
黒板の横に
紙が貼られていた。
《デジタル恐竜デバイス
使用に関する学校の指針》
いつもより、
字が多い。
それだけで、
空気が少し重くなった。
担任の先生は、
いつもより
ゆっくり話した。
「禁止ではありません」
その言葉に、
少しだけ
空気が緩む。
「ただし、
条件があります」
先生は、
紙を指さす。
校内でのバトルは禁止
装備生成は家庭内のみ
暴走時は即報告
教員の指示に従うこと
「守れない場合は、
一時預かりもあります」
教室が、
しん、と静まった。
休み時間。
「思ったより、
厳しくない?」
リョウが、
小声で言う。
「でも……
校内バトル禁止だよ」
アヤが答える。
「昨日の、
もうアウトじゃん」
ユウは、
何も言わなかった。
デバイスは、
ランドセルの中。
今日は、
出さない。
昼休み。
数人が、
不満そうに集まっていた。
「校庭で
ちょっとやるくらい、
いいじゃん」
「危なくなかったし」
ケンタも、
黙って聞いている。
「……先生たち、
分かってないよな」
誰かが言った。
「分かってるから、
決めたんだと思う」
ユウが、
口を開いた。
視線が、
集まる。
「昨日、
止まらなかっただろ」
「カードなかったら、
どうなってた?」
一瞬、
沈黙。
「……でも」
誰かが言いかけて、
止まる。
放課後。
フェンスの前には、
誰もいなかった。
いつも集まっていた場所。
少しだけ、
広く感じる。
「……つまんないな」
リョウが、
正直に言う。
「うん」
アヤも、
否定しない。
ユウは、
デバイスを
取り出した。
画面の恐竜が、
静かにこちらを見る。
「さ」
ユウが言う。
「バトルしないなら……
別のこと、
やらない?」
「別の?」
「装備、
外す条件とか」
「性格、
戻す方法とか」
アヤの目が、
少しだけ
明るくなる。
「それ、
先生に聞いても
いいかも」
その時。
校舎の中から、
先生が出てきた。
「……何してる?」
一瞬、
全員が固まる。
「えっと……
話してました」
ユウは、
正直に答える。
「恐竜の、
育て方」
先生は、
少し驚いた顔をした。
「……そう」
それだけ言って、
しばらく考える。
「ルールってね」
先生は、
静かに言った。
「守るためにある」
「でも……」
少し間を置く。
「考えるのを
やめるためじゃない」
ユウたちは、
顔を上げた。
「分からないことがあったら、
聞いていい」
「勝手にやるより、
ずっといい」
その言葉は、
命令じゃなかった。
許可でもない。
でも――
ちゃんと、
届いた。
帰り道。
「……ちょっと、
安心したな」
リョウが言う。
「全部、
ダメって言われるかと
思ってた」
アヤが、
うなずく。
「ルールあるけど……
考えていいんだ」
ユウは、
デバイスを
ぎゅっと握った。
強さを、
どう使うか。
遊びを、
どこまで広げるか。
答えは、
まだない。
でも――
決めるのは、
自分たちだ。
そう思えたことが、
今日一番の変化だった。
遠くの広場で、
大きな恐竜が
低く鳴いた。
それは、
警告ではない。
ただの、
存在の音。
世界は、
まだ静かだ。
けれど――
確実に、
次の段階へ
進み始めていた。




