表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/53

第23章  やっていいって、誰が言った?

 その話は、

 正式に決まったわけじゃなかった。


 でも――

 もう、みんな知っていた。


「放課後なら、

 ちょっとくらい

 バトルしてもいいらしい」


 誰が言い出したのか、

 分からない。


 先生でもない。

 管理局でもない。


 たぶん、

 誰かの“噂”だ。


 校庭の端。


 フェンスの外に近い、

 使われなくなったスペース。


 そこに、

 数人が集まっていた。


 デバイスを手に。


「ケンタ、

 やろうぜ」


 声がかかる。


 ケンタは、

 少し迷ってから

 うなずいた。


「……短時間な」


「了解!」


 ユウたちは、

 少し離れたところで

 見ていた。


「……止めた方が、

 いいかな」


 アヤが言う。


「止めても、

 やると思う」


 リョウが答える。


「だったら……

 見てた方がいい」


 ユウも、

 同じ気持ちだった。


 ピッ。


 バトルモード。


 簡易表示。


 ルールは、

 シンプル。


 相手をひるませたら勝ち。

 完全破壊は、なし。


 ……たぶん。


 ケンタの恐竜は、

 ツノを構えた。


 対する相手は、

 軽そうな脚装備。


 速い。


 最初の一撃は、

 空を切った。


「おおっ!」


 歓声。


 次の瞬間、

 ツノがかすめる。


 相手の恐竜が、

 よろけた。


「いけ!」


 声が上がる。


 だが。


 ケンタのデバイスが、

 一瞬、遅れた。


 操作と反応が、

 合っていない。


「……あ」


 ユウは、

 気づいた。


「リンク、

 重い」


 攻撃系を

 重ねすぎている。


 恐竜の動きが、

 荒くなる。


「ちょ、

 止まれ!」


 ケンタが叫ぶ。


 だが、

 恐竜は

 前に出た。


 地面を蹴り、

 想定より

 強い衝撃。


 相手の恐竜が、

 大きく弾かれる。


 画面に、

 赤い警告。


 《過剰出力》


「ヤバい!」


 誰かが叫ぶ。


 ユウは、

 迷わなかった。


 自分のデバイスを

 前に出す。


「アヤ、

 補助カード!」


「分かった!」


 リョウが、

 周囲を見る。


「人、

 呼ぶなよ!」


 ピッ、ピッ。


 二枚のカード。


 リンクが、

 一瞬だけ

 安定する。


 ケンタの恐竜が、

 足を止めた。


 ツノが、

 ゆっくり下がる。


 相手の恐竜も、

 立ち上がった。


 バトルは、

 自然に終わった。


 しばらく、

 誰も話さなかった。


 勝ったとか、

 負けたとか。


 そんな空気じゃない。


「……ごめん」


 ケンタが言う。


「強くしすぎた」


 相手の子が、

 首を振る。


「俺も、

 止めなかった」


 その日の帰り。


 ユウたちは、

 三人で歩いた。


「……バトル、

 楽しいけど」


 リョウが言う。


「ちゃんと

 決めないと

 ダメだな」


 アヤが、

 うなずく。


「時間とか」

「装備とか」

「誰が見てるか、とか」


 ユウは、

 デバイスを見下ろした。


 自分の恐竜は、

 静かだ。


 まだ、

 バトル装備はない。


 でも――

 リンクは安定している。


「……勝つだけなら、

 簡単だ」


 小さく呟く。


「でも……

 続ける方が、

 難しい」


 その夜。


 校内掲示板に、

 紙が一枚貼られた。


 《デジタルデバイスの

 校内使用について》


 内容は、

 まだ曖昧。


 だが――

 大人も、

 気づき始めている。


 遊びが、

 遊びじゃなくなりかけていることに。


 恐竜は、

 人が決めたルールを

 知らない。


 勝ちも、

 負けも。


 知っているのは、

 リンクと、

 装備と、

 選択の結果だけだ。


 だからこそ。


 誰が決めるかが、

 大事になる。


 そのことを、

 ユウたちは

 初めて意識し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ