第21章 できちゃった装備
放課後。
ユウの部屋には、
三人が集まっていた。
机の上には、
デジタル恐竜卵デバイス。
画面の中で、
小さな恐竜が
ちょろちょろ動いている。
「……落ち着きないな」
リョウが言う。
「昨日の、
バーコードのせいだと思う」
アヤが答える。
「ちょっと、
警戒心上がってる」
ユウは、
カードケースを開いた。
中には、
集めたカード。
食べ物。
道具。
意味が分からない模様。
「ねえ……」
アヤが、
一枚のカードを指さす。
「これと、
これ、
一緒に使ったらどうなると思う?」
「……分からん」
リョウが首を振る。
「前に先生、
“組み合わせ”って言ってたよな」
ユウは、
少し考える。
「試すだけなら……」
ピッ。
一枚目のカード。
画面に、
小さなエフェクト。
ピッ。
二枚目。
今度は、
見慣れない音が鳴った。
《データ融合中》
「……え?」
三人が、
同時に声を上げる。
恐竜の前足が、
光に包まれる。
次の瞬間――
「……ツメ?」
リョウが、
目を見開く。
小さいけれど、
はっきりした形の
デジタルの爪。
「ちょ、
装備できた!?」
アヤが、
慌てて画面を見る。
《簡易装備:データクロー》
《耐久:低》
《影響:攻撃+/気性−》
「……気性、
下がってる?」
ユウの声が、
少し硬くなる。
恐竜が、
画面の中で
シャッ、と動いた。
さっきより、
素早い。
「ヤバいって、
これ」
リョウが言う。
「強くなるけど……
扱いにくくなる」
恐竜は、
ユウを見て、
一瞬だけ唸った。
昨日より、
距離がある。
「……外せる?」
アヤが聞く。
ユウは、
画面を操作する。
だが――
《解除条件未達》
「……条件?」
胸が、
少しだけ
ざわっとする。
「これ……
ちゃんと育てないと、
外れないやつだ」
ユウは、
ゆっくり言った。
「適当に
強くしたら、
ダメなんだ」
三人は、
顔を見合わせる。
ちょっと、
楽しくない沈黙。
恐竜は、
しばらくすると
動きを止めた。
そして、
小さく鳴く。
怒っている、
というより。
落ち着けない。
「……ごめん」
ユウは、
画面に向かって
小さく言った。
「ちゃんと、
考える」
その時。
デバイスの隅に、
小さな表示が出た。
《成長ルート更新》
《性格:慎重→警戒》
《適正装備:軽量系》
「……え」
アヤが、
息を呑む。
「性格で、
装備の向き不向きが
変わるんだ」
リョウが、
唇を噛む。
「じゃあ……
何でも付ければ
いいわけじゃない」
ユウは、
データクローを見つめた。
強い。
便利。
でも――
今の恐竜には、
合ってない。
「……これさ」
ユウは、
二人を見る。
「遊びじゃないな」
アヤが、
静かに頷いた。
「うん」
「ちゃんと、
育てるやつだ」
夕方。
三人は、
カードを整理していた。
「攻撃系は、
一旦やめよう」
「安心するやつ、
先だな」
恐竜は、
画面の中で
丸くなっている。
さっきより、
少しだけ
近くなった気がした。
その頃。
遠くの広場で、
大きな恐竜が
首を動かした。
管理局のモニターが、
一瞬だけ揺れる。
だが――
それは、
誰も知らない。
今は、
小さな爪の話の方が
ずっと大事だった。
強くできる。
でも、
強くしすぎると
ズレる。
装備は、
力じゃない。
関係だ。
ユウは、
そのことを
初めて実感していた。
そして――
この小さな選択が、
いつか
大きな違いになることを。
まだ、
知らなかった。




