表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寝取られジョーンのヒモ生活  作者: 無夜
寝取られジョーンの人生
8/15

冬の夜

 窓の外は荒れていて、戸板でがっちり覆っている。

 ごうごう音がする。

 港が凍り付くわけでもないのに、冬はどうしても、船の行き来はなくなるのが、この季節風のせい。

 すきま風が冷たくて、夜はひっつく。

 暖炉はあるが、薪がおしい。小さいから、部屋が暖まらない。せめて煮炊きが出来ればいいのだが、せいぜい薬缶をかけるぐらい。

「ねー、もういっぱい、知り合ったよね。初めて会ってから130日過ぎたよ」

 にゃんにゃんっとジョーンにすり寄って、仕事のない冬の夜に誘いをかけると。

「カイが来てくれてから、毎日が楽しいよ。ありがとう」

 と、返ってきた。

 その言葉は、それはそれでうれしいだけれどもっ。

「そろそろ 夜の、アレソレしない? 男の姿がなんなら、女の子になるしっ」

 心に引っかかっていたマーリオも、危険を脱して、歩く練習をし始めていて。

 改めて見舞いにいって、ほっとしながら、家に帰ってきた夜だった。

「カイとのそれのネックは、年齢だから。男女とかでなく」

「でも、ほら、魔界に帰ると、僕は弱い野良の平悪魔だから、強い悪魔にアレソレされてしまうかも。ああ、初めては、ジョーンが良かったなぁ、あの甲斐性なしめ、とか思う未来、嫌じゃない?」

「いやーな、詰め方してきたな」

 人間の姿のカイを、猫の時とあんまり変わらない撫で方をしながら、

「じゃ、キスを」

「もうちょっと先に進みたいー」

「でも、会ってまだ100日じゃ・・・」

「130日だってば。4ヵ月半もたったの。人間、あっさり死にかけるくせに、悠長だね」

 キスは寝込み襲って、勝手にしているから、今更なので。

 もう、早く、最後までしたい。

魔界に戻って強い悪魔に蹂躙される可能性もあるのは確かで。

 最初は、絶対に乱暴なことをしてこないだろうジョーンが良い。

「それはともかく。とりあえず、キスから」

 そっと顔を包んで、思いの外スマートに軽く、ちゅっと唇をついばんできた。

 とたんに、心臓に火が散った。

「ふぁっ?」

「ほら、まだ、お子様だから」

「ちがう」


 階級が、上がったのだ。


 騎士爵


 基本寿命120年

 ここまでくると、爵位持ちに蹂躙されにくくなる。悪魔貴族にお抱えされることもある。

 ただ野良も多い。



 ジョーンが死んで。

 ジョーンを食べて。

 魔界に戻って。

 100年以上生があって。


 100年以上、ジョーンなしで

 生きる?


 うぇ、なんか、それ、今、想像できない。



「もう、いいもん。いっぱい、キスしてくれたら、許してあげる。舌入れるのも、して」

「んー、それはお子様にしていいキスじゃない」

「むぅー」


 ゆっくり、じゃれ合いながら。

 年が変わる前に、舌を絡めるキスをお互いにしあって。

 年が明けて。

 前に紹介された丘の上のばあちゃんの、あの人は指が曲がって痛い、って言っていたよと教えられて出向き、それを治した時に、新品のシーツとカバーと毛布をもらった。反物とか、服に靴、いろいろくれた。良いビネガーやお酒も。

初夜だから、その新品のシーツを二人でベッドに敷いた。

 そのお酒を、夕食の時に二人で飲んだ。

 それから、二人でなんとも照れて、つられながらへらへら笑って、ゆっくりと抱き合った。


「待たせすぎだよ。もー、ジョーンだからしょうがないけど。ジョーンだから、待ったけど」

「いやーもう、初めてだっていうし。種族違うって言われても、二歳じゃ、手を出しにくいよ、本当に」

何度も何度も、角にキスを繰り返され。

「んぅ、角、ほとんど皮膚の下だから」

「え、あるよ? 小さいけど」

「小さい、言うな」

「ん、可愛い。巻き貝みたいな、ぐるりんって巻いてる」

 服を乱されていくと、カイは自分の身の、人間とは違う場所を気にした。

「うー、踵、ある方が良い?」

 靴や靴下でごまかしているが、猫科の生き物が本性のカイは、踵がない。というか、足裏が人間の思うような常識以上に、長い。

 踵をぐっとあげて、つま先で常に歩いているようなものだ。

 足の指もぽてっとしていて、肉球をなんとか人の指に見せている感じである。

「仔猫なのは知っているから、特に?」

 ジョーン、それ、豹だから。

「見慣れると、このあんよ、可愛いけどね」

「子供扱いとか、ジョーンのくせに 生意気」

「うんうん、可愛い」


 可愛いと言われるのも、うれしいけれど。

 欲しい言葉は別で。

 とはいえ、嘘のわかる能力が恨めしい。

 ねだって、言ってくれた言葉が嘘だったら、それはきっと悲しい。

 だから。


 好き

 とか

 愛してる

 とか


 自分から言って欲しいなぁ。

 と、待っていたら、カイは気が付いた。

 あ、僕も言ってないや、と。

 尻尾を振り回して、落ち着きなく、どのタイミングで言おうと悩むと。

「言っておきたいことがあったんだ」

 と、ジョーンからも、来た。

 すでにお互い全裸で、ベッドの中で。

 ここで重たいこと言われて、するのなしになったら、怖いなぁ、と珍しくカイは怖じ気づいた。

 だが、そういう意地悪する男ではないのも、知っていた。

「なに?」

「マーリオが海に落ちたとき」

「うん」

「ショックで」

「うん」

「ただもうカイの顔が見たくて。もう大人で、男なのに、情けないけど、震え止まらなくて」

「そんなの」

 遮りかけて、飲み込む。

 いろんな言葉が出かけたけれど、それはジョーンの全部の話を、聞いてからだ。

「怖かったね、と言って貰えて。抱きしめて貰えたとき。すごくほっとして」


 与えられる包容とぬくもりの心強さ。そして心の奥から突き上げて感情。


「ああ、カイのことを愛してる、って思った」




 その言葉はカイの全身を麻痺させるような、どろどろの甘さで。

 こんな味を知ったら、

 二度と 

 もう二度と


 手放せないじゃないか。


「僕も、好き 愛してる」


 ちゃんと深く繋がりながら、苦しくないよう口はついばむだけのキスを繰り返され、尻尾がびたびたとシーツを叩くと、

「きつい?」

 と、確認され。

体を、ジョーンに合わせて作り替えているから、問題ないけれど。

 甘えたら、たぶん、甘やかしてくれるだろうから。

「少し、ゆっくりしてくれたら、うれしい」

「ああ、ごめんな?」

 しばらく、入ったまま動かないでいてくれて。

 我慢強いなぁと驚いて、ただ大きくな吐息が落ちてきて。

 ゆっくり慎重に、傷つけないように、と動く。

 熱がどろどろと体から沸いてきて。

 心臓にどぱどば血流が来る。もしくは送り出してる。

 階級が上がるとき、のように。

 もしくはそれ以上の激しさで、何かがはぜてる。

 ごとんっ

 と、ベッドの真横に何かが落ちた音がして、ジョーンはぴたっと身を止めた。

「泥棒?」

 落ちたりする物がない部屋だ。

「あ、ちが・・・。気持ちよすぎて、魔法でしまっておいた道具がうっかり出ちゃったの」

「本当に気持ちよくて?」

 痛かったり、苦しかったりじゃなく?

 そういって、ジョーンが気遣うから、

「止めないで。最後までするにゃん。初夜なの、初めて、なのっ。三回はするんにゃぁぁ」

「初めてだから、一度にしておこう、と思ったんだが」

「抜かず3発にゃのぉ」

「どこでそんな悪いネタ仕入れてきてるんだ」

 竈と洗濯場で、年上の奥様方から、赤裸々に。立派に耳年増に育ったカイであった。

「あー、もう。にゃんにゃん言うとき、あざとくて 我が儘で かわいい」

 ちゅっちゅっと、こめかみあたりにキスを浴びせられて、カイはふにゃふにゃと笑った。

 あー、、準男爵すっ飛ばして、男爵になったっぽい。領地杖、だっけ。あれ、出たけれど。

 今は、ジョーンとの初夜が大事っ。


 たとえ大嵐がきても、完遂する覚悟である。


 ちなみに、抜かずに二度してもらい、ちょっと休んでもう一回。

 その後、労るように口で後戯をたっぷりされて、カイはどろどろになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ