え?
久々に眠れそうな感覚。
カイγーンは領地の自分の家に戻っていた。
ジョーンが寝ている、二人の寝室の前。
ドアを開ければ、薄いが影しか見せぬ絹っぽい天幕。最近、でかい毒蛾が領地内に、それもイライザの茨に産卵していった。慈悲深いジョーンが、せめて雌雄一匹ずつは残してやろうというので、ムーщが葉を大きくして養って、腕ぐらいの幼虫になって、繭をこさえて、羽化して出て行くようになった。二匹以外はレティシア(兎)が食べている。
その繭が絹っぽくなる。洗濯しても駄目にならない丈夫で手触り肌触りが良い。
領地を締め切っていても、入ってこられるらしい。毒の森に住む毒蛾である。
するりと天蓋の幕に入り、ジョーンの腕に潜り込もうと、服を脱ぎ捨て、布団をめくった。
レティシアがいた。ジョーンにぴたっとくっついて寝ていた。
そして、この兎はびくっとして目を開け、うわ、帰ってきた、という顔をした。
いつもなら、猫になって、兎をどかす大人げないカイγーンなのだが。
噛まない兎は良い兎だと思ったので、今日は許した。
レティシアとは反対側に潜り込む。
人型のままで。
ジョーンは寝ぼけた顔で、
「ん?」
と、声を出したが、カイγーンをするっと抱きしめてまた眠った。
そして、翌日。昼過ぎ。
カイγーンは皆を集めた。
濃厚なオレンジ色で、派手な刺繍のワンピースを着用している。金や銀の飾りが映える色味なので、女装しての外着にはこの色が多かった。伯爵になってからは紳士服ばかりだったけど。
今日は体を締め付けたり、気を散らす要素のある服は着たくなかった。
「弱弱な男どもっ。聞くが良い。ついに、完全女体の秘技を僕は手に入れたっ」
今日は変にテンション高いなー
久々に寝られたらしいよ
ああ、ずっと寝てなかったもんな、怠惰なのに
という理解が麦穂が風に揺らくように広がっていく。
ちなみに、屋敷と娼館と実家に、同時中継されている。鳥系悪魔が転移魔法陣をつなぐ要領で、壁に映像、そして巻いた貝殻から音声をつないでいる。疲れるから3時間以内で終わらせて、と言われている。
だから眷属全員、カイγーンの声と姿を見ていた。
ジョーンも用意さた椅子に座り、カイγーンの背後で見守っている。
「なんか昨日、夜、母槐という悪魔製造施設に連れて行かれて、手伝ったら、角も4巻になったし、ランク8の最上級に達した?(作者・うん、いまだに計算間違ってるが、誰も訂正しないし、間違っていても0.1%以下の高位層なのは違わない)。あと、そのおかげで、子供生む条件等々理解した」
「おめでとうございますっ」
「弱弱言われて腹立ったけど、それならゆるせますー」
「今日も可愛い格好ですね」
「よっ、美猫様」
シルヴァーはミディーを抱えてここに参加していたが、眷属の忠誠とか敬う気持ちは疑いようもないが、それにしても爵位持ちとそれ以外の距離が近いというか、変な領地だなあと改めて思った。
「焦らして悪いが、経産婦と妊婦のみんな、何回で子供できたか、ちょっと確認する。一回でできた人?」
手がばらっと上がった。
傲慢の蝙蝠が頭上を飛行して数えていき、暴食のモグラがよじよじとジョーンの頭に昇って、数え始めたので、ジョーンは立ち上がった。
二匹は数を同時に言い、合ってると、メモった。
屋敷、実家、娼館からも数字が届く。
二回目。三回目。
確認し、計算し。
「平均四回だな。女体化というか、母体化してみて、八回しても孕まない場合、微調整するとして。最初誰行く?」
「あ、私をお願いします」
と、フラミンゴの門番が出てきた。
「おまえは色欲だったな。統計のメモ的に、色欲の女は孕む回数平均6だな。嫉妬は1・2度みたいだが。だから、5度やっても孕まなくても、がっかりとかすんな?」
「そうなんですね。里長、面倒な俺の相手してくださいます?」
「いいよ、がんばるよ」
誰でも受け入れる男、子爵となった里長。
ひょろながい門番が、女体化していった。
「・・・あの、胸とか尻とかあんまり変わらないんですか」
「材料ないのに作れないんだよ」
「そんな。胸ぼんっと尻ばんっと、してる女になりたかった」
よろよろとしながら、門番は長の元へ行き、
「尻も胸もぺちゃですけれど、大丈夫でしょうか?」
と、申し訳なさそうに問うた。
「問題ないよ」
「ありがとうございますっ」
結果的に、門番は一晩で身ごもった。
「何回やって出来た?」
「7回です」
「元が男だから回数多いのかわからないな。色欲の平均+1か」
カイγーンは保護期間中に、子を産みたい男を女体化させた。さすがに魔力と精神力を必要とするので、一日3人ぐらいしか変更できなかったが、なりたい男は寿命間際の者で、そんなに多くない。
門番は男として最初に身ごもったが、出産は90日かかった。
他は20~30日で生まれているので、色欲(子に良い性質を残しやすい)という特性だろう。
悪魔は、人間の出産のように産道を通らず、ぽんっといきなり腹の上に出てくる。
父親が子爵なので、三つ子である。
一匹は駝鳥、一匹は鼠だった。いずれも目も開いていない赤裸な幼体だった。
そしてもう一匹。
「樽っ、樽もってこい」
「いや、シーツだよっ。とりあえず噴水にっ」
目はぱっちりと開き、ギュイキュインと鳴き、タッパと尾びれをびたびた振り回す、少なく見積もっても50㎏はあるシャチが生まれた。
ジョーンは騒動に参加して、シーツにくるまれたシャチのお嬢さんが乾かないように柄杓で水をかけてやる係を請け負いながら。
「鳥か、獣じゃないのか」
と、驚いた。
いやはや
シャチは
哺乳類である
門番は生んだ後、5日生きていた。
別に痛いところもなく、ただ寿命が枯渇しただけ。走ったり獣化して飛ぶことはできないが、歩き回れはした。
3日目には子供達はみんな目を開き、親の顔を確認した。
最期の日には自分の財を子供達と長に分配し、
「みんな、うちの子をどうぞよろしく」
と、告げて、するりと姿は掻き消え、角と尾羽が残った。
実に悪魔としては穏やかで理想的な死、であった。惜しむらくは、子が人型になるまで生きたかっただろうが、安心して託せる仲間と、領地があるのは幸せだった。
7週間後、暴食のシャチのお嬢さんはティリクム、嫉妬の駝鳥のお嬢さんはクラム、リスだった色欲の男の子はカイルと名前が世界から授けられて、無事人型に至った。
ティリクムは人間界の海にジョーンがよく連れて行き、無邪気に海賊を襲って食べたので、あっと言う間に暴食の成長ライン、66万6千㎏の食事を突破した。
罪深い魂は、重いのだ。味は変わらないが、女・子供を殺していると、殺した数だけ重くなる。
里長が体格に恵まれないのに、子爵になれたのも、ペド用の娼館で罪深い魂が壊れて剥がれた魂の欠片をちょくちょく食べて、66万6千㎏に達したからだ。
ちなみに、魂ではなく普通の食事でまかなうと400年以上かかる。
☆ ★
無夜「ティリクム嬢、最終体重25トン。必殺技はシャチの姿で海水をまとい、重量20倍の魔法をかけての『1万トン級フライングボディアタック』と、カイγーンさえ受けるの嫌がる『本来の体重(25トン)威力を片足に全のせした、回し蹴り』。その後、ホオジロザメな娘生みます」
私「フライングボディアタックは、カイγーンは受けてくれるんだ?」
無夜「カイγーン的には濡れるだけなんで。濡れるの嫌だけれども、子供の遊びに付き合う寛容さはある」
私「もうシャチのお嬢は名前からしてやばぁい。それに、もはや鯨サイズ。シャチって5トンぐらいじゃん」
ここまでで、章前半の(上)ですー




