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寝取られジョーンのヒモ生活  作者: 無夜
ジョーンはヒモになった 下
36/40

貴方に捧ぐ『鬱蒼なる青』(色彩鳥視点)

 色を変えられる、それだけしか能力がなかった。転移魔法陣の稼働もできたけれど、それは領地では役に立たない。なにせ、魔法陣自体は、人間界にしか設置できない、動かないのだ。

 魔界内で通用する魔法陣もあるのだろうが、法則が違う。

 旦那様が色変えの魔法を褒めてくれて、屋敷で魔法陣の担当をする傍ら、煉瓦やタイル、クリームを入れる容器の色を変えていく作業をしていった。だから領地の悪魔の中で、3番目ぐらいに、人間界マネーを所有している。

 いつの間にか、3色しか変えられなかったのが、12色に。そして、24色に。

 使い慣れていくほどに、色は増え。

 いつしか、色変えの悪魔ではなく、色彩鳥と呼ばれるようになっていた。

 暇なときには農家や屋敷の周辺を飛び回れた。

 毒の森も、上空になれば毒は薄くなるから飛びやすいけれど、人間界の空を飛ぶのはもっとなんというか、摩擦の少ないところを滑空するので気持ちが良い。

 その日は、当番を交代して自由になって、空は曇っていて、ならば雲の上まで飛んでから領地に戻ろうかと、屋敷の屋根から上を見上げた。

 灰色の雲を突き抜け、白い霞のようになり、それも振り切れて。

 真っ青な空と白い地面のような雲が広がる。


 ご主人には『真の黒』を作ったばかり。

 あの方は奈落のような黒がふさわしい。

 すべて飲み込む。すべてを、関心のなさゆえに、お許しくださる。

 しかして、大恩ある旦那様への、特別な色はどうしよう?

 金?

 それは違う。

 空に、空に、より高見に上がっていって、気が付いた。

 冷えて水蒸気がすべて固体化して墜ちてしまった、空。


 眩むぺかっとした青が、

 いつしか冥い。


 太陽に近づくというのに、

 周囲は透き通るほどに濃紺に、

 黒に、

 闇になっていく。


 そういえばリーシャが

「光を明るいと認識するには、障害物が必要なのよ」

 とか言っていた。よくわからなかった。

 でも、何もなくなってしまった空間で、太陽があるのに、こんな夜でもありえぬ凝縮された青の黒になるのならば、なんだかリーシャが言っていたことがわかる気がした。


 この孤高の、昼の闇。昼の空の、黒いまでの青。



 ああ、これを旦那様に捧げよう。


 私はこの青を絶対に生み出す。

  

 墜ちることなく、ただ変わらぬ空。

 違って見えるのは周囲に障害物があるから。本質は決して変わることがない。

 それが旦那様だから。



 屋敷で、領地で、布を織り、縫製が得意な者たちで服を縫い、カフスや小物を揃え。

『真の黒』の礼服と『鬱蒼なる青』と名付けた色の礼服が出来上がった。

あとは、着せるだけ。




 そしてご主人が伯爵になられて。

 ムーщ様が首尾良く

 ご主人にっ

 私の生み出した『真の黒』の燕尾服を着せて下さった。



 そして旦那様が帰還されて、翌々日(ご主人様がにゃんにゃん言いながら旦那様を放さなかったので)、並んで着て頂いた。

 旦那様のスーツは肩を少し誇張して、腰を絞るタイプ。背はあるし、人生を終えても週に二回は農作業をなさるから、腕も足も太めで、がっちりしているので補正しなくてもいいのだが。

 ぱっと見、同じような黒だけれど、光の加減で旦那様の服は青の艶が生まれて濃紺なのだとわかり、ご主人の方は艶さえ黒い黒となっている。

 大きな鏡も用意され。


 何か、違和感があった。


 ご主人様は、まあいい。(主人に対して扱いがわりと雑だが、カイγーンの眷属は皆こんな感じ)とりあえず似合っていて、それでいい。

 旦那様。

 服は体に合わせてある。

 色味もあっている。

 なぜ浮くのか。


 旦那様は鏡の前で苦笑した。

「服に着られてしまうんだな。いや、みんなが悪いわけではないよ。伯爵に至ったカイと、俺が釣り合ってないんだ」

「そんなことないよ?」

 ご主人はすぐにそう返した。

 私たちもそう思う。

 きっと私たちがやらかした。

 何か、足りなかった。タック? 肩のパッド? ポケットに入ったハンカチの見え方?

 あ、帽子。帽子をご用意していない。

 あわあわしていると。

「いや、俺は、田舎の紳士で、村の名士でしかない。今、この立派な服に着られてしまう。紳士服もそんなに着たことがなかったから。見合うように、伯爵の伴侶として見劣りしないように、『私』は努力していこう。この服が着こなせるように」

 その後、少なくても屋敷と娼館の管理にゆくときは、きちんとした服装をなさるようになり、それに合わせてご主人も『紳士服』を召された。

 今までは猫の姿でいることが多かった上、ロングシャツ一枚で済ませていたのに。

 でも、だから、私は嬉々としてお二人のための布を染め上げる。

 屋敷や領地で、皆が服を作り続ける。

 旦那様が服を従えるのも、そんなに遠い日ではない。




 第二章 完結



無夜「プロローグのあれは、いわば『農夫のジョーン』としての最後の夜なわけです」

私「事故みたいに階級を上げたカイγーンに釣り合うために、脱田舎紳士、そして由緒正しい紳士に?」

無夜「130年ぐらい生きてるから、4代続く名家の出とかと変わらない」

私「この文明レベルなら5・6代分いってるよね」

無夜「つぎは人生の精算ですね」   


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