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寝取られジョーンのヒモ生活  作者: 無夜
ジョーンはヒモになった 下
34/40

 実家へ帰る

 あわただしく人間界へのドアをくぐり抜け、それは閉じられた。

 ジョーンはそのドアに手を当てて、

「どうか無事で」

 と、祈った。

 カイγーンの眷属になった悪魔としか接していないため、他の悪魔がどれほど強いのか、さっぱりわからない。

 魔法も使えないし、腕力も普通に人間なのでああいう戦争では、足手まとい。居座れば、自分を守るために悪魔が割かれる。それは損失・マイナス。

 感情で領地や領民を危険にさらすほど、そこまで愚かではない。

 不安にならないといったら嘘だし、そわそわはするが、侵略を撃退するまでは自分はやれることをしようと、思った。

 村の内政。

 娼館の管理。

 屋敷(ほぼ工場)の把握。

 ついで、娼館の中に小物販売店があったのだが、その地域の若い女性達が、普通の場所に店を置いて欲しいと嘆願がきたので、そっちにも取りかかる。

 なんだか異様に、手が広がっている。

 小物販売は、リボンやレース、安いアクセサリーや小さな造花、菓子などを売っていた。客がちょっと買って、馴染みの娼婦にあげたり、娼婦が非番のときに、あれこれ選んで買っていく店である。(ホテルロビーの横にある土産屋ぐらいの大きさで店員は一人で切り盛り)

 色彩の小鳥のおかげて、カラフルなレースにリボンが取りそろえられており、客がそこで買ったものを姪やら妹にぽいっと渡したことで、売られているものがばれていった。

 ということで、屋敷にいる夫婦あたりに任せて、小物屋さんを作る。

 こちらは家賃だけ払わせて、あとは仕入れなどは夫婦が自分で決め、運営させる。屋敷とのつながりは絶えないので(仕入れ先である)、完全に独立ではない。

 立ち上げも、任せる相手を決めるのも、そんなに難しくなかった。

 村の方は水路を造ったり、

「貯水池の減りがひどくて」

 と、相談されたりして。

「季節的に、20日以内には雨が降るはずだ。でも、最終の赤いライン(貯水量が1/3になると露出する)が見えたら、雨を待たずに水を買いに行こう」

 と、計画する。


 ココまでになったら、コウするよ


 そう説明しておくと、村長(悪魔)も村の代表(人間)も安心する。

 だいたいのことに即答えられる、長老みたいな立ち位置にジョーンはいる。なにせ、この村に100年以上暮らしている。

 ジョーンにはペットでしかないレティシアが護衛として付いてきていて、ジョーンの膝を独占した。

 やることは多かった。

 しばらくいる、となると村も娼館も屋敷も、ため込んでいた相談事をジョーンにしてくる。

 一つ一つ解決したり助言したり、たまに実家近くの木の根が伸びすぎて危険な通路を整備する肉体労働をしながら。



 ついでに、かつて魔女狩りを企画した連中の『主犯』が、勤め終えていた。

 精神が壊れてしまっていたので、見受け相手がいれば渡すが、そうでなければ一年ほど休ませ、そろそろ追い出す予定。

 多かった『賛同』は20年の勤めなので、すでにどこぞかへ消えていっている。

 許婚と村長の娘は『主犯』扱いだったが、年齢的なものを考慮され、『共犯』の枠に罪一等減じられた。ついでに異端審問官の一人で、一番若くて人を殺したことがなかった見習いも、罪一等減じて『共犯』枠になり、たまに村で司祭が必要になると呼び出されていた。

 この3人は、普通の娼館に放り込まれて、勤めはとうに終わっていた。

 そして、勤め終えた見習いは村の教会で、完全に司祭になっていた。

 酷い目にあったせいか、若かったせいか、現実逃避したのか。

 神への信仰が天元突破したので、ミサをすると天使の羽が上から降ってくるありさまになっていた。

 女体化されて、売春させられて、心身をすり減らしていくなかで、神へ救いを求め続けた、結果という。


 ・・・壊れちゃったよね?


 まあ当人は男性に戻されて澄み切った彼岸の瞳をして、信仰に真摯にすがりながら教会で暮らしている。



 許婚と村長の娘は、二人で性行為をするのを客に見られた後、その客達に一緒にあれこれされるというプレイを延々させられたあと、25年目で娼館を出て行った。

 皮肉にも二人は、貶めようとしたエレンとすれ違ったが、二人の姿も荒んで顔つきが変わり、エレンは6人の子を産んで産後の出産で命が危うくなったため、カイγーンが駆けつけ母子の命を救った後、今後孕まないために子宮と卵巣の機能を止めたため、ふくよかになったので、わからないだろう。

 エレンは38歳になっていた。子だくさんのせいで、少し骨がもろく、歩くのが難になっている。

 エレンは息子に手を引かれて、

「母さん、段差あるから気をつけて。市場は逃げないから、急がなくていいんだよ」

 と、気遣われる幸せな母親となっていた。

 25年とはそういう歳月。


 ああ、自分たちにもああいう未来もあったのにな、と許婚と村長の娘は思い知らされ。

 一年分の稼ぎは貰えたので、それで小さなアパートの部屋を借りると、男は酒浸りになって、ある日死に。

 女は男が死ぬと、首をくくった。




 残りの主犯たちも成人女性の姿にされて、解放することにした。

 結局、ほとんどは個人個人で、ないしどこか別の娼館に自分から勤めに行った。もうそれ以外、何も出来なくなっていた。


「あの魔女裁判の本当の終わりか」

 ジョーンは感慨深そうに呟いた。

 曾孫であるエレンはすでに鬼籍荷は入っている。元々娼館に売られた訳ありで、カイγーンによる契約で寿命と引き替えに赤子に生まれ変わってジョーン達の元に来た。多産による身体のダメージも深く。享年は54歳だった。

 最大の被害者になる予定だったエレンが少し早いが、幸せに人生の幕を下ろしたので、ジョーンとしてはその時点で刑期を終わらせてもよかったが、強いて恩赦を出したいわけでもなかったので、ここまできてしまった。



 そんな濃い日々を送っていたら70日が過ぎて。


「ジョーンっっ。お待たせっ」


 彼の愛する黒猫が、珍しく黒いフォーマルなスーツを纏って飛び込んできた。


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