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寝取られジョーンのヒモ生活  作者: 無夜
寝取られジョーンの人生
3/16

ジョーンという男

苗字などないから、幼少期はケヤック(の息子)のジョーン。

 自立してからは、港の荷はこびのジョーン、となるはずが。

 ジョーンという名前の荷はこびの男はいっぱいいすぎた。

 金髪のジョーンは先に2人。

 グレー(の瞳)のジョーンも一人いた。

 のっぽのジョーンもすでにおり。


 結果。

 三番アパートのジョーン、がそれまでの呼び名。


 そして数日前からは


 寝取られジョーン


 という悪意ばかり感じる呼び名になった。

  

 幼い頃から、ふらふらしていた幼なじみ。

 それに惚れていたケッティ。

 ケッティに惚れたジョーン。

 幼なじみは順調に、ろくでもない大人になり、ついには事件を起こして港町から出て行った。

 さすがにケッティはついていくことはせず、泣きじゃくり、ジョーンはそれを慰め。

 ついに。

「もう、ジョーンと結婚する」

 と、ケッティは泣きながら言ってくれて。

 結婚したのは半年前だ。



 そして、7日前。


 あの人と一緒に行きます。

 探さないで

 キャッティーナより愛をこめて

(作者より。ケッティは愛称で、本名はキャッティーナなのですね、この女)


 と、書き置きを置いて、ケッティが出て行った。

 文字が読めなかったジョーンは、宿屋の主人に手紙を読んで貰い、結果この話は彼から客や業者、宿に併設している酒場に広まってしまった。


 妻に逃げられたことも、しんどい。

 周りから笑われることもしんどい。

 まじめに暮らしてきたのに、なぜと、思う。

 もう貴方しかいないの、とすがってきて、今度で最後の最後と許して結婚したのに、このありさまに、ジョーンは絶望した。

 絶望のあまり、悪魔を呼び出してしまうほど。

 朦朧とした意識の中で、呼び出したらしき少年に愚痴っぽくこの話をして、話を聞いてもらったら、少しばかり気持ちに区切りがついた。


 話を聞いた、少年のような悪魔カイγーンはからりと笑い、言った。

「お兄さん、馬鹿なの?」

 笑っているが怒っていた。

 酒場や仕事場の連中の、小馬鹿にした笑いではなかった。怒るのをごまかそうと、笑う顔をしている、のがわかる。

「怒れよ、あのあばずれがって。裏切りやがって、って」

「いや、傷心につけ込んだのも、俺、だったから」

「あの女から誘われてんじゃん」

 ちなみに、駆け落ち妻の名前が猫っぽいため、カイγーンは意地でも口にしたくない気持ちになっている。

「もー、で。望みは・・・誰か一緒にいて欲しい・・・なんかもう、悪魔の僕が泣きそう」

 魔界に帰ったところで、家族もないし。

 今の時間の流れの差は10倍で、こちらで50年生きて魔界に戻れば、5年しか寿命が減っていないことになる。

 フェアリー系の物語で、7日あちらにいって戻ったら、現地は70年過ぎて自分は老人になったというのがあるが、逆なら、そういうことだ。

 野良悪魔には美味しい、安全な時間と実質寿命と経験増。そして相性の良い魂を食べれば、野良でなく騎士爵や準男爵になれるかもしれない。

「いいよー、お兄さんが死ぬまで一緒にいてあげる」

 軽い気持ちでカイは言った。

 ま、人間界に長くいればいるほどに、僕には美味しいから。

 今の僕の寿命ぎりぎりの55年だってつきあってあげる。

 魔力で契約書を作り出し、お互いにサインをした。


 それがまさか千年以上の付き合いになるとは思いもせずに。

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