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寝取られジョーンのヒモ生活  作者: 無夜
寝取られジョーンの人生
13/31

ジョーン

 危ないことはしてほしくない。

 が、どうやらカイはあの大人数のリーダーになってしまったようで。

 人(悪魔)の命もかかっていて。

 ならばやらないわけにもいかないのだろう。

 肩に鼠が止まり、知った声が耳打ちした。

「ご主人、無事敵対勢力無力化完了。おうちに一度帰りますので、甘やかしてあげてください」

 と、告げると、消えていった。

 仕事はほぼ終わっている。仲間からの飲みの誘いは断って、帰路に就く。

 途中、自分用の夕食と、カイが飲む酒を買った。

 帰ったら、夕食の支度はしてあった。

「カイ、大変だったんだろうに。俺が用意するから、座ってな」

「いいんだよ、結局人間界の時間で二日以上、三日? かかったし。その間、なんにもしてないから」

 ジョーンはカイの頭を撫でて、するとカイが見上げてきたから、唇をついばんだ。

 広くなった領地。

 帰還した女達。

 治療と。

「堕胎、とかで命は助からないのか」

 ジョーンから出た言葉は、彼には似つかわしくなかったが、ずっとずっと、さらわれた女達のことを考えて、解決策を探したのだろう。

「悪魔は、一度しか孕めないんだ。僕の親たちは死ぬ二年前に僕を生んだけれども。平野良悪魔はそんな感じ。子に最大限、残せるものを用意してから、孕む。だから、胎児の成長を彼女らの寿命ぎりぎりまで、止めようと思う」

 そういうのは、カイの得意とするところ。

 母親が許可すれば、できるだろう。胎児である内は、母親の一部扱いになるので。よほど子に強固な意志と魔力がなければ、レジストされることはない。

 これが『堕胎』になると話は変わる。

 胎児は全力で抵抗するだろう。

 そうなれば、母胎も危険になる。

 その説明を受けて、ジョーンは首を振った。

「難しいな。ごめん、短慮な提案した」

「うううん。ずっとジョーンも考えてくれたんだよね。正直、嫌いな男の、その子供が腹にいる状態は嫌だろうとは思うけれども」

 ああ、子供か。

 カイの今の能力では女体化ぐらいはできるが、外側と、一部ぐらいで、胎は形ばかりで機能しないだろう。

 こればかりは練習が必要だった。

 その後、ちょうどいい練習台が転がり込んできたので、悪魔の面目躍如で残忍に弄ぶのだが。

 しばらく後の話。


 


 領民が68人になった。


 属性で分けると

 暴食34

 憤怒12

 色欲12

 怠惰3

 傲慢3

 嫉妬2

 強欲2


 本性(獣姿)で分けると

 小型(住まい区分)

 リス 鼠 モモンガ31

 鳥系14

 犬 猫 猿12

 大型猛禽6


 中型

 猪 猿5


 大型

 鹿 アリクイ それぞれ1


 となる。

 

 やはり、土地柄、暴食が圧倒的多数。



 数字と文字は書けたり読めた方が良いな、とここしばらく、ジョーンは勉強したいと思うようになった。

 読み書きを習う頃に、母が亡くなり、家のことをすることになったので、ジョーンはあまり文字が読めない。

「そっかー」

 と、相談されたカイは頷くと、子供が通う学校に『傲慢』の誰かを行かせようかと思った。

 怪我を治してから。

 だが。

 一番怪我の酷かった娘が、治すのを拒否してきた。いろいろ話を聞いて、ああこの娘は『傲慢』属性で、頭が良いな、と察した。

 さらわれたときにすでに同平野良の悪魔との子を孕んでいた彼女は、さらわれた当初は気づかずにレイプから抵抗して、大怪我を負わされ、それでも隙を見て、仲間を逃がしたらしい。その後、自分の子のために、必死に身を丸めてお腹を庇っていたとか。

「私が生むのは好きな相手の子。そして、怪我もきれいに治ったら、一緒にさらわれ、孕まされた友人達は、きっと、おもしろくないと言いますか、嫌でしょう。私だけ、恵まれて見えて」

 ということなので、片目だけなおさずに、ほかは治した。一つ、大きな傷を残せばしのごの言うことがないだろう。言いたいかもしれないが、言わないだろう。あれだけ酷い目にあっているのに、それでも僻みが出るというのは、なんだか恐ろしいが、痛みは自分でしかわからず、そして自分の痛みこそが一番重い、となればそういう心配もでる。

「ご主人様、ありがとうございます。今、貴方から見れば、さらわれた仲間同士で気味の悪い結束をしているのですが、これが崩れるのはたぶんよくない」

「あんた、気の回しすぎで疲れるだろう。人間の学校に行って、ちょっと気晴らしに、文字と計算、学んでこない?」

 こうして『傲慢』の娘リーシャは、人間の学校に見えない鳥の姿で侵入して文字を覚えてジョーンに教え、計算を覚えてジョーンに教え、それが終わると、止めて貰っていた胎児の時間を動かして出産し、子供が人の姿になると、領地の悪魔に読み書き計算を教えることになった。

 そうし終えたらまたしばらく人間の学校や塾に通い、けっこうな知識を手に入れてきた。

 

 ジョーンはゆっくりなら、読めて書けるようになった。

 知らない単語も多いし、綴りも間違うが、それでも何も知らなかったときより断然良く。

 仕事が終わって、ちょっとした時間を使って、領地の名簿を作り、住所録(部屋番号と名前)をこつこつと作った。

「こういうのあった方がよくないか。そのうち生まれたりして、増えるだろうし」

「ありがとうジョーン。まっっったく気にしなかった」

「うんうん。俺の黒猫さんは領地の維持と守りとか、怪我治すとかで忙しかったもんな」

 嫌みでなく本心からの言葉をかけられ、こつんと頭同士を軽くぶつけられ、カイはふにゃと笑った。

「ジョーンのお膝の上にいるのが一番幸せー」

「こんな可愛いお嫁さんが貰えて俺も幸せだよ」


 カイγーンの領地はずっと安定していた。

 怠惰ゆえに暴力的でなく、領民が虐げられなかったこともあるが、知者が多かったのもその要因の一つである。

 そして一番の知者に、いずれジョーンがなっていく。

 こつこつと、学ぶのをやめないで歩みゆく千年がそれを生み出す。



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