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転落①


「なあ健次。お前大物になりたいんだってな」


友人がそんなことを言い出したのは僕の家に遊びに来た時だった。


「なんだよ。急に」


僕は友人にそう尋ねると、手に何やら本が握られていた。

それは僕の小学校時代の卒業文集で、僕が「大物」になりたいと言う夢が書き記されていた。友人はそれを見て僕が大物になりたいということに気づいたのだ。


「おい!勝手に見るなよ」


そう言ったところで、見られたものはどうしようもない。僕はあきらめていた。


「で?お前はどんな大物になるんだよ」


友人は面白半分で聞いているのがすぐに分かった。だから僕も相手にしなかった。


「でも凄いよな。小学生で大物なんて書く奴は初めて見たよ。こりゃ傑作だ」


友人は完全に僕を馬鹿にしていた。小学生の頃の話だが、正直今でも大物の夢はかすかに残っていた。でも実際何で大物になれるのか、本当に大物になれるのか、不安でいっぱいだった。

すると、友人がおもむろに口を開いた。


「なぁ、本当に大物になりたいならいい話があるんだけど聞くか?」


「何?」


「実は俺の兄貴、暴走族やってんだけど、今度集会があってそれに参加してみないか?」


「集会?」


僕はその言葉に戸惑った。暴走族の集会といえば何か強面の人達が集まって悪いことをしに行くイメージがあったからだ。

しかし、この時の僕は思春期のまっただ中で、意味もなくイライラしていた。それでもいいかと友人の話にのった。


「じゃあ決まりな。明日迎えに行くから」


そう言って友人は僕の部屋を後にした。何故か少し緊張していたが好奇心の強い僕にとってそれもまた楽しみでもあった。


次の日の夜、約束どおり迎えに来た友人は免許も無いのに原付に乗っていた。


「これ、どうしたんだよ?」


「まあ、かたいこと言うなって!じゃあ行くぞ」


そう言って友人は僕を後ろに乗せると原付を走らせた。


どのくらい走ったのだろう。

僕は全然知らない場所にいた。辺りは真っ暗だったが少し歩くとやがて明かりが見えた。使われているのかいないのか分からないテニスコートに何台ものバイクと車が入り混じって、まるで東京ドームのナイター中継のように明るく照らしていた。

僕は集会場に来ている人数の多さに驚いた。まるでちょっとしたコンサートが開ける数だ。


「よく来たな」


頭に刈りこみの入ったパンチパーマ、今時しいコテコテの不良が話しかけてきた。

僕はそう驚きはしなかったが、その風貌に少し固まった。


「こいつが健次っていうやつか?やけにチビだな」


不良のその言葉に少しムッとしたがここは抑えていた。


「健次、紹介するよ。このパンチパーマが俺の兄貴。ここの総長やってる人。まぁ、見た目は怖いけどちゃんと筋通す人だから安心していいよ」


友人はそう言って僕に兄弟を紹介した。僕は軽く挨拶をした。




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