復讐編18 全ての結末へ
現場には、すでに夥しい数の警察機構車両が到着していた。
それらの間をすり抜けつつ足を急がせていると、前方に見慣れた後ろ姿を発見した。
「――メグルさん!」
声をかけると、メグルといった男はこちらを振り返り見て
「……お? 遅かったじゃねェか、ディット。このヤマ場に、どこほっつき歩いてやがったんだ? えぇ?」
「そう怒らないでくださいよ。D-ブレイク事件当時の関係者に聞き込みして回っていたんですから。――で、あれがジャック・フェインのアジトなんですか? どうしてわかったんです?」
ディットは目線を移した。
数十メートル先、廃墟と化した建物の1階入り口付近に四方から投光器で光が当てられている。
その周囲には武装した警察機構特殊部隊の人数が配置され、蟻一匹逃げる隙間もない。
「……アジトかどうだか、わかったモンじゃねェよ。だが、可能性は高いってこった」
開け放った車のドアにもたれかかって物々しい光景をみつめているメグル。
が、警察機構本庁捜査課きってのベテラン警部の横顔は「あれに間違いない」と暗に物語っているかのようであった。
この、警察になるために生まれてきたような面構えをした先輩を、ディットは尊敬している。彼はメグルがアジトの場所を突き止めたものだと思い
「しかし、さすがはメグルさんですね! ジャック・フェインの連中がこんな場所にアジトを構えているだなんて、誰も予想なんか――」
「馬鹿野郎」
メグルが唸った。
「俺じゃねェ。俺はH地区のヤマで手一杯だ」
「え……? じゃあ、誰がここだって、突き止めたんです? 公安ですか?」
訝しげな顔をしているディットに、メグルはちらと一瞥をくれ
「でもねェな。三日前の高速軌道交通線爆破事件を仔細に検証して、恐らくここが連中の活動拠点になっていると俺達に意見具申してきたのはアレだよ、ほら」
ニヤリと笑った。
「……ヴォルデ会長さんとこの警備屋さん方だ」
「ええっ!? Star-lineが?」
絶句しているディット。
「とは言っても、だ。本庁の上層部でもどうやらここら辺が臭いと睨んでいたようなんだけどな。――ただ、位置までは特定できていなかったから、そういうイミではStar-line様々、ってワケだ」
と、メグルは補足した。
「なんだぁ! サラ隊長、それなら僕に話してくれれば良かったのに。一足飛びで本庁に話を持っていってしまうなんて」
ディットは残念そうに呟いている。上手くいけば、自分の手柄にできたかも知れないのだ。
しかし、そんな彼にメグルはきっぱりと
「お前じゃ、ダメだ。そもそも、この話はヴォルデ会長から直々に俺達に寄越されたんだからな。警備屋のねーちゃん達も、しかるべき筋を通じて伝えないと聞いちゃくれないとふんだんだろうな。……正しい判断だよ。お前も、少しゃ見習え」
「はぁ……」
メグルの言う通りであろう。
この都市ではもはや知らぬ者がいないStar-lineとはいえ、その意見を公的機関である警察機構が無条件で採り上げるかといえば、そこはきわめて疑わしい。Star-lineは一私的警備組織に過ぎないからである。しかし同じ意見ではあっても、都市統治機構にすら発言力を持つ会長ヴォルデの口から出たならば、たちまち千金の重みが付されるといっていい。
業務停止命令によって時間に余裕を得たサラは、メンバーを総動員して都市統治機構主導の地下高速軌道交通線工事計画を徹底的に調べ上げた上でジャック・フェインの活動ルートを絞り込んだ。都市センター線爆破事件の一報を目にした彼女は、それがジャック・フェインの行動を暗示するものと確信していたからである。サラはすぐさまそれを警察機構に報告するようヴォルデに依頼し、裁可を得た。
警察機構側でも同様の捜査に着手していた矢先だったから、タイミングも良かった。
果然、その意見書は警察機構捜査課において即座に検討され、ジャック・フェインのアジトは恐らくA地区に存在するであろうとの結論が出された。
A地区には、旧世代に着手されたものの工事が中座したまま放置されている坑道が幾つか存在する。それらのトンネルは各地区へと通じていることから、かつてはテロ組織に利用される危険性が指摘されたりもした。しかしながら歳月を経て、いつしかその議論は消滅してしまった。現行の地下高速軌道交通線よりもさらに地中深く掘られているため、テロ組織といえども利用が容易ではないというのが大きな理由らしい。やがて市民もまたその存在を忘れていくに至る。
が、強大な資金源と技術力を有するジャック・フェインならば、あるいはその坑道に目をつけても不思議はない――サラはそう考えたのである。
ジャック・フェイン摘発を悲願としている警察機構の動きは迅速であった。
職員三百名余りを動員してA地区西エリア一帯を封鎖すると同時に、特殊部隊を展開させてアジトの完全包囲を完了させた。
この間、出動命令から二時間と経っていない。
そうして一報を受けたディットが到着するほんの少し前、警察機構本庁総監の命令によって特殊部隊が突入を開始したばかりであった。
硬化シールドとライフルを構えた特殊部隊隊員達が、二人、三人と固まって次々に廃墟の中へと駆け込んで行く。
ディットは急ぎ駆け付けてきたものの、こうなればあとは推移を見守っているより仕方がない。
「……しかしなんだなァ、ディットよ」
ふと、メグルが口を開いた。
「俺達ァ、足で稼いで犯人を追い詰めるのが仕事だが、つくづく華なんか持たされたためしがねェ。時々、ああいう特殊部隊の連中が羨ましくもなるわさ。お前、そうは思わんか?」
彼の言う意味がわからなくもないディット。
警察機構本庁捜査課といえば泣く子も黙る警察機構きっての犯罪捜査班であり、世間からは尊敬と畏怖の目をもってして見られることが多い。
しかしながら実際は自らの足で都市中を駆けずり回り、黙々と証拠を揃えつつ犯人を追い詰めていくという気の遠くなるような根気が必要な、日陰の仕事である。犯人を捕らえたからといって刑事本人が世間から称賛される訳でもない。一件解決したとしても、その先には次の事件が待っているだけのことである。
D-ブレイク作戦以来、メグルが地道にジャック・フェイン捜査を続けてきたという事実を、ディットはよく知っている。
それだけに、長い歳月と心労を費やした事件が、目の前で他部署の人間によって幕を閉じられようとしていることに、メグル自身複雑な思いを抱いたとしても少しの不思議もあるまい。
彼の心情を想像したディットは何とも言えない気持ちになったが、
「……でも、メグルさん」
「あァ?」
「僕は……いつか、メグルさんのようになりたいと思ってます。メグルさんのようになることを目指して、日々仕事に励んでいるつもりです」
そんな言い方でしか、彼に対する慰労と敬意の気持ちを表現する術がなかった。
メグルはほんの一瞬、何ともいえない笑みを浮かべ
「……そう言われちゃまあ、悪い気はしねェけどな」
呟くと、また廃墟の方へ目を向けた。
「……」
気持ちが伝わったものかどうか、よくわからない。
あとはどうすることもできないディットは、黙って一緒に現場を眺めているよりなかった。
と、その時である。
ズン、と一瞬、地面に突き上げるような衝撃があった。
「!?」
何事かと思う間もない。
次の瞬間、ディットの目に飛び込んできたのは――廃墟の入り口から突如噴きだした爆炎、そしてその爆風を浴びて吹き飛ばされていく特殊部隊隊員達の姿であった。
『――ツー、聞こえますか? こちらクロス』
独り車を走らせているレヴォス。
不意に、耳にさしているイヤホンの向こう側から仲間の声が届いた。
ツー、クロスというのは作戦中のコードネームである。レヴォスは構成員達からツーと呼ばれている。この地域ではウィグの次に権限を持つ立場だから、ツーということらしい。
「聞こえている。何かあったか?」
『面白いニュースです。――つい今しがた、Aアジトに警察機構が突入したようです。連中、我々の仕掛けた時限爆弾に絶妙のタイミングで引っかかりましたよ』
「警察機構が? 何だって、そんなに早く気が付いたのだ……」
呟くレヴォスの顔には苦いものがある。
確かに、アジトを跡形もなくすために時限爆弾を仕掛けはしたが、何も殺戮を狙ってのことではない。計画では、爆破があって初めて警察機構が在り処を知るという筋書きだったのだが――。今回ばかりは、警察機構の手際が良すぎたとしか言いようがない。
(何だって、こんなに早く突き止めたんだ。もう少し遅ければ、爆発に巻き込まれずに済んだものを……)
そこで彼はふと考えた。
すぐに無線のスイッチを入れ
「こちらツー、ウィグさん、取れますか」
『……はいよ。どうかしたかね?』
「たった今、Aアジトに警察機構が突入したと連絡がありました。残念なことに、隠滅のためにしかけた時限装置に引っかかったようです」
そう報告すると、無線の向こうでウィグは沈黙した。
やがて
『……俺達のシナリオじゃあ、爆破後に通報があって駆け付けてくる筈だったのに。何だって、そのタイミングで突入なんかしたんだろうなぁ。よほど運が悪いとしか言いようがない。可哀相なことだ』
心底痛ましそうな声を出した。この男はテロリストの癖に人が死ぬことを嫌っている。
レヴォスも同感だったが、彼はすでに別のことを考えていた。
「確かに、不幸です。……ですが、どうやら我々が思っている以上にカンのいい人間が向こうにはいるという見方もできます。――こうなれば、一刻の猶予もなりません。計画の決行を明日に変更したいと思いますが」
『明日、か。――俺は構やしないが、みんなはどうなんだい?』
「準備はすでに整っています。Aアジト爆破は当局の捜査を攪乱するためでしたが、上手い具合に陽動になったと考えていいでしょう。今が計画最終段階実施のチャンスだと思います。……どうか、ご判断を」
ウィグはちょっと黙ってから
『……レヴォス君』
「はい」
『死ななくてもいい人間がたくさん死んだんだ。上手い具合、は止そうぜ?』
いつものあっけらかんとした調子はなかった。
「……」
真剣そのものの雰囲気に圧されているレヴォスは、無言で無線機のマイクを握りしめている。
が、ウィグは急に調子を一転させ、
『まあ、それはいいや。――それじゃあ最終段階、明日やることにするかね。くれぐれもぬかりのないように、よろしくね? 四年間、俺達は苦労に苦労を積み重ねてきたんだから、さ』
「うわー! いー天気! 思いっきり遊びに行きたいわぁ!」
空はどこまでも青く澄みわたり、雲一つない見事な快晴である。
あまりの心地よさに、ティアは思わず叫んでしまったが
「ティアったら、みっともないから大声出さないで頂戴ね? ここから叫んだりすると、近所の高層ビルの壁に反響しちゃって、意外と響いたりするんだから」
後ろからやってきたシェフィにたしなめられた。
ティアは頭を掻きながら
「いやー、久しぶりの青空だから、つい。……ほら、ここんとこ曇りばっかりで、じめじめしてたでしょ?」
「それはそうだけど。でも、ちゃんとやることやらないと、せっかく上機嫌な副長に雷が発生しちゃうわよ? ――早く、そっち持って。重くて私一人じゃ持てない」
都市統治機構から謹慎をくらっているのを幸いと、ショーコは機体の化粧直しを命じたのである。
CMD専用の特殊塗料は屋内で陰干しなんかしてもなかなか乾かないが、燦々と降り注ぐ太陽光の下では驚くほど早く乾いてくれる。この晴天のせいなのかどうか、メンバー達に作業を急がせつつも、どこかショーコはうきうきとしていた。シェフィはそのことを言っている。
隊の避雷針・ティアにしてみれば、上々なショーコの機嫌を損ねることは断じて避けたい。出動を禁じられていてただでさえキレやすくなっているというのに、今怒らせたりすれば恐らく命の保証はないであろう。
「ほいほい、わかりやしたー。ちゃっちゃと作業を終わらせちゃいましょうかねぇ」
二人はDX-2の大きな装甲をせっせと本部舎屋上に運び込んでいく。
「よーく乾かさなくちゃね。塗料の乾き具合が中途半端だと、そこから劣化しちゃうから」
「はいはい。こんだけいい天気なんだから、すぐに乾くでしょうよ」
両腕のパーツを天日に晒したところで、休憩することにした。
はめていた軍手を脱ぎながら、眩しげに空を仰いだティア。
「あーん、何でこんな日に仕事なのかしら? どうせ出動できないんだから、休みにしてくれても――」
ぶつくさ言いつつ、ぐーんと背伸びをしていると
「……あれ?」
遥か上空を、大きな音を立てながら一機のヘリが通り過ぎて行くのが見えた。
「ねぇねぇ、シェフィ」
「はーい? どうかした?」
彼女はDX-2のパーツに挟まれるようにして座り込み、自らも太陽の光を浴びていた。
この女は光合成をする植物か、とティアは思ったが、それは口に出さずに
「あのさぁ、今って、この地区は飛行制限がかかってなかったっけ?」
「でも、あれは都市統治機構の要人専用機じゃない? 誰か偉い人でも乗っているんじゃないかしら?」
視力の良いシェフィには、ヘリの形状やカラーリングが見えていた。
全体的に白い塗装を施し、尾翼にブルーの二本線とあれば、ファー・レイメンティル州都市統治機構所属の要人専用ヘリ以外の何物でもない。
「でもねぇ」ティアは首を傾げている。「確か、テロ組織の対空兵器による攻撃を警戒して要人機は飛ばないことになっていたような気がするのよね。いつかの都市治安対策会議資料ってやつで見たような記憶がある」
このいい加減な性格の娘にも、一つや二つ取り柄はある。
現場で血を見ても動じないということと、やたらと記憶がいいという点である。
「まぁ。ティアったら、よくそんなの覚えていたわね。――でも、知事とか副知事は別じゃないかしら? 急用とあれば、やむなくヘリに乗ることだってあるかも知れないじゃない?」
実際にそういう事例があるかどうかは知らなかったが、少なくともヴォルデなどはそうである。必要とあれば、会長という立場ながらテロ組織との交戦現場にすら平気でやってくる。
彼女は少なくとも自分よりも物知りだと思っているティアは強いて反論することなく
「ふーん。そういうものなんだぁ……」
素直に頷いていた。
やがてヘリは、高層ビルの天辺に隠れるようにして見えなくなった。
「大変申し訳ございません。総務局のカルメスは本日、公用で出張しておりまして不在でございます。各被害地の視察が目的ですので、戻りの予定は未定とのことですが」
受付嬢はゆっくりと頭を下げた。
「そうか、ご出張でしたか……。いや、時期が時期だけに、仕方がありません」
ティアとシェフィがStar-line本部舎屋上で一機のヘリを目撃したその刻限。
M地区ファー・レイメンティル州都市統治機構本庁舎の受付に、ヴォルデが姿を見せていた。
都市統治機構総務局補佐室長カルメス・エルドレストに面会するためである。
Star-lineが何の警告もなしに突如業務停止命令を受けたとの一報を聞いた彼は、即座にカルメスの存在を脳裏に思い浮かべていた。
(やはりそうきたか……。如何せん、一筋縄ではいかないお人だな……)
呆れ返るような思いがしたが、やるべきことはやらねばならない。放っておけば、スティーレイングループ全体の安全が常時脅かされることになる。
ヴォルデの行動は常に迅速である。
あらゆる方面に手を回して情報の入手を試みつつ幾つかの必要な確認を終えた彼は、自ら都市統治機構へと足を運んだ。直談判して説得にあたらなければ、到底事態の打開は望むべくもない。ユイから絶縁同様に距離をおかれてしまったカルメスは、自分の面子のために本当に州条例を発動させてしまったからだ。こうなったからには、どんな手を使ってでも考えを改めさせなければならない。
が――出張で不在だという。
それが口上に過ぎないという事くらい、ヴォルデはとうの昔に見抜いていた。
この危険極まりない状況の最中、州統治組織の要人が身の危険を承知で現場に出向く訳がないのだ。なにしろ、相手は都市統治機構に深い恨みを抱くジャック・フェインである。テロ現場に足を踏み入れようものなら、命が幾つあっても足りないであろう。
とはいえ、特一級非常警戒態勢発令中である。
彼の立場を利用すれば堂々と上層階の総務局へ乗り込むことなど造作はないが、それでは喧嘩を売るにも等しくなってしまう。面子の塊のような人間を相手にするには、決して喧嘩を仕掛けてはいけない。ヴォルデはその豊富な経験上、身に沁みて知っている。
仕方がないので、後日出直してくることにした。
駐車場へ戻ると、秘書のロッジ青年が目を丸くした。
「ず、ずいぶん早いお戻りでしたね、会長。お話はもう済んだのですか?」
この僅か時間で打ち合わせを済ませたものと思ったらしい。
そのリアクションが可笑しくて、ヴォルデは思わず「はっはっは」と声を出して笑ってしまった。
彼はこの真面目でひたむきな青年を秘書として重宝している。
「いや、どうやら居留守を使われたようだ。よほど、私の顔を見たくないようだな」
ロッジは彼のために後部座席のドアを開けながら
「それは、信義にもとります。まがりなりにも、都市を治める組織の肩書きを持つ方が、居留守を使うなどとは――」
憤慨している。
そんな彼の肩を軽く叩いてやりながらヴォルデは
「いいんだよ、ロッジ君。信義に反すれば、それだけ自分の立場を追い込むというものだ。いずれ、カルメス氏にもわかる時がくるだろう。今日のところは戻ろう。――それよりも、時間が取れたからStar-line本部舎に寄れるかね? 皆に直接会って、励ましたいからね」
「かしこまりました。そのようにいたします」
彼は車を発進させた。
「どうだろう、ロッジ君。昨日L地区南エリアに、ネガストレイトで有名な菓子店ができたそうじゃないか。そこに寄って、何か差し入れを購めたいのだが」
ヴォルデの情報の速さに内心驚きつつもロッジは
「かしこまりました。Star-lineのみなさん、きっと喜ぶことでしょう。会長はお優しいですね」
賛同した。
「なに、私はこう見えても甘いものが好きでね。一日に一度は何か食べないと、落ち着かないんだ。ところがイーファム君ときたら、彼は滅法酒好きの甘い物嫌いでね。工場勤務時代はよく嫌味を言われたものだ。何せ『私の目の前で甘いものを食べないでください。見ている私が太りますから』なんて言うんだよ。これにはムッとしたものだなぁ、はっはっは――」
要するに、自分も食べたいということらしい。
そういう気兼ねのない老会長だからこそ、ロッジは心から慕うことができるのである。
「ご安心ください、会長。今日は、時間は十分にございます。Star-lineのみなさんと、ゆっくりお茶など飲まれるとよろしいのではないでしょうか」
「そうだな。ここしばらく激務続きで、ろくに話も聞いてやれていない。――そう考えると、業務停止命令も馬鹿にならないかも知れないね」
他愛もない会話を交わしつつ、車は都市統治機構本庁の門を出て右へ折れた。
そのまま直進すればStar-line本部舎のあるL地区に至る。
ヴォルデは表情を和らげて外の景色を眺めていたが、ふと
「……ロッジ君。統治機構本庁の様子がおかしくないかね? こんな時に、要人専用ヘリもあるまい」
「はい。それに何やら、黒煙が上がっているように見えますが……」
秘書のロッジが言いかけた途端である。
彼等の乗る車の傍を、何台もの大型キャリアが轟音を上げながらすれ違って行った。
「ロッジ君! 停めてくれたまえ!」
「は、はいっ!」
ロッジは車を急停止させると、そろそろと道の端に寄せた。
急いで車から降り、後方を見つめているヴォルデ。
「これは、ただ事ではないな……。今の大型キャリア、明らかに検問を突破したらしいキズがあった」
彼の呟きを耳にしたロッジ青年はぎょっとした。
検問を突破するような車など、犯罪者以外の何物でもないではないか。
「至急、警察機構と治安維持機構に連絡をとってくれ給え。私の名前で構わないからね」
「りょ、了解しました!」
慌てて運転席に潜り込むと、ロッジは車載電話機に取り付いた。
その間、ヴォルデは都市統治機構本庁舎の方をじっと見つめている。
黒煙は上層階から出ている。上層階には、総務局をはじめ重要な部署が配されている。万が一賊の手に落ちるようなことがあれば、都市機能は完全に麻痺する以外にない。
(これは厄介なことになったな。標的は恐らく……)
ヴォルデは唾を飲んだ。
――都市治安対策強硬派として知られているカルメス以外にいないではないか。
都市統治機構本庁三十五階、特別会議室。
ジャック・フェインによる治安維持機構施設襲撃事件以来、眺めのよいこの部屋は非常警戒発令事態対策室として、都市統治機構幹部達が昼夜詰めっきりになっていた。
「――ですから! そのような対応では国内外のテロ組織を挑発することになるのでは――」
「だったら何、かね? 君は、都市統治組織がテロ組織に屈してもいいと。……こういうことかな?」
美しい木目の卓を挟んで、二人の男がいつ果てるともない議論を続けていた。
片や総務局治安対策室係長、そしてもう片方はカルメス・エルドレストである。
不必要なまでの広さを持つその部屋には他にも多数の人数がいたが、誰もその議論に加わろうとする者はない。ある者は二人の高級官僚の対立の様を面白そうに眺め、またある者は諦めきった表情で頬杖をついてテレビモニタで流れているニュース特番を呆っと観ているのであった。
「誰がテロ組織に屈していいなどと! あなたはそうやって他人の意見を圧殺することしか考えていないのでしょう!? 都市が未曾有の危機に瀕しているというのに!」
「おやおや、議論の中心を摩り替えるとはね。都市治安対策の先頭に立つ者が、そういう態度ではいかがなものかな?」
「議論を摩り替えているのは補佐室長、あなたでしょう! いい加減にしたらどうですか!?」
のらりくらりとしたカルメスの態度に業を煮やした治安対策室係長はついに大声を上げ始めた。
その時である。
「……失礼します」
一人の男性職員が入ってきた。
彼はつかつかとカルメスの傍に近寄って行くと
「……ヴォルデ会長は引き取りましたよ」
耳打ちした。
カルメスは頷き
「そうか。何だかんだと、しつこいものだ。会長ならば、黙って椅子に座っておればいいものを。――明日以降も懲りずにやってくるかも知れん。追っ払っておき給え」
「……かしこまりました」
男性職員は一礼して部屋を出て行こうとした。
すると、入り口のドアが乱暴に開き
「たっ、大変です! 非常事態です!」
若い職員が顔を出すなり、大声で叫んだ。
皆、一斉に彼の方を見た。必死の形相をしている。
「なんだね、騒々しいぞ」
独り、カルメスは冷ややかに反応したが、その職員は意にも介さず
「皆さん、大至急避難してください! 発着を許可していない要人専用機が屋上に無許可で降りた模様です! 通信を試みていますが、応答がないんです!」
「……何だと!?」
カルメスが立ち上がっていた。
彼だけではない。
他の人間も席を立つなり、色を失った顔を互いに見合わせ始めた。
「何故、そういうことになる!? ヘリ発着用ポートは当面開放しないことになっていた筈だぞ! 大統領がやってきたとでも言うのかね!?」
怒鳴ったカルメス。
都市統治機構本庁舎屋上のヘリポートは、制御室で操作しない限り着陸できないような仕組みになっている。
ヘリが着地したとなれば、何者かがその操作を行ったということになるではないか。
が、若い職員にはそんな事情まではわからない。
「とっ、とにかく避難してください! このままでは、正体不明の賊が――」
言いかけた時である。
ドン、ドンッ
「……!」
さほど遠くない距離で、断続的な爆発音が聞こえた。
その場の誰もが凍り付いていた。
「な、何の音だ!? まさか、この建物が爆破されたのか!?」
「そんな馬鹿な! 都市統治機構本庁のセキュリティはどこよりも厳重なんだぞ!」
対策室にいる職員達は各々不安を口にしている。
ほどなく、廊下で多くの人数の足音がした。それに怒声やら悲鳴が混じっている。
「とっ、とにかく!」急を告げにきた若い職員が叫んだ。「隣の部屋に緊急避難用のシュートがありますから、早く避難してください! 一刻の猶予もありません!」
驚くべきことに、真っ先にうむと頷いて隣室へ赴こうとしたのは、カルメス自身であった。
それに気が付いた治安対策室係長は
「補佐室長! ご自分が真っ先に逃げるのですか! まずは部下や職員を助けようとは思わないのですか!?」
咆えた。
が、カルメスはちょっと歩速を緩めただけで、足を停めようとはしなかった。
「私にもしものことがあれば、この都市の治安維持はどうなる。それを言うなら、治安対策室の君こそが最後まで責任をもって残りたまえ」
言いつつも多少の後ろめたさがあるのか、表情が苦虫を噛み潰したように苦々しい。
「あなたという人は! それでも総務局補佐室長なんですか!?」
治安対策室係長はカッとなったらしく、彼に追いすがろうとした。
しかし。
「――貴様だな? カルメス・エルドレスト!」
突如入り口のドアが乱暴に開けられ、何人もの覆面をした屈強な男達が乱入してきた。
手に手に、自動小銃を構えている。
それを目にした職員達は反射的に両手を上にあげ、抵抗の意思がないことを示した。が、武装した男達は皆カルメスの方に関心があるらしく、誰も職員達には手を出さず声もかけなかった。
彼等がつかつかと歩み寄って行くと、側近の一人が咄嗟にカルメスを庇うように立ち塞がり
「な、何だ君達は! こ、このような暴力が許されると――がっ!」
顔面を一撃され、彼は横倒しに吹っ飛んでいた。
「ぼ、暴力はやめないか! 君達、一体何が目的だ!?」
カルメスは虚勢を張ったが、男達は黙って彼の身体を取り押さえにかかっていた。
「放せ! 放さな……んんっ! んーっ!」
たちまち両手両脚を縛り上げられ、ガムテープで口封じをされたカルメス。
「ツー、とれますか? こちらファイン。ターゲットを確保しました」
「……ご苦労。見事な手際だ」
その応答は、部屋の入り口から生の声で届いた。
いつの間にやってきたのか、レヴォスが立っている。
彼は顔面蒼白で突っ立っている職員達を一望しつつ
「他の連中はまとめて奥の一室に閉じ込めておけ。妙なマネをしないように、全員、手足を拘束して口を封じておくように」
そう命令した後、ふと思い出したように付け加えた。
「……それから、カルメス以外の人質には絶対に危害を加えるな。我々の真意は殺戮ではない。主張を国家統治機構に認知させることにある。破った者はその生命をもって償ってもらう。――いいな?」
「……」
鋭いレヴォスの口調に、異論を唱える工作員はいなかった。
が、それは百パーセントが彼の本位という訳でもない。
(ウィグさんも、長い間CMDに乗りすぎたようだ。血を見ないで済んできた訳でもないだろうに)
「……ツー! ご無事でしたか!」
奥の部屋から、一人の若い女性が姿を現した。
ほっそりとした女性事務員を思わせる外見とは裏腹に、物騒な大型の自動小銃を手にしている。
「ケレナか。ご苦労だったな。内部諜報と地下侵入経路のトレース、十分役に立ったぞ」
ケレナと呼ばれた女性はちょっと恥かしそうに
「いえ、そんな……。私はそれほどの働きもできていませんから……」
そんな彼女の姿を目にした都市統治機構職員達の顔に、一斉に動揺の色がはしった。
「ケレナ君! きっ、君は……テロリストの一味だったのか……」
「こんな真似をして、ただで済むと――」
タタタタタタッ――その職員の声は、突然鳴り響いた自動小銃の銃声に掻き消されていた。
彼の背後の壁が蜂の巣になっている。
ケレナが彼に向けて発砲したのだ。
「黙りなさい。テロリストにやすやすと潜り込まれるようなあなた達が悪いんでしょう? 次回からは採用面接に気をつけることね」
「……」
恐怖の表情で固まっている職員。
当てられこそしなかったが、銃口を向けられて平然としていられる人間もないであろう。
「……そういうことだ。今からたっぷり時間をやるから、次の面接の打合せでもしておけ」
レヴォスが顎をしゃくった。
それを合図に覆面の工作員達が一斉に動きだし、都市統治機構の職員達を次々に拘束し始めた。彼等は別の部屋に移されていき、やがて特別会議室に職員の姿はなくなった。他の部屋でも同じことになっているであろう。
総務局の占拠を確実にしたレヴォスは、ふと気付いたように
「そういや、ウィグさんはどうした? 一緒に地下から上がってきたんじゃないのか?」
別働隊の者に尋ねると
「ウィグさんでしたら、高いところからの景色を見たいとかで、屋上に上られましたよ」
(子供か、あの人は……)
聞いて呆れたが、思い返せば今日まで地下暮らしが続いていたのである。多少のわがままは仕方がないかと諦めていると、廊下からチーンと音がした。エレベーターが着いたらしい。
ドアが開くなり
「やあやあみんな、お疲れさん。素晴らしい手際だったよ。完璧だ」
ウィグであった。にこにこしながらパチパチと拍手している。
彼の姿を一目見た途端、工作員達は狂喜したように
「ジアス、アミュード! ジアス、アミュード!」
と連呼を始めた。
「このブロックに通じる地下ルートは全て爆破を確認しました。こうなれば、治安機構だろうと国軍だろうと、地上か空からしか、この建物には近づけません」
レヴォスはそっとウィグに近づき、そう報告した。
ウィグはウンと頷いてから
「……あれ、やるんだろ?」
「はい」
「じゃあ、これも付け足しておいてくれ」
彼は紙切れを手渡すと「さて、まずはお茶の一杯もいただこうかねぇ。絶景を眺めながらなんて、贅沢じゃないか。――ケレナ君、頼むよ」
そのまま、鼻歌を歌いながら奥へ入って行ってしまった。
「これは……?」
紙切れを開いて一読したレヴォスは驚愕した。
(なんだって、わざわざこんな真似を……!)
一方Star-line本部舎。
隊員達が総出で機体のメンテを行っている傍ら、サラはオフィスで独りせっせと事務作業に勤しんでいた。
久しぶりの好天だから外に出て一緒に作業をしたかったが、隊長ならではの仕事が山ほどある。ようやく里帰りから戻ってきたMDP-0の修理に関する件、それにリファの一件など、どれもこれもメンバーにやらせる訳にはいかない案件ばかりである。
さらには、都市統治機構法務推進局との交渉がある。
ヴォルデに動いてもらっているものの、未だに業務停止命令が解除される目処は立っていない。仮に法務推進局が解除の方針を打ち出したとしても、ユイの保護者(を名乗っているだけだが)であるカルメスが決定に不服を申し立ててしまえばそれまでである。要するに彼よりも立場が上の人間を味方につけるよりないのだが、そういう人間はこの都市に何人といない。カルメスに対して頭から物を言えるのは、上司である総務局局長、もしくは州知事くらいなものであろう。だが残念なことに、両者ともヴォルデと関係の深い人物ではない。
(都市治安委員会に嘆願書を出そうかしら? 都市有力者の連名組織が動けば、あの父親といえども無視できなわよね……)
机の上に肘をつき、顔の前で両手を組んで考え込んでいるサラ。彼女の癖であった。
静まり返ったオフィスの空間に、外で作業をしているショーコの馬鹿笑いする声が微かに響いている。
(ショーコったら、楽しそうね。喜怒哀楽そのままに生きているみたいだわ。――ん?)
ふと、通信コンソールの緊急通信ランプが点灯しているのに気が付いた。
「変ね。今日の今じゃ出動できないっていうのに。――はい、こちらサラですが」
応答スイッチを入れると、モニタ画面に映ったのはなんとセレアであった。
彼女は至って深刻そうな顔をしている。
『サラ隊長、非常に厄介なことになりました。つい先ほど、テロリストと思われる武装集団がM地区ファー・レイメンティル州都市統治機構庁舎上層階を占拠、多数の職員や市民を人質にとったとのことです。詳しいことはわかっていませんけれども、十中八九はウィグ・ベーズマンが指揮するジャック・フェインでしょう』
サラは我が耳を疑った。
「……!? 今、何と……!?」
驚きの余り硬直している彼女のためにセレアは同じ情報を繰り返し伝えたあと
『本日、お爺様が総務局へ交渉に出向いたのですが、総務局補佐室長が不在とのことで庁舎を出た直後のことだったのです。あと一歩遅ければ、お爺様も巻き込まれていたかも知れませんね』
「え……ヴォルデさんが!?」
またも驚かされたサラだったが、セレアは話のついでに口にしたに過ぎない。
それはそれとして、と彼女は話を元に戻し
『私達は現在業務停止命令を受けている最中ですし、ジャック・フェインのそもそもの目的は都市統治機構への復讐であった筈です。ですから、今すぐどうこうと行動を起こさなければならない状況ではありませんが、今後の推移に十分注意するよう、皆さんにお伝えください。万が一、という事態も想定されますから』
先日のように、勢いづいたリン・ゼール下部組織の連中が襲撃してくるかもしれない、という意味である。
「了解いたしました。メンバーにはすぐに伝達します」
『それからもう一つ、これは伏せられていた情報なのですが……昨夜、A地区のジャック・フェイン根拠地に警察機構が突入をはかりました。しかしながら全て引き払われた後で、しかも証拠隠滅のために仕掛けられていたらしい爆弾が爆発して、多数の警察機構職員の方が亡くなられたそうです』
(何ということ……)
サラは唇を咬んだ。
捜査への協力というよりも、みすみす警察機構職員達を死に追いやったようなものではないか。
一瞬、自分の責任を思ったが、セレアはそれを見抜いていたかのように付け加えた。
『これは不幸な事故としか言いようがありません。警察機構にしても、私達の要請だけで動いた訳ではありませんから。亡くなった方々は大変気の毒に思いますが、かといって私達が責任を感じていても仕方のないことです』
「はい……」
詳報が入り次第また連絡します、と言ってセレアの通信は終了した。
サラはしばらく、その場で呆然としていたが
「あ! みんなに伝達しなくちゃ!」
放送をかけて全員を招集した。
外出をしているサイの姿だけがない。彼はサラの許可を得て、朝から他の地区へ調べものをしに出かけていた。あと、相変わらずリファもいない。
「みんな、作業中にごめんね。たった今、セレアさんから緊急の一報があったの」
「緊急? どっかのグループ会社が襲われたの?」
眉をしかめているショーコ。
緊急発砲が入ったからといって、機体を担いで出動する訳にはいかないではないか。
「確かに、襲われるには襲われたんだけど……スティーレイン系の会社とかいうレベルじゃないのよ」
それが都市統治機構本庁であると告げた途端、メンバー全員が一斉にフリーズした。
「……マジ? なんかの誤報じゃないの?」
都市機能の中枢がテロリストの手に落ちるなど、あってはならない話である。
が、サラは笑いもせずに首を横に振り
「本当よ。ヴォルデさんが間一髪、賊とすれ違っていたらしいの。庁舎を出てから異変に気が付いて、警察機構に通報したんだって。ちょっと遅ければ、賊に身柄を拘束されていたでしょうね」
「……」
それからサラはセレアに言われた内容を皆に伝え
「そういうことだから、十分に注意して欲しいの。業務停止命令を受けているとはいっても、万が一の時は躊躇せずに迎撃します。みんなもそのつもりでいてね?」
あとはお決まりである。
全員作業そっちのけで、応接室のテレビにかじりついて報道特番を観はじめた。ショーコなどはソファにごろりと寝そべり、長期戦の構えをとっている。普段ならあり得ない状態だが、出動が認められない以上機体のメンテナンスさえ欠かさなければあとは自由に振る舞っていても問題ない。サラがサイに外出を許したのも、そういった判断による。
どの局もついさっき発生したばかりの、ファー・レイメンティル州始まって以来の大事件を報じていた。
「みんな、おんなじですねぇ。まだどこも詳しい情報はつかんでいないみたいですよ?」
リモコン担当のユイがくるくるとチャンネルを変えていると
『たった今、新しい情報が入りました! 犯行グループからの声明が出たとのことです!』
「お! きましたきました」
転がっていたショーコががばと起き上がった。
「ま、多分ジャック・フェインの連中ですよねぇ……」
そう予想しつつも皆、固唾を呑んでキャスターが原稿を読み上げるのを待っている。
画面の中の女性キャスターはパラパラと手元の原稿を整理していたが、
『犯行グループからの声明文をお伝えします。――我々はリン・ゼール下組織ジャック・フェインである。四年前、我らが同志を迫害した連中に神の裁きを与えるべく、行動を起こしている。我々は、我々に対して真摯なる態度を見せた国軍に対する攻撃の意図はない。ただし、愚劣なる神への反逆者、国家権力の犬達が国軍を動員し近づけるならば、直ちに人質全員は帰らぬ人となるであろう。よくよく考えた上で、行動されたい』
ここまでは、犯行声明文でよく用いられる表現である。
だが、その続きにとんでもない破壊力が秘められていた。
『我々は、都市統治機構総務局職員の身柄を拘束している。彼等の卑劣な裏切りによって、我々は四年前に無数の同志を喪ったからだ。特にカルメス・エルドレスト、この人物こそがその中心者であり、許し難い極悪人である。彼に対して、神は厳しき裁きを加えることであろう』
「パパ……? パパが捕まっているの……?」
女性キャスターが読み上げたその一文を耳にするなり、ユイはその手からリモコンを落としていた。
サラもショーコも絶句している。あとのメンバーも同様であった。
「どういうこと……? どうしてパパが、ジャック・フェインに狙われたりするの……?」