表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3

「こんな小娘を出場させるとは、完全に終わったな」


 ジャラジャラの視線が、木の人に向く。


「何だ、この人形?」


「うるせー! こっち見んな、変な眉毛!」


 木の人は、まだ機嫌が悪い。


「な、何だと!? この唐変木(とうへんぼく)めが!」


「誰が唐変木だ! ボコボコにすんぞ!」


「ちょっ、ちょっとやめなよ!」


 リンリンが興奮した木の人を羽交(はが)い締めにする。


「この寝癖(ねぐせ)マン!」


「寝癖マン!? 人形の分際(ぶんざい)で!」


「2人ともやめて! 決着は、あたしとジャラジャラが本戦でつければいいでしょ!」


「ちっ、ゴミどもめ!」


 地面に唾を吐き、ジャラジャラがその場を去った。


「何で止めんだよ! あんな見かけ倒し、秒で倒せんのに!」


「あんたが勝っても意味ないのよ!」


 そして、いよいよ拳法トーナメントが始まった。


 木の人の修行でレベルアップしたリンリンは実力を増し、さして本気を出さずとも決勝まで勝ち進んだ。


 最後の相手は、もちろんジャラジャラ。


「くくっ、小娘! 逃げるなら、今のうちだぞ!」


「そっちこそ! 前のあたしと思わないでよね!」


「バカが。望み通り、フルボッコにしてやる!」


 試合が始まった。


「ホァーッ!」


「てーい!」


 攻防は互角。


 リンリンの流れるような動きに、ジャラジャラは焦った。


「ぬぅっ! こ、こんなはずは!」


 怒ったジャラジャラが、勝負に出る。


「ホァーッ、ダブルデビルハンドーーッ!」


 必殺の諸手突き。


「それを待ってたわ! てーい!」


 リンリンが両腕でボディをガードする。


 モンモンと木の人の隣で試合を見ている杖を突いた老人が「あ、あれは!」と叫んだ。


「あれこそまさしく『自分で動くタイプの木の人のディフェンスモード拳法』じゃーっ!」


「名前、長すぎじゃない!?」


 木の人が驚く。


 ジャラジャラのダブルデビルハンドはリンリンの両腕で完璧にいなされ、自らの顔面へと直撃した。


「ぶへぇーーッ!」


 ジャラジャラが派手にダウンする。


 そして、ピクリとも動かなくなった。


「勝者、リンリン!」


 レフェリーがリンリンの右手を挙げ、宣言する。


 会場が大歓声に包まれた。


 こうして拳法トーナメントは、リンリンの優勝で幕を閉じた。


 大会終わりの帰り道。


「あー、終わった、終わった! やっと面倒事がなくなった!」


「ありがとう、木の人」


「そんなのいいよ。それより、かわいい娘、大丈夫だろうな?」


「う、うん…」


 などと話しつつ歩く3人に突如、草むらから人影が飛び出し、襲いかかった。


「オレより強い奴は死ねー!」


 ナイフを持ったジャラジャラが、リンリンに突進する。


 気が抜けていたリンリンとモンモンは、まったく反応できない。


(刺される!)


 そう思った瞬間、リンリンの前に木の人が飛び出した。


 ジャラジャラのナイフが、木の人の胸に深々と刺さる。


「グッ! この変な髪型野郎ー!」


 木の人が、ジャラジャラに高速アッパーを決めた。


「ぎょえーーッ!」


 ジャラジャラが宙を舞い、地面に激突する。


「バカな奴だ…ううっ…」


 木の人がガクッと、その場に倒れた。


「木の人!」


 リンリンが慌てて駆け寄り、正座した両太ももの上に、仰向けの木の人の頭を乗せた。


「しっかりして!」


「フッ…おれもヤキが回ったぜ…寝癖マンにやられるとは…」


「嘘! 死なないで!」


 リンリンの瞳が潤み、涙が(こぼ)れた。


「泣くなよ…お前に涙は似合わないぜ…それにおれは女の涙に弱いんだ…」


「木の人! 嫌よ!」


「あぁ…ダメだ…昔の仲間たちが浮かんできた…皆、やっと、おれもそっちに()けそうだぜ…」


「木の人ー!」


「リンリン、お前は筋が良い…おれの最高の弟子だっ…た…」


 木の人が、ぐったりと脱力した。


「いやぁーーっ! 木の人ーーッ!」


 リンリンが、天を(あお)ぐ。


 木の人の両眼が、パッチリと開いた。


「あ! よく考えたら、おれ、刺されても平気だった! めんごめんご!」


 木の人が頭を()く。


「はぁ、良かった良かった。え? 何だよ、怖い顔して? おれが無事で良かっただろ?」


「さあ帰ろう、お父さん!」


 リンリンが急に立ち上がり、木の人の後頭部が地面にぶつかった。


「痛ーー!」


 リンリンとモンモンは木の人をその場に残し、家路についた。


「ちょっ、ちょっと待てよー!」




 翌日。


 木の人は自分の部屋で、そわそわとリンリンを待っていた。


 扉の外から、リンリンの声がする。


「木の人! かわいい娘を連れて来たよ!」


「お、おうー」


 木の人が緊張ぎみに返事した。


「は、入れよ」


「はーい」


 扉が開き、かわいいワンピースを着た女子が入ってくる。


 木の人が生唾(なまつば)を呑み、女子の顔を見た。


 それは慣れないメイクで、わけが分からなくなり、めちゃくちゃ濃い顔になってしまったリンリンだった。


「お前かーーい!」


 木の人の叫びが、道場の敷地中に響き渡った。




 おわり



































 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)


 大感謝でございます\(^o^)/


 ご許可いただきました、たまりんさん、ホントにありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ