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過去に縛られる恋 19

 泣きたくなった。自分の馬鹿さ加減に。

 柳の下の何とやら……話を聞けば、全部なんて事なかった。

 指輪は、始め本当に弁償するつもりでバイトは始めたんだけど、二人にやんわり断られ、その時にお兄さんから私達が兄弟になるのを聞かされて、初めてそこでその事実に気がついた亮太は、そうなる前に告白するのを思いついたみたい。

 それまでも私の恋愛を見ているだけで、言い出せなかったから、これを区切りにしたかったそうだ。

 卯月さんの件は、先に好きな人がいるって宣言してたから、あの場でハッキリ言えなかったって。言えばその場で告白しなきゃいけなくなりそうだから、否定も肯定もしないで逃げた。

 観覧車は……古典的。髪に付いてたゴミを取って貰っただけ。

 そして、私が彼がお姉ちゃんを好きなんだって思い込むきっかけのチョコ。これが一番大きなシコリだったのに、一番何でもなかった。

 お姉ちゃんって、おっとりしすぎでたまにヘマをするんだけど、きっかけのチョコも、父にあげるのを間違えて亮太に渡しちゃった、チョコレートボンボンだったらしい。だから、正確には、食べなかったんじゃなく、食べられなかったみたい。

 私は事の真相に茫然とした。何? 私、こんなつまらない事で、ずっとずっと遠回りしてたの?

 っていうか、私の臆病な気持ちが、色んなことをあんな風に思わせていたのかもしれない。そう、ずっと本当の気持ちに向き合うことのできなかった気持ちのせいで……。

「わかった?」

「……うん」

 私は素直に頷いた。恥ずかしさに耳まで熱くなった。

 亮太は、私の頭を撫でると、あの小箱を手に取り、ふたを開けた。

「ちゃんと、指輪渡したかったんだけどな」

 空っぽの箱。でも……私には見える。どんな宝石より綺麗な……。

 両思いの告白って、もっとロマンチックだと思ってた。だけど様にならないのも、私達らしい。小箱を持つ亮太の手に自分のを重ねた。

「ありがとう。でも、私にはこれで十分」

 私の為に頑張ってくれた、すぐ傍にいつもいてくれた、亮太の手。その手と繋がる手はどんな綺麗な指輪で飾られた手より、誇らしくて……嬉しかった。

 頭を撫でていた亮太の手が、止まった。

 互いの瞳の中に、互いを確認しあうと、私達はそれを閉じ込める様に瞳を閉じて、ようやく、ゆっくり、引き合うように唇を重ねた。


 かくして、恋愛研究部ことコイケンは解散する事になった。

 コイケンっていう形はなくなっても、私達の関係は変わらない。何の約束も形もないけど、それは信じられる。

 そんな私達にコイケンはもう必要なかった。

 あの銀色の小箱みたいに、本当に大切なものは形じゃない、そう言う事なのかもしれない。

 弱い私達はこの先も、物や形を求めてしまう事もあるだろう。

 過ちだって、後悔だって繰り返すかもしれない。

 でも……私は、私達は、その度に悩み傷つきながら、不器用でもきっと前に進んで行ける。

 私はコイケン部長日誌に、最後の一言を書き記した。

 いつか大人になって、もし恋する気持ちを忘れてしまったら、再びこの日誌を開く事になるかもしれない。

 けど、今はしばらくのサヨナラ。


「ありがとう」


 呟くと、私は静かにページを閉じた。

 寂しさにひたってる場合じゃない。

 私は顔を上げる。

 そう、私の恋は今、始まったばかりなのだ。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

『コイケン』は廃部となりましたが、この後日談として亮太が主人公のお話と、彼らが大学生(社会人)になってからの話も続きますので、よろしければお付き合いいただけると嬉しいです。


後日談のタイトル『片思いのススメ~未来の見えない恋~』

大学生(社会人)バージョンのタイトル『女老い易く恋成り難し』

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