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過去に縛られる恋 8

 変な沈黙を破ったのは、意外にも卯月さんだった。卯月さんは、私を見て

「残念です」

 言葉ほど残念そうな顔をしないで、そう言った。

「アンタ! どういう意味よ」

 お嬢がまだマイク持ったまま問い質す。卯月さんは、その質問事態が意外と言う風にお嬢を見つめ

「だって、一人でも両想いになったら、部は解散なんですよね? 私と凛は入ったばっかりなのにって」

 あ、忘れてた。そういえば、そんな部則があったっけ。

 部を作る時、学校側からなかなか了解とれなくて、学校側との交渉でそんな部則を作らされたんだ。

「だから、部長がOKしちゃえば、両想い成立。解散ですよね」

 卯月さんの質問は、質問じゃなく尋問に近かった。私の返事はどうなのかを聞く。私はまた、亮太をみた。卯月さんの隣りで、腕を組んで外を見てる。

 何よ興味なくたって、話くらいまともに聞いてよね。

 私はむかついて、つい口走った。

「五十嵐君の事、意識した事なかったから、返事は待って貰えるなら、そうするつもり」

「そうなんですか」

 何故かさっきより残念がる卯月さん。それでも亮太は外を見たままだ。

 私は半ば当てつけにこう付け足した。

「でも、OKするかも。そしたら、今度は皆にすぐ報告します」

 私はそう言い切ると、烏龍茶を一気飲みした。

 亮太はやっぱり、こっちは向いてくれなかった。


 カラオケは、結局、決着がつかず、先生がおごってくれた。

 そろそろ解散って感じになった時、後ろから凛ちゃんの声がした。

「せっかくですし、観覧車に乗りませんか?」

 かくして、その一言で、歓迎会の締めは観覧車と言う事になった。

 問題は組み合わせだ。

 お嬢はよっぽど新入部員の鼻をあかしたいらしく、組み合わせはクジ引きって事になった。

 結果は乙女ちゃんとむっちゃん。お嬢と凛ちゃん。亮太は卯月さん。私は先生と乗る事になった。

 今日、亮太はつくづくこの卯月さんとの組み合わせだ。私は少し辟易とした。

 昼下がりの観覧車は、まだ新しいのもあって、行列ができていた。子ども連れも多いけど、やっぱりカップルも多数。否応なく意識しちゃう。

 15分くらい待って、私達の番が来た。

 一組目の乙女ちゃん達は、純粋に楽しそう。

 二組目のお嬢達は、どっちが先に乗るかとか、どっちが進行方向に向いて座るかなどモメながら騒がしく乗り込んでた。何かと張り合う二人。実は良いコンビなのかもしれない。

 そして亮太と卯月さんの番が来た。

 そっと二人の様子を窺う。卯月さんは、緊張してるのか、耳まで赤くして俯いていた。亮太はそんなの気付かないのか、相変わらずのボーッとして何も話さない。

 やがて巡って来た観覧車の小さな箱は、二人を高い空へ連れ去った。

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