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3話 おじさんとダンジョン

 郊外の自宅付近の数多ある地下入り口――――G級ダンジョン。

 現在確認されているダンジョンの中では最下級に位置している。


(1ヶ月ぶりのダンジョン。ここに通うのも6年目……)


 俺は昨日、協会認定ダンジョン都市"センダイ"の街中にあるフォルーナ防具店で女性用の防具を購入した。

 以前使っていた装備を売却して得た金で、軽く丈夫かつモンスターからドロップする魔石によって自己修復する軽鎧を選択。

 胸部、みぞおち、各関節系を防護さえできればいいので、全身鎧やボディスーツ型の高級品は選択肢にすら上がらない。

 G級ダンジョンの上層で死に至る攻撃はほとんど無いからである。


「よしっ! 行くか!」


 G級収納ポーチ内からすぐに取り出せるよう整理が終わり、立ち上がる。


 一歩、ダンジョン内へ足を踏み入れると8畳ほどのセーフティエリアと1層の扉が現れた。

 ダンジョン内と外界は時間の流れが異なり、互いに覗くことはできない。除いたところで光も通さぬ真っ黒い空間が見えるだけである。


 1層の扉を開けると早速現れた。



 名前:スライムモドキ

 ランク:1

 戦闘力:50



 スライムモドキはG級ダンジョンでは定番のモンスター。

 C級ダンジョンに現れるスライムの超劣化版だ。


(体格が変わったせいで蹴り攻撃の距離感がいまいち掴めないな)


 敵目掛けて振り抜いた蹴りはつま先だけが接触。

 一応ダメージは入っているようだが、倒すには至らない。


「ふっ!」


 再び、今度はスライムモドキの核を狙った。


 ぴきりとガラス玉が割れるような音がかすかに聞こえ、スライムモドキの紺色の丸い核は完全に割れた。核にまとわり付いた青い半透明な身体も紫色の粒子となって霧散する。


(弱体化した戦闘力でもこれくらいなら問題なし。単独戦闘による恩恵は何かあるかねえ)


 周囲にモンスターがいないことを確認してステータスを見る。



 名前:無力 日々むりょく ひびと

 ランク:1

 戦闘力:72 → 73 前回比:+1

 スキル

 《漢になれ》

 ・防具以外装備不可

 ・《漢になれ》及び《○神の祝福》を除くスキルの習得不可

 ・身体の耐久性が戦闘力に応じて上昇

 ・単独訓練及び戦闘でのみ戦闘力上昇

 ・戦闘力が伸びやすくなる


 《女神の祝福》

 ・容姿が御姿に固定され、不変となる

 ・常に浄化される



「なんだこれは……」


 戦闘力が1上がった。

 たった1だけ? 違う。

 たった1体の最下級モンスターを倒しただけで1上がったのだ。

 特に格下相手との戦闘では戦闘力は上昇しにくい。故に探索者は格上を倒せるように集団で行動するのが当たり前。

 戦闘力が伸びやすいというスキル効果はデメリットを加味してもかなり有用ではないだろうか。

 だが、まだ1回。試行回数を重ねよう。


 完全にマッピングできている1層を探索し、スライムモドキを10体倒した。

 5体目あたりからは距離感も以前と変わらない程度には掴めてきており、今は違和感無く動けるようになっている。


(どの程度伸びているかな)



 名前:無力 日々むりょく ひびと

 ランク:1

 戦闘力:73 → 83 前回比:+10



 前回比は+10。

 凄まじい伸びだ。

 スライムモドキは1体倒すのに30秒程度。発見までの時間を考慮しても90秒程度だ。

 次はスライムモドキ10体を1セットにして3回繰り返してみよう。


 1回目

 名前:無力 日々むりょく ひびと

 ランク:1

 戦闘力:83 → 93 前回比:+10


(伸びは変わらないな。公開情報だと戦闘力に2倍の差がつくと伸びが悪くなるらしいが)


 2回目

 名前:無力 日々むりょく ひびと

 ランク:1

 戦闘力:93 → 102 前回比:+9


「む、さっきより1低いな」


 3回目

 名前:無力 日々むりょく ひびと

 ランク:1

 戦闘力:102 → 107 前回比:+5


 前回比+5。

 これは恐らくスライムモドキの戦闘力50に対して俺の戦闘力が100を超えたために伸びが悪くなった可能性が高い。

 伸び量からして単純に1/2か。

 それでも以前より遥かに上がりやすいが……。

 単独戦闘でしか戦闘力が上がらないデメリットはかなり痛いが、元々どこのパーティにも属せなかった俺には平常運転のようなものだ。

 最下級の安全な場所で1時間倒し続けるだけで30オーバーの上がり方は尋常ではない。以前の戦闘力230などあっという間に超えていくだろう。


(魔石はしょぼいものしかないけどねえ……30円)


 これなら売るよりも防具修復に使うほうが有意義かもしれない。取り敢えず温存しておこう。


 俺はその後、スライムモドキを休憩を挟みながら5時間ほど倒し続けた。

 今回は欲張らずに1層のみに専念した為、ほぼノーダメージだ。


 名前:無力 日々むりょく ひびと

 ランク:1

 戦闘力:102 → 167 前回比:+65


「ふう、かなり上がったな。これなら10層攻略も夢じゃないかもしれないねえ」


 世界各地にある無数のダンジョンの中でもG級はかなり数が多い。

 それこそ今でもぽこぽこと新たなG級ダンジョンが出現しており、2~3割程度は未攻略になっている。

 探索者からすれば旨味もないG級より高い等級のダンジョンへ行きたくなるのは当然だ。


 スキルに縛りと女性化による戦闘力の急激な低下のせいで一時はどうなることかと思ったが、これなら以前よりもずっと強くなれると確信する。


「これだけ伸びが良いと……これも死にスキルじゃなくなったってことか?」


 ・身体の耐久性が戦闘力に応じて上昇


 デメリットばかりに目がいっていたが、これだけ戦闘力が上昇しやすいと話は変わってくる。


(おじさん、ワクワクしたきたぞ)


 実年齢34歳の見た目青髪碧眼の少女がガッツポーズを決める。


 取り敢えず目指せ、元の戦闘力230!


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― 新着の感想 ―
[一言] 6年間の積み重ねのせいで志が低いw 訓練でも上がるらしいけどそっちはどんなもんだろうね 配信でサンドバッグをぺちぺちしてたら戦闘力上がったとかあるのかな?
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