初めてのお友だち。
僕は何度も何度も その炎の上に乗って、僕は遊んだ。
何度も転げながらバランスを取って、試すうちに、乗るのがとても上手になったんだ。
え? 自分で言うなって?
でも それは本当だから、仕方がない。
『う……うわぁー!』
僕は息を呑む。
だってついに僕は、この炎を思うままに操れることが、出来るようになったんだ!
炎はものすごく便利だった。
だって空中を走れるんだよ? 自分の小さな足で地面を歩くのとは全然違う。とても速いし、気持ちが良い。
青い炎を足の下に、僕は空を駆けた。
さっきいた場所が、ぐんぐん遠くなって、目が眩む。そんな高い場所にだって、辿り着けちゃうんだ!
今までこんな事、出来やしなかった。
出来ない事が出来るようになるって、なんて素晴らしいんだろう!
自分よりも遥かに高い木のてっぺんが、一気に下の方に見えた。
遠くの場所もよく見渡すことが出来て、僕の胸はドキドキと高鳴る。
『すごい! すごい!!』
僕は面白くなって、どんどんどんどん空を駆け抜けた。
雪の平野を駆け抜けて、林の上へと駆けあがる。
木々に積もった雪たちがハラハラと舞い散って、まるでいつか見た星屑のようだった。
『あははははは……』
嬉しくて、笑いながら夢中で駆けていたら、突然! シュンって音を立てて、炎は消える。
僕はハッとして、身構えた……!
やば、忘れてた! 炎はしばらくすると、消えちゃうんだった……!
『え? 嘘……っ!?』
一気にまっ逆さま……!
──ヒュン……。
『っ、』
耳元を、風が吹きすさび、
一気に地面が近くなる!
『!』
僕は焦る。
バタバタ手を動かしたけど、飛べるわけがない。
やばい。
このまま落ちたら、僕はどうなるの!?
『……っ!』
僕は丸くなった。少しでも衝撃を和らげようと思ったんだ!
地面が近づいてくる!
当たれば、きっとすごく痛いに違いない。
体中の筋肉という筋肉にギュッと力を入れて、僕は身を強ばらせた!
『うぅっ、』
悲鳴が喉をついて出る。
──ザザっ!
『……痛っ!』
僕はまず、木にぶち当たった。
幸い木の葉っぱは柔らかだった。僕はホッとする。
一気に力が抜けて、体が自然に大の字に広がった。
いやいや だけど、まだまだ気は抜けない。
『わ、わわわわ……』
まだ、下に落ちているって事には変わりないっ!
『ひ……っ!』
──ズサッ、ザ、ザザザザザッ!!
『!』
木々の枝にポーンポーンと当たりながら、最後はポスッと、背中から雪の上に落ちた。
雪はとても柔らかで、僕の体を受け止めるのには、十分だった。
よ、良かった……助かった。
『いたたたた……こ、怖かった……』
僕は唸りながら雪の中で、くるっと廻る。
雪野原にしばらく伏せながら、僕は自分の小さな白いしっぽをフリフリと振り上げた。
助かった安心感が一気にやってくる。
『良かった、僕……生きてる!』
少し痛かったけれど、面白かった。
うん。これは、練習が必要だぞ?
……結構、危険だったけれど、とっても楽しい!
雪に埋もれながら、僕は静かにそう思う。
ふわふわの白い毛並みが、雪を含んでキラキラと輝いたのが見えた。
しばらくは、火で遊べそう……。
雪の中をコロコロ転がりながら、僕は思う。
……でもこの炎がお友だちで、お話してくれればいいのにな。
あらためて、そんな風に思った。
だけどそれは さすがに無理だから、諦めるしかない。
少しそれが、残念ではあったけれど、でも、遊び相手としては申し分ない!
今までひとりぼっちだった僕に、《狐火》っていう友だちが現れてくれて、僕は嬉しくなる。
明日は、どこを駆けようかな?
これならスグに遠くへ行ける。
こことは違う、遠くの方へ行ったのなら、きっと仲間がいるに違いない。
『……ふふっ』
僕は、考えれば考えるほど、楽しみになった。
× × × つづく× × ×